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★★★不干渉をくれ★★★

「タクマ、起きて。もう話は大体終わったから。後はタクマの事を聞きたいって。」


「・・・んおッ!?おっと、そういや此処ってお城だったな。しかも王様の私室だったっけ?あ、スイマセン、俺にとっちゃ訳分らん話ずっとされて眠気が限界で限界で・・・」


 俺のこの態度に殿下は「ふざけるなよ・・・」と怒りを見せている。

 マルダースと言ったか。置物みたいに一切動かない騎士の方からも俺は睨まれていた。


「お前たち、控えよ。特にポーリス、彼に命を救われている立場であるだろうがお前は。いい加減にその態度を改めろ。」


 王様のこの一言でグッと息を詰まらせる殿下。ちゃんと命が危なかったと認識できている様で何も言い返せない模様。

 壁際に控えていたマルダースもこの王様の一言で視線を俺から逸らした事が窺えた。


 ここで殿下の御怒りっぷりからふとこの部屋に来る前の事を思い出して口にする。


「あぁ、そう言えばここに来る前に待ってた部屋で王女様がやって来て俺、イチャモン付けられましたよ?」


 俺のこの発言に殿下は「ふふん」と何だか偉そうに鼻を鳴らした。その口元はニヤッと上がっている。


「我が妹は可愛らしく、美しかっただろう?お前などとは本来なら顔を合わせる事など一生無かった相手だ。しかも声を掛けられたなど庶民であった貴様には想像もできなかった出来事だろう。光栄に思えよ?」


「いや、お前が何偉そうに言ってんだよ?今の言葉聞いて無かった?文句付けられてんだよ、俺、その王女様に。何聞いてたん?そこ妹自慢して上から目線になる所じゃねーだろ。」


 俺の態度も言葉遣いも終始こんな感じなのでどうやら堪忍袋の緒が切れたらしい。

 マルダースが剣を抜き放った。そして一言。


「・・・斬る・・・」


 ここで王様が盛大な溜息を吐き出した。もちろんこれは剣を抜いたマルダースに向けた物である。


「止めよと言ったな?私は?ソレが守れぬならばこの部屋から出て行くがよいマルダース。私は彼の言葉遣いにも、態度にも、何も言っていない。この意味も分からぬならお前は直ぐにでもその地位から下ろして一兵士からやり直させねばならんぞ?一々会話の腰を折って来るな。」


 王様は俺の事を罪に問わないと。この不敬な態度を黙認すると。

 そもそも王様がどうにも俺のこの言動に不快感を最初っから持っていなかったのも大きい。

 しかしここが公式な場で無いにしたってこの王様の懐の深さはどう考えてもちょっと気が抜け過ぎだと思うのだが。

 威厳が全く無いと相手に侮られたりする。ここは俺みたいな相手にそうやって舐められない為にも荘厳な態度で俺に接するべき場面なのでは無いのだろうか?


(いや、寧ろ逆に俺の警戒心をワザと解く為の態度?そうやって「良い人」を演出して懐にホイホイと近寄って来させるように仕向ける高等テクニックとか?)


 これが王様の本来の姿なのか、狙っているのかは分からない。


 さて、ここでマルダース、相当な力が入っている様で剣の握り手部分からミシミシと小さく音が鳴る程の力を込めている。

 きっとそれには俺に対して色々な感情が込められているのだろう。多分それはマイナス感情。そんなの俺にはサッパリ通じて無いが。


 王様に注意されたマルダースは剣を鞘に戻してまた壁際に直立不動に変わる。


「ふぅ~。すまなかったなタクマ。マルダースは私の事を思ってあの様に剣を抜いてしまったのだ。以後はその様な事をせぬ様に再教育をしておくので今はどうか収めてくれ。さて、娘がどうやら不快な思いをさせたみたいだな。甘やかし過ぎた事は自覚があるのだが。叱るにしても構う時間がなかなか確保できずにいてなぁ。そう言った部分をポーリスに任せていたのだが。蓋を開けてみればあの様に育ってしまって。どうにも私の言葉も耳に入らぬ性格になってしまっては矯正するのも困難でなぁ・・・」


