★★★間違って選んでる★★★
要するに、この部屋の中央にある玉を取って壁の穴に嵌めると。
「モンスターハウス、ね。くっそ!ドンダケ湧いて出て来るんだよ!無限湧きか!?」
幾ら倒しても出る出る、追加が。
魔法「ウインドカッター」で前方の広範囲の試練獣を真っ二つにしたら、休み無しで左右に「スラッシュ」を放って空白地帯を作る。そこに踏み込んでまた魔法、、左右に剣技を放ち、安全確保しながら前へと進んでいく。
玉を嵌めた壁は恐らく次の階層へと下りる階段部分なハズだ。しかし、それは開いていないのだ。
これに「どうして?」と一瞬考えればすぐに分かった。
その開通した階段に逃げ込めば試練獣は侵入してこないと言う事だったのだから、直ぐにそちらに入り込めばこの試練獣どもを相手になどする意味が無いのだ。
コレはトラップ。次の階層に行く為の。
「反対だったんだろうよ!コナクソ!」
そう、玉を嵌めた方と逆側の階段が解放されるんだろうこのギミックは。
ソレを直ぐに思いついてこの状況から抜け出す為にも元来た方の階段を目指しているのだ。
「もおおおおおお!何だよ!鬱陶しい!マジで無限湧きかよ!これリセットするにはどう言う条件を満たさないとダメなんだ?階段に逃げ込むにしたってよ!俺じゃ無ければ死んでるよな!?これは!」
この空間ミッチミチに詰め込まれている試練獣。消えた傍から補充されている様で、俺の視界に床が光ってそこから試練獣がヌーッと現れている所が見えた。
そうして何十分経っただろうか?ようやっと俺がこの階層にやって来た時の階段が見えた。
予想通りにあの玉を嵌めた壁の逆の階段が解放されるのだ。これに俺の心は怒りが爆発しそうになった。
「ハメられた!くそがぁ!」
悪態をついても誰も聞いちゃいないし、人の責任にも出来ない。
俺が油断していて安易な事をしてしまったが為に起きた事なのだ。
「階段に!入らせろ!このやろ!・・・どうりゃあああ!」
俺は階段に駆け込んだ。するとどうした事かコレが何かの合図だったかの様に試練獣がスーッと床に吸い込まれて行く様に全て消えていった。
これらが幻では無かった証拠と言えば良いか。床には数える事が出来ない程の魔石が転がっている。
戦闘中になどこれらを拾っていられる余裕など無かった。それこそ攻撃の手を緩めてしまえば俺が試練獣に圧殺されていた所である。
「いや、死なんだろうけどもそうなった所で。・・・あ!魔石も直ぐに床に吸い込まれとるやんけ!?」
俺は階段の所からその光景を見て莫大な徒労感に襲われた。
ここから先に進むにはまた恐らくは一からやり直し。
また中央のあの玉を取って来て今度はこの今居る階段の方の壁にソレを嵌め込まないと先に進めないのだろう。
その時はまたあの大量の試練獣をぶっ倒しながら前進する事をもう一回やらされるのだ。ウンザリである。
しかももし途中で階層を引き返して試練場から出ようと思ったら、またこの階層を突破しなければならなくなる。それはシンド過ぎる。
「余りにも大量に出て来るもんだから、その種類が幾つあるのか数える余裕すらなかったわー。」
恐らくはこの試練場に出て来る試練獣が全種出て来ていたのだろうと思うのだが。
正直言って即座に「じゅっぱひとからげ」みたいな感じで片づけたので出て来た試練獣にどんなのが居たかを覚えちゃいない。
倒された試練獣は即座に光と消えて魔石に変わっているのでその死体を確認、と言った事も出来ない。
「おい、よくよく考えたら、ここの階層ってこの世界の住人じゃ攻略無理げじゃね?」
チートな俺だから生還できたのでは?ジェーウ達がここを突破できるとは思えない。
