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★★★二つ目が欲しい?★★★

 俺は今このお城の訓練場に来ている。もちろん教会騎士の死体をここで出して引き渡す為だ。

 コレは俺が殿下の求めに応じての事では無く、もう何時までもこの件に関してグダグダと絡まれるのは鬱陶しいし、隠し立てし続けるのが面倒になって来たからだ。

 もう今はこの国の一番上、王様とは話が済んでいる状態だ。俺がこのマジック小袋の事を見せる代わりに有象無象が俺に絡んでこない様に取り計らってくれと約束を王様に取り付けてあるのだ。


 この場に居るのはジェーウとマリと王様と殿下と侯爵だけ。部屋に居た秘書みたいな人やマルダースはこの場には居させていない。

 この件に関して知っている人数は少ない方が良い。ついでに言えば本当は殿下もこの場に居て欲しく無い。だって多分コレを知った後もグチャグチャと小煩い勝手な事を俺に言ってくるに違いなかったから。


「さて、出します。よっと、ほらしょっと。」


 ここに出すのは物言わぬ死体だけ。生きて捕縛し連行してきていた殿下殺害未遂の犯人の一人はきっともう拷問を受けて洗いざらい吐き出させられたか、或いはまだ情報を吐き出さずにしぶとく生き続けているか?

 そこら辺の生臭い話は俺の気にする所では無い。俺の仕事はここに教会騎士たちの死体を並べたら終了だ。


「・・・なっ!?」


 マジック小袋の性能に驚きを見せる殿下。唖然としたその間抜け面を鏡で見せてやりたい。

 しかしここでもう一人のこの光景を始めて見ているはずの王様はしっかりとその驚愕を抑え込みつつ俺の持つマジック小袋を見つめて来ている。


「素晴らしいな。この様な物がこの世に存在するのか。これがもっと多くあればこの世界の何もかもが大きく変わるぞ?」


 そう言った王様の表情は険しくなっている。これの危険性も有用性も気づいたんだろう。眉根を顰めているのだが、そこには思案する雰囲気も含んでいる。

 只々このマジック小袋が輸送、商売だけに使える物では無く、戦争でも大活躍する事を想像しているに違いない。

 これが有れば経済が大きく発展させられるのもそうだが、敵対国がコレを持っていて悪意を込めて使うのであれば戦争に絶対に使用してくる。

 食糧物資、武器防具、建築資材、その他、あらゆる物をこの小さな小袋に詰め込んで気軽に運べるのだ。経済の発展だけじゃ無く戦争の形も変わる。

 寧ろテロ行為に使われたりする可能性の方が高いか。そうなればもう何でも有りになってしまうだろう。


 ここで殿下がまた口を開いて余計な事を言い出し始めた。


「ソレを国に渡せ。貴様が持っていても勿体無いだけだ。我が国であればコレをもっと有効活用する事が出来る。幾ら欲しい?金なら幾らでも払ってやろう。言い値で買ってやる。」