 ちょっと子供の教育にお疲れ気味な王様。子育て育児に悩んでいる只のオッサンになっていた。


「ソレで今さっきの殿下のあの発言って事?何だよ、シスコンじゃねーか。どっちもどっちって、キモイな?」


 シスコンの意味をこの場に知る者は居ない。なので殿下は「キモイ」の所だけを拾って俺に突っかかって来る。


「おい、貴様は我を今馬鹿にしたな?」


 ここでマリだけが突然に「ぶふっ」と吹き出した。これには殿下が「・・・うん?」と反応する。マリが何処に面白いと感じて笑ったのか殿下は分からないからの困惑だ。


(ブラコンってのを教えてあったからシスコンの意味もソレで理解したか。それで吹き出したんだな。と言うか、本当にマリの笑いのツボってのが読めねーなー?)


 このマリの吹き出しに部屋の中の空気が微妙なモノに変わる。だが王様の俺への質問が再びその雰囲気を引き締める。


「タクマよ、此度の件でおぬしには褒美を取らせる事は決定しているのだが、余りにも突然におぬしの様な存在が出て来ると他の貴族や臣下たちが何かと煩くしそうでな。あまり騒ぎを大きくせぬように表向きにはその報酬は小さく見せて、足りぬ分をこうして裏で引き渡すと言う流れになった。何か欲しい物など、或いは願う事は無いか?できうる限りの内容を叶えると約束しよう。」


「・・・え?要らないんだけど。」


「・・・うん?」


 俺が即座に拒否宣言をしてしまった事で王様が固まる。どうやら想定外だった様だ俺が褒美を断ると言うのが。


「褒美、要らない。要らないって言う俺の求めを受け入れるのを褒美としてくれるか?目立つのは嫌だ。寧ろ逆に俺をそう言った輩の目に入らない様な配慮をして欲しいんだけど?あー、でももう目立っちゃってるよな?幾ら隠そうとしても嗅ぎ付けて来る輩は必ず現れるかぁー。そうなると余計話がこじれて面倒さが増すんだよなぁ。シンプルに試練場攻略物語で良いんだよ、俺はさ。一々国の問題とか裏側とかに首突っ込みたくない訳よ、俺は。教会が、何?試練場騎士団の薄汚い奴らの事が、何?もうね?そう言うのに俺は関わりたくも無ければ巻き込まれたくも無い訳で。あー、ここまで言っておいてアレだわ、やっと纏まった。不干渉、ってやつだ。一々やる事なす事にそっちの干渉を受けたく無いんだ、俺。俺は俺のやりたい事をしたい。こっちがして欲しい事があったらその都度頼むし、望まない事には巻き込まれたくも無い。それでも余計な真似をしてくる奴らは蹴っ飛ばす。そんな考えでいるから俺はお偉いさんに対してこんな言動を一貫してるんだな。」


 ダラダラと言葉を紡ぎ出して行ったら勝手に自分で自分に納得してしまった。

 俺には所詮この世界に何らの思い入れも無い。だから好き勝手やりたいと。

 だけどもそんな風に好き勝手やるって言っても破壊神、なんてのにはなる気は無いし、秩序の崩壊や常識の破壊などをする気は無いのだ。

 だから俺に干渉して欲しくない、するにしても道理を弁えて程々の所までにしておいて欲しい、そう言った気持ちがある。

 寧ろ俺の存在を王様の力でひた隠しにして情報が漏れ無い様にしてくれと言いたい。

 俺が出しゃばる様な事をしなくちゃいけなくなったら絶対にその問題は余計に大きくなる。大炎上する。物理的に。

 既にもう炎熱完全耐性マントを大量に侯爵様に納めてるし、魔石もがっつりな数を代金変わりと言って渡している。


 そんな内容の話をダラダラとした後に俺は最後をこう言ってシメた。


「その程度じゃまだ大人しい方だよなぁ。最悪は俺が魔法を思わず使っちゃった場合だよ。その時は俺、保証なんて出来ないからな?マジで。」


 これにはジェーウが渋い顔になった。これは多分あの試練場での「トイレ事件」を思い出している。

 あれがこの城の中で放たれれば?いや、俺はそんな真似をする気は無いのだが。

 しかし何が切っ掛けで暴発させてしまうか分からない。咄嗟に俺が口を滑らせたら?などと考えてしまうと迂闊に口なんて開く事は出来なくなる。俺が俺の事を心配だ、そこまで考えたら。