「クリアさせる気、ある?・・・あ、いや、もしかして・・・」
俺はここで一つの可能性を思いつく。
「他の試練場でここの階層を攻略するのに必要な重要アイテムを取って来ないといけないとか?」
あり得そう、そう思った俺はここで盛大な溜息を一つ吐いて休憩時間を取る事にした。
心も体も疲れてしまっている。ボーっとして座り込んでいる俺の頭に「一度戻るか?」と言った思考が頭をよぎった。
「うあぁ・・・めっちゃ面倒だからもう攻略とかするの止めようかな?このモンスターハウス、初見殺しだろうがよ。ホント、神様って試練場攻略させる気、あるぅ?」
俺が勝手に解釈しているだけで、もっと別の何か思惑があるのかもしれない神様には。
そう、人智を超える存在が考えている事を読みとる事などソモソモがまず最初から不可能だろう。
そうった所を分からないままでも何とか無理に呑み込んで納得した上で動こうとした結果がこれな訳で。
「それでもこうしようと決めた意思は俺の物であるんだよなぁ。そこも、まあ、疑う余地があるけども。」
操られている、そんな風に思ってしまうとどうやっても、何をしても、動けない様になってしまう。
孫悟空がお釈迦様の掌の上だったと知った時の気持ちを考えてしまう。
「俺は俺だよ・・・こうなりゃ意地でもここだけは何とか攻略してやろうじゃないの。そうじゃ無いと先にも進めなくなっちまう。」
一度戻るとまたここに再び戻ってくるのに面倒だ。どうせならこのモンスターハウスを一度このまま攻略してしまった方がしんどさはマシだと思って立ち上がる。
「よし、じゃあやるかぁ。今度は一気に走って玉を取りに行こう。ここのギミックは分かった事だ。それと使う魔法を変えるか。ファイアレーザーで一気に?そうじゃ無けりゃウェーブ・・・はダメで。うーん?ウインドカッターを連発して前方にだけ突撃するだけで済む、か?」
左右へのスラッシュは安全確保の為にやっていた。
だがもう既にここの階層の大体の事は把握できたのならば、突破だけを考えれば別にウインドカッターだけで済ませられるだろう。
落ちる魔石も拾っていられる状況に無いし、次の階層に下りる階段に入り込めば出て来ている試練獣が即座に消えるのは既に確認している。
考えを纏めた俺は階段から一歩踏み込んだ。階層に入るとやはり今先程までいた階段の入り口は塞がれる。
ソレを確認した後は真っすぐに中央を進んだ。軽くランニングする速度で。
そうやって再び辿り着いたそこには復活している玉が鎮座している。
「この玉も床に吸い込まれていった魔石と同じくハメた壁の穴に吸収されてここにまた再設置されてんだろうな。おし、じゃあ、やるかぁ。」
玉を手に取りまた来た道を戻る。やはりこの玉をあの台座から外すと壁に窪みが発生するのは同じな様だ。
俺は迷わずに玉をそこに嵌め込む。するとやはり試練獣が空間一杯に出現し始めた。
「ウインドカッター、カッター、カッター、カッター・・・・」
事前に考えておいた通りに俺は魔法の連発をしながら走り続けた。
このまま反対側にある階段まで走り続けるつもりだ。
そもそもこのウインドカッターで斬り裂け無い試練獣は出てきていないし、前方広範囲に攻撃判定が出る魔法であるからして、目の前に試練獣は残らない。
ひたすらにその作り出した空白を走り続ける。真っすぐに、ひたすらに。
だけども最後の最後に意地の悪いパターンが発生しているのが目に入った。
まだ階層を下りる階段は遠いのだが、俺の視界にはかの有名な一体のモンスターの姿が。
「ゴーレムが階段を塞いでいるってどう言う事よ?」
