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★★★果てしない空間に★★★

 扉の先は綺麗な白いタイルで構成された通路。暗さは無く、何処から光源を取っているのかすら判らない。

 ずっと先まで通路はまるで何処かしらから明かりでも当てられているかの様に丸見え。


「・・・いきなりこれか。休む間も無く進めって事?後ろには、うん、戻る為の扉はあるね。別に退路を塞がれたって事でも無いのか。そこはまあ良いとして。休息は入れられそう、なのかな?」


 一人でいると確かにこうした場面で不便だ。確かに誰か一人最低限でも付いて来ていれば警戒役を立てて睡眠が取り易い。


「とは言っても俺はソレをしないでここまで来たんだから文句を言ってもいられないな。」


 一直線な通路に試練獣は居ない様子。だが油断はできないのだ。見晴らしが良いからと言ってもソレで安心とは言えない。

 こう言った時には罠か、或いは姿を消して隠密行動するタイプの試練獣を疑ったりした方が良い。


 警戒心は増々上がっていく一方だ。コレは早く下層に通じる階段を発見しないと、などと思っていれば来てしまった。


「何だよ、コレは。インディージョーン◯?」


 通路は一つしかない。横に逃げる隙間も窪みも見当たら無い。なのに前方からゴロゴロと勢い良く転がって来る大玉。


「もう一回鹿と戦えって?扉を戻れって?強制で、これ?・・・クソげーか!」


 俺はその玉にウインドウカッター、ウォーターガン、ストーンショット、サンダーニードル、ファイアショットなどを撃ち込んだのだが。


「全部弾くのかよ・・・回転の勢いでそれらが受け流されてるって事か?」


 まだ遠い。しかし確実に近づいてきているその大玉。

 ファイアウェーブは使えない。俺まで熱気に巻き込まれて死にかねない。

 なのでファイアレーザーを放ってみた物の、見事にコレも回転している表面に受け流されている様に見えた。


「あ、いや、ちょっと速度が落ちたか?・・・あ?只の岩石って事じゃ無いのか?」


 何だかその大玉の表面に生物的な特徴と言うか、スジと言うか、線と言うか、窪みと言うか。

 取り合えずアルマジロが丸まるとこんな感じなの?と言ったものが見えた様な気がした。


「・・・グラビティプレス」


 俺はぺしゃんこにできるか?と思ってこの魔法を使った。コレは対象を自由に選べるはずだから例えこの大玉が岩石だろうが、アルマジロみたいな試練獣だろうが関係無く止められると思って。


「こやつ、驚かせおってからに・・・」


 大玉はぺしゃんこになってから光と変わって消えていく。

 その正体が何だったのかの詳細は分からないが、一応は危機は去ったのだ。ほっと息を吐く俺。


「・・・時間経過で試練獣ってリポップするんだよな?あれがまた出て来るとか面倒なんだが?早く先に進んだ方が賢明か。」


 休まずにさっさとこの通路を通り抜けてしまわないと次にまた同じ奴が出て来る可能性がある。

 なのでそうなると安心してここで立ち止まってもいられない。


「初見殺しをこんな低階層でやってくるとか、意地が悪過ぎでしょ、神様。」


 そんな事をぼやきながら俺は走って通路を進む。

 俺じゃ無かったら死んでたか、或いはまたボス部屋に戻らねばならない所だろう。

 あの大玉を押し止められる奴が居たのなら、そこからはまた何かと考える所でもあるが。


「ボス部屋に戻ったら多分あの大玉は回避できても、また鹿と戦うハメになってるだろうからなぁ。」


 理不尽と言いたくなるレベルである。もし俺に力が無かったらそれこそここまでやって来る事も無かっただろうが。


 しかし国や教会が騎士たちを大量投入して此処までやって来ていたとしたら?