「ほらー、言ったじゃ無いですか王様。こいつ、ある意味で馬鹿ですよ?早い所修正しないと将来もっと苦労しますぜ?」


「頭が痛い問題だ。ソレを手伝って欲しいのだが、そなたは断るであろう?」


 溜息付いて王様は俺にそう言って来る。殿下が未だに馬鹿を言っているから。

 俺としては「やっぱり口にしやがった」と言った感想だ。殿下は絶対にマジック小袋を譲れと言ってくるだろうと思っていた。

 そして王様はと言うと殿下を修正する手伝いをして欲しいと、俺に。まあそんなの断るけども。


 だけどもこの今の場面だけなら少しくらいは協力してやってもいい。


「ド派手にこの訓練場が破壊されちゃうけど、良いですか?」


「・・・なるべくなら修繕費用が余り掛からない程度に抑えてくれると助かるんだが・・・」


 頭痛が痛い、みたいな顔で王様が許可を出した。ならばここは殿下に痛い目を見て貰う覚悟をして貰わねばならない。


「はい、それじゃあ殿下。王様は今の発言を取り下げろと言ってますけど?発言撤回の意思はあります?無いなら決闘でもして決めましょうか?殿下と俺と一対一、決着は殿下の心がバキバキに折れて諦めるまで、でどうです?もちろん容赦はしません、大怪我する覚悟はできますか?俺のこれまでに見せてきた手の内をちゃんと思い出してしっかりとご自身が俺に強さで通用するかどうかを考えてから言ってくださいねぇ?」


「何を馬鹿な。我が貴様などと決闘?そんな下らぬ事をする訳が無いだろうが。そんな事をせずともソレは国が管理すべきモノであろうが。個人で所有するには身に余ろうと言うモノ。ソレが分らんのか?」


「ふざけてんのはどっちだよ。本当に変な所で頭悪いな?俺も王様も言外に何を言ってるのかってのを察する事が出来てないじゃん。ちゃんと言わない俺が悪かったのか?なら言うぞ?渡す気は無い。金で売る気も無い。欲しかったら力づくで奪って見せろ。ただしソレは王様が認めちゃいない。敵対するんだったら俺は容赦しないから死ぬ気で掛かって来い。ただし、テメェ一人で周囲の誰にも協力を仰がずに、だ。俺を見下して来るくらいだ。自身の実力で俺を平伏させてみろ。ソレができないんだったら一々突っかかって来るんじゃねーよ、このクソボケ中途半端勘違い野郎が。」


 言いたい事を言い切った。その後に俺は「あー、スッキリした」と付け加える。

 これに殿下、顔に血管が浮き出て来る程に怒り心頭、頭に血が昇っている。その怒りを言葉に出来ない位に頭の中真っ白な模様。

 全身をプルプル、ワナワナと細かく震わせて体中を怒りで硬直させている。まるで真冬の気温に裸で立っているみたいである。


「ああ、でもコレをどうしても欲しかったらご自分で努力して取ったらどうですか?その条件は教えても良いですけど?まあその代わりに殿下一人だけで挑戦して貰いますけどね。助っ人無し。完全にお一人の力で、とまでは言わずとも、まあ補助くらいは許してやっても良いですよ?俺がコレをどれだけの苦労の末に得る事が出来たのかを分かって貰いましょう。」


 王様はここで「何?」と驚いた声を出した。俺がこのマジック小袋を譲る気は無いと分っていたのだろう。

 だけどもコレの取得の仕方を教えてやっても良いと口にした事で予想外と言った感じか。


「良いのタクマ?そんな情報をそんなに簡単に与えちゃって?」


 マリが不思議そうにそう質問を飛ばして来た。ジェーウも同意見らしくこっちを見て来る。


「どうせならマリも欲しいんじゃない?ジェーウも。まあ、あの苦労を考えればもしかしたら出て来ない、って可能性もあるよ?一つの試練場にこう言った特殊な物は「一つ」しか出て来ない、とかね?」


 もしかして同じ所から「二個目」が出て来ない可能性だってある。そうなるとソレはかなりの検証を重ねないと是非が分からない事になる。

 もしかして次に出て来るかも?何て言う沼に嵌まれば切り上げ時を見失いかねない。

 それこそ何万回も同じ事を繰り返しても出て来ない事だって有り得る。そうなったら「二個目は無い」と言った結論を出すしか無くなるだろう。

 そうすればそれまでの行動がその結論を導き出す為だけの行為と成り下がる。マジック小袋を得られない、本当に欲しい物が得られないと言う結果になってしまう。

 ソレを認められず、ずっと検証を続けて回数を重ね、そして「もしかしたら?」そんな妄想に取り憑かれたらお終いだ。諦めを捨てた者の末路は悲惨である。


 ジェーウがここで俺に言う。このタイミングでそんな事を言ってくるのかよ、と。


「何でソレを今ここで、よりにもよって・・・あぁ、ソレに付き合わされるのって・・・」


「試練場第一隊騎士団に命じる。ポーリスを連れてタクマの教えに従い、試練場へと向かえ。ポーリスよ、お前がよこせとタクマに迫ったのだ。ならばソレを一人で、お前の力のみで取ってこい。出来ないと言うのであれば今後この件は二度と口にするな。」