その巨体が道を塞いでいる。人型、しかも表面は黒く光っていて金属の様な光沢。
「クソ面倒クセェ!」
恐らくはアイアンゴーレムと言われるモノだと思う。実にイラつかせてくれる演出だ。
多分剣で切り付けても跳ね返される。
威力の中途半端な魔法では効果が無いか、或いは小さい。
あれを排除する為には相当な威力の魔法で無ければならなくなった。そんな事を即座に考え思う。
ご丁寧にその巨体の足が階段口部分をしっかりと「通せんぼ」する様に立っていて、これに俺は「念入り過ぎだろ!」とツッコんだ。
ゴーレムが巨体だから股の下の隙間をスライディングして通り抜ける、などと言った事がこれで出来ないのだ。
「俺のラノベあるあるパターンが!もおおおお!そこはやらせて欲しかった!」
下らない事を考えてしまう。今のシチュエーションでコレが出来ないのは厳しい。
今も俺を袋叩きにせんとして試練獣がわんさかと俺に群がろうとしてきているのだ。
だから俺は覚悟を決めた。炎熱完全耐性のマントを取り出してこの身を守る様に羽織る。
「フレア!」
炎系の魔法で最大級の威力、しかし単体と言う攻撃魔法を撃ち込んだ。ゴーレムへ。
『全てを消滅させる高熱』
魔法を放つと同時に思い出したこの「フレア」の説明文がコレだ。
ハッキリ言ってヤバい代物だと思う。これまでに使用して来た魔法を考えれば。
だからゴーレムにこの魔法が着弾するまでの時間で俺は遠ざかる事にした。
踵を返して元来た道をウインドカッターをまた連発しながら逃げる。
何から逃げるのか?ソレはフレアの威力からだ。
コレがゴーレムに着弾した際に起こる現象が読めない。
だから距離を取ると言う単純な安全策しか取れなかった。
と言うか、それくらいしか取れる選択肢が無かったと言えば良いか。
放つ魔法選びをしくじった、そう思える。
何せ爆風?爆熱?衝撃波と言うか、熱風がかなり遠くまで離れたはずの俺にまで届いたからだ。
それはこのマントが無かったら俺は干乾びて死んでいただろうと思わせる程。
自分で放った魔法の威力に恐怖を覚えつつもマントで全身を隙間無く覆う事に必死になる俺。
「ヤベエやべえやべえやべえやっべやっべやべやべやべ!」
そんな状態で20秒ほど経った後に俺は目の部分だけ少し開いて状況の確認をしようとした。
そこに広がっているのは何も無い光景。
「・・・あのゴーレムを倒せれば試練獣は湧いて来なくなるのか?」
静かなモノだ。だけどもその惨劇の後はかなり遠くからでも見て取れる程に凄まじかった。
「ファイアウェーブの時と近いか、或いはそれ以上?コレじゃあ近づけないよ・・・」
まだこの階層に暫くの時間は滞在していないとならなくなった。
ソレは魔法を食らったゴーレムの居た場所が床も天井もグズグズに溶けてガラス質になっているから。
それだけの熱量があそこで爆発したのだ。ゴーレムはソレによって跡形も無く溶け消えた様だった。
熱がまだ残っていてそこはまるで陽炎の様にゆらゆらと景色が歪んで見える。それがはっきりと判る。
「神様、アンタもうちょっと考えろよ。調整って言葉、知らんのか?」
何かしらの考えがあって俺と言う存在をこの様な姿でこの世界にポイッと放り込んだのだろうが。
それにしても俺は文句を付けずにはいられない。
「いや、ホント、何をさせたかったのかね?絶対人選間違えてるって。もしくは選別しないで偶々?まっさかぁ・・・有り得るかもしれないってのが、なぁ・・・」
神様がテキトーに人を選んで異世界に飛ばす、そんな話のラノベは幾らでもあった。
ソレを思い出して俺はウンザリした気分で溶けた部分が修復されるのを待った。