 ファイアウェーブ、この魔法を発動すればこの城がどれほどの被害を受けるか分からない。最悪崩壊まで行く可能性のある。死人はどれほど出るか?計算できない。


「あ、教会騎士の死体って何処に出せば良いんですかね?いつまでも持っていて気持ちの良い物じゃ無いからさっさと引き渡ししたいんですけど。」


 そもそも俺の主な用事は最初っからこれだったな?と思い出して言ってみる。

 だけどもこの場を沈黙が支配した。誰も何も言ってくれないのだ。


「え?俺なんか変な事言いました?殿下とはそこら辺の話はちゃんとしたよね?・・・おい、殿下さんよ?何とか言えよ。」


 ここで空気を壊したのは王様。いきなり笑い出した。


「うっはっはっはっはっ!そこまで言われてしまうともう何もできんな。断られればこちらの、王家の面子に関わると言って押し付ける様にして褒美を受け取らせるつもりだったのだがなぁ。そう言われてしまえばこちらが手も足も出んでは無いか。不干渉を褒美にしろと?おぬしが求めた時だけ手を貸せと?ジェーウからおぬしの力の報告を受けておる。凄まじい魔法を使うとな。しかも何やらその剣技も絶すると言うでは無いか。その被害を考えれば怒らせてはならぬ存在だとも言われた。ふふふ、コレは私が脅されている様なモノだな。余計な事をしてくる奴らはぶっ飛ばす、だったな?私はタクマ、おぬしに蹴り飛ばされたくは無いからなぁ。その願い、受け止めよう。」


 ここで俺は突っ込んでおいた。しっかりと釘を刺しておく。この先に今みたいな同じ「褒賞」の話なんかをしない様にと。


「褒美を渡したらそこからズルズルと俺の事をこの国に巻き込んで、組み込もうと考えてたんだろ?どうせ。見え見えなんだよなぁ。」


「そこまでバレていたか。ふはっはっは!おぬしを敵に回したくは無い。今後はその様な真似をせぬ様に約束しよう。ソレでこの場は許して貰えるか?」


「別に許すも何も無いんじゃ無いか?俺はさっさとこの後どうするかゆっくりと考えたいんだよなぁ。その為にも用事を終わらせてお城から出たいんだが?何だか落ち着かないんだよなぁ。ここにいつまでも居ると王女がまた絡んできそうだろ?絶対ロクな事し無さそうじゃん、あの王女。」


 俺は王女に様付けせずにそう言う。するとここで殿下がソレを気に入らないと言った感じで睨んできてから言う。


「教会騎士の死体は訓練場に案内するからそこに出せ。私たちの、目の前で、だ。試練場内ではしまう所を見るなと言ってきていたが、どうやって持ってきた?何処にある?運搬方法は?貴様は何処に出せば良いか?などと言ったな?ならばお前の何処に死体がしまってある?全て見せろ。」


「王様、まだこいつ偉そうに俺に命じて来ますよ?ぶっ飛ばして良いですか?分かって無いとか、そう言う奴には一度痛い目見させないと理解しませんよ?」


 国の一番偉い立場の王様が俺を敵に回したくないとまで言った程なのに、この殿下ときたらこれである。

 俺の力の一端も二端も自分のその目で見ているはずなのに、それでも未だに自らの権威と権力の方がそんなモノよりも強い、通じると思っているその頭はどの様にして出来上がったのだろう?

 殿下の頭の回転はまあ速い方だと思う。優秀で、自分の描く理想のビジョンはあるみたいだが。

 それでも何処かしら馬鹿、傲慢が治っていないみたいだ。いや、王族ともなれば多少の傲慢さは持ち合わせていなければ他者を威圧出来ないかもしれないが。


 今の場面で俺が機嫌を悪くして暴れたりすれば?ソレを誰が止められる?誰が犠牲になる?そこら辺の危機感と言うか、想像が出来ていない。

 この城に入る前に「宵闇」と言う暗殺者たちを殲滅して見せた俺の力を全く覚えていないとでも言うのだろうか?


 俺は王様の方を向いて一言。


「これ、今の内に修正しないと後々で重く響きますよ?」

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― 新着の感想 ―
[一言] (`・ω・´)もっと言ってやれですね。
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