 恐らくはこの通路を攻略するのに何度かは失敗を繰り返してボス鹿との戦闘をする事になってしまっていた事だろう。


「あ、もしかしてこの身体スペックならそのまま真正面から止める事も出来たかもしれない?・・・いや、やりたくねーわ。」


 とそんな事をぼやいて暫く進み続けていれば階段が目の前に現れる。


「マジで一直線の通路しか無かったのかよ・・・何だよ、やっぱ雑過ぎじゃん。」


 神様のダンジョン創作センスを疑っていたのだが、これで確定に少し、いや、大きな一歩だ。


「この世界の人類も地球と別段変わらない中身っぽかったしなぁ。人ってヤツの業を分かっちゃいない新人の神様ってのがもしかしてこの世界を担当してるとか?」


 そんな下らない考えに「あり得ない話じゃ無いな」とか思ってしまう。


 とは言えそんな思考も放り投げて俺は階段部分で大休憩を取る事にした。

 此処の広さはさっきの大玉が入って来れない位の狭さだし、この中には試練獣も入って来ないとの話もある。

 なので俺は一旦ここで仮眠をとる事にした。別にこの身体のスペック、体力だと数日眠らなくても活動できそうではあったが。


「精神的に疲れんだよなぁ、徹夜って。うぅぅぅぅうーん!」


 階段の途中くらいの部分で俺は座り込んで壁に背中を預けて目を瞑って力を抜いた。


 どれくらい寝ていたかははっきりとしない。時計が欲しい所だったが、寝起きはスッキリしていた。

 マジック小袋から食事を取り出し食う俺。


「サンドイッチ、と言うか、アレだな?ホットドック?いや、ビミョーに違うか?何でも良いか。腹は満ちるし。」


 アッサリ塩味。濃い味のタレが欲しいと感じるが、このレベルで満足しておくべきだ。

 俺が注文した料理長への求めは「簡単に食べられる」「食事の栄養バランス」と言った部分だ。

 この要求に頭を悩ませた料理長に俺はこの「パンで野菜と肉を挟んで食べる」と言ったスタイルを提案した。

 そう、ソレは見事に料理長に驚きを齎した。この世界にこうした料理の概念は無かったらしい。


(アレはやっちまったと思ったけど、しょうがないよ。だってこんな場所で一々テーブルと椅子を出して、色んな種類の料理を並べて優雅に食事?有り得ないね?)