 王様の勅命が下ってしまった。これに追撃で俺は殿下を煽る。


「人の物を口先だけで取り上げようとして恥ずかしく無いんですか?人の努力が分からないってんならもう一度子供から初めて貰えます?苦労を味わう気概も無いなら人を顎で扱き使うの止めて貰えませんかね?それじゃあ盗人と何らやってる事変わらないんで。」


「貴様・・・言ったな?ならばやってやろうではないか。貴様如きに得られた物ならば我が得られない訳が無いだろうが。」


 ここでジェーウとマリが「あーあ」と言った顔になった。俺の苦労を知っているからだ。

 あの巨大鼠を散々屠ったのをその目で、目の前で見ているから、殿下のこの軽率な発言に溜息を漏らしたのだ。


「あ、タクマ、私はソレには付き合わなくても良いよね?私はもう試練場がどんな所なのか充分に理解したから。」


 マリがそう言って殿下には付き合えないと断りのセリフを口にする。

 殿下は「付いて来てはくれないのか・・・」とここでマリへと良い所を見せたかった模様。

 ジェーウは王様に命令されちゃってるので「だが断る!」と言えない立場である。ウンザリとした顔になって諦めが滲み出ている表情だ。


「で、ここまでずっとダンマリな侯爵様、何か言いたい事あったら今の内に聞いといた方が良いですよ?俺また試練場潜りますんで。」


 王様の部屋からここまでずっと一言も無い侯爵様。何か聞きたい事は無いかと俺が話を振ってみれば首を横に振った後にメチャ糞に盛大な溜息を一つ吐かれただけだった。


 ここで王様は訓練場に繋がっている廊下の方へと歩いて行ってそこで手を二度ほど叩いた。

 その音に反応して五名程の騎士が訓練場にやって来る。ここで王様が。


「そこにある死体を検分室まで運んでおけ。さて、これにて解散としようか。ポーリスとジェーウは明日に試練場へと向かえる様に準備をしておけ。タクマ、今日はこの城に泊って行ってくれ。持て成そう。」


「・・・えー?じゃあ俺に接触して来ようとする輩は例外無く誰も近寄らせないでくださいよ?王女とか絶対にまたやって来そうだし?対応すんの面倒臭そう。」


 この俺の求めに王様は「うむ、善処する」と返事をしてくれた。

 なので俺はちょっと渋々ながらもこのお城に今日は泊る事に。


 そうして案内された部屋は広過ぎてあんまり落ち着けない。しかし出てきた食事は美味だった。

 だけども俺は庶民な舌をしている。ある程度の味が確保できていれば良いのでもっと量を食べたかった。

 出てきた食事はコース料理っぽくてどれも皿にのっている分量が少なくてもっとガッツリと食べたいと思いながら食事を終えている。

 食事はこの部屋に運んで来て貰っていたので俺はここから一歩も出ていない。

 もし王様と一緒に食堂で食事を、などとなったらこの部屋からその食堂までの移動経路で何某かのイベントでも発生していそうだ。

 何と無くでしか無いが、王女とまたしても遭遇していたのでは無いだろうか?そんな風に思った。


 こうして俺は腹も膨れてベッドへと寝転がる。


「うーん、フカフカ。金掛かってるんだろうなぁ、このベッド。お幾ら万円?」


 どうにも自覚できていない疲れでも蓄積していたのか?そんな下らない事を吐き出した後に俺はそのままぐっすりと眠ってしまった。

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