 俺は一人で攻略をしているのだ、この試練場を。

 ジェーウ達が居た時みたいにコンロ?と鍋で調理とか言った事に掛ける手間は省きたかったし、食事に何時までも時間を掛けたりもしたくは無かった。


 結果これである。「俺なんかやっちゃいました?」である。料理長と侯爵様には悪い事しちゃったかな?とか思ってしまっている。


 俺が便利だと思う事を積極的にこの世界に広める心算などサラサラ無かった。

 しかしこうしてやっちまった事はもう元には戻らない。

 もしかしたらこの世界でこの「サンドイッチもどき」「ホットドックもどき」を発明して金儲けする者が居たかもしれないのだ。

 その可能性を俺が潰してしまったと言えるコレは残酷な事なのである。


 この「もどき」はきっと料理長から侯爵様へと報告が上がっている事だろう。

 どうせ俺の言動を逐一部下に報告させているはずだから。俺は警戒対象なのだ。この世界にとって。国にとって。侯爵家にとって。


 さてこの報告を侯爵様がどの様に利用するかは俺の預かり知らない所である。

 そこまで考えてこの件の事を深く追求するのは止めた。何せもう俺にはどうしようも無い事であるから。


 やってしまった事はもう元には戻らないのである。

 そう思って開き直ってでもいなけりゃこの世界に順応でき無いだろう。

 常識も違うし、生活環境も違うし、社会構造も、何もかも違う世界だ。

 そんな所で一々自分の行動に責任を持とうとしたら正確な真面目な奴ほど潰れてしまうだろう。


 俺はそんな重みで潰れる何て真っ平御免だった。


 責任を負えと言われてもどうすれば良いのか何てのはサッパリだし。

 何故そこまでの事を俺の様なアンポンタンな奴が考えなけりゃいけないのか?そんなのしたらもっと事が滅茶苦茶になりそうである。


 そうなれば俺はケツ捲って逃げるか、姿を眩ますだろう。責任とか義務とか真っ平御免だった。

 元の世界には戻りたいと思うが、しかし今居るこの世界は元の世界のしがらみも責任も義務も俺の背中には乗っかっていないのだ。


 一々そんな鬱陶しい物を積極的に自分から背中に乗せようとは思えない。


 だから今もここで一人なのだ。

 確かに誰か他に一人でも同行者が居れば楽なのかもしれない。

 けれどもそいつがもしこの試練場内で死んでしまう様な事があったら?


 二人で攻略、などと言ったらその責任は俺一人に集約する。

 もし五人で居ればソレは残りの者たちに分散と言った事にも出来るだろうが。


 じゃあ俺含めて五人で試練場に挑戦したとしよう。でも、それで俺以外の四人が死んだら?


 その四人分の重さ何て俺は背負いきれずに倒れ伏す。その重みに負けて俺はそのまま死ぬだろう。心が。


 精神の死んだ俺なんて想像もしたく無いし、そうなった時の俺の行動など予測も出来ないし、したくも無い。


 まあ一番考えられるのは自殺だ。しかしそれだけで済むのか?と問われると不安が盛大にある。

 周囲を巻き込んでの自爆などと言った事も考えてしまうと親しい人物をこの世界で余り作りたくは無い。


 そう言った人物の死が俺にどんな影響を及ぼすのか何て本当に予想が付かないから。


「とは言っても、そうはならない様にって気を遣うだろうけどその時は。」


 殿下のあの食らった一撃の時は別に何とも思わなかった。

 あー、これで死んでたらメッチャメチャ厄介だなぁ、くらいで。


 あの時は俺は只の案内人みたいな立場で居たので別に気にもしなかった。

 一応は最初の増援鼠がわらわら出て来た時には手を貸したが、その時も「初回だし、仕方が無いね」くらいだった。


 だからここで思う。ボス鼠の一撃を殿下が食らったからこそ良かったが。

 あれがもしマリに当たっていれば?俺はどの様な事を感じただろうか?


 今の俺はマリの事に関しては微妙に受け入れている部分がある。

 コレを想像して「やだなぁ」と俺はぼやいてしまった。


「忘れよう。今はこっちに集中すべきだった。うーん!よし!行くか!」


 気合を入れつつ背伸びをして俺は次の階層を目指す。二十一階層が大玉転がしだったのだ。

 気を引き締めて気持ちを切り替えていかないとなら無いだろう。


 アレは少々焦った部分もあったが何とか切り抜けられた。

 またいつか似た様なシチュエーションに出会っても多分直ぐに今度は対処が可能だとは思うが。


 何時どんな時に、それこそ俺の想像を超える状況が訪れるか分からない。

 なので今俺が使える魔法を思い出して使い勝手の良い物を脳内でおさらいしておく。


 そうして入った二十二階層。それは只の滅茶苦茶広い空間なだけだった。

 見渡す限りに何も無い。果ても見え無い広大なその部屋。


「え?手抜き過ぎ無いですか神様?・・・もしかして設定するの途中で飽きた?」


 そう思わざるを得ない光景に俺は絶句する。しかし背後から「ごごご」と音がしたので振り返ると今先程の階段への道が塞がれていたのだ。


「トラップ?いや、何だろうかこの感じ?ボス部屋・・・って訳でも無さそうなんだけど?」


 一体何があると言うのか分からない。俺の立つ場所から見える景色に壁は見えない。相当な広さだ。これからどうしたら良いかが全く予想が付かない。


「・・・こういう場合は中央を真っすぐ、とか言った馬鹿はしない方が良いんだよなぁ。壁際を伝って様子見とするかぁ。」

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[一言] ダンジョンマスターがLiveで対応してそうだ。
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