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★★★いや、我慢できないって★★★

「信じられ無い事だけど、ソレを否定できないアレコレを目にしちゃってるね。どうしようこれから?」


「いや、別に無理してどうこうできるもんじゃねーからこれまでと別に態度変える必要は無いだろ。」


 俺は自身の憶測も一緒に話してしまっていた。試練場のアレコレと神様の目的とやらである。

 コレを聞いてしまってマリはこの先どうしたら良いかと悩んだのだ。


 この世界を神様の力でパパッと発展させる、しかし人には試練は与えないと苦労知らずで楽する事ばかりを覚えそう。

 だから容易にはそれらを得られない様にと神様は試練場なる物をこの世に存在させた。

 だけど人は自らの安易な目先の利益ばかりを追求して全く試練場の奥を目指すなどと言った事をしない。人の社会の長い目で見た発展をその視界に入れている者が居ないのだ。

 ならばここでその切っ掛けになる存在をポイッと投入すれば何か動きが出来上がるんじゃね?みたいな。


「これからはタクマの事を使徒様と呼んだ方が良い?」


「冗談は止し子さんです。止めろくださいウザくて死んでしまいます。」


「何だいその言い回し?ぷふっ!そう言う発言も別世界から来たって感じがするね、話を聞いた後だと。」


「神様ってのはどうやら面倒臭がりらしいぞ、この世界のは。試練場の内容も、調整も雑っぽいしな。何の情報も与えず、まあ、何だろ?天啓やらお告げみたいなものを一切やってないだろ?取り合えず何となく人に試練場に潜らせる、みたいな感じになっちゃってるし。コンテンツとしては杜撰を通り越してヤル気無さ過ぎ問題だな。」


「コンテ?なに?それ?まあ良いかなそこら辺は。じゃあそれで、タクマは今後どうするつもりなの?試練場を攻略していけば神様に会えるって事だったんだろうけど。元の世界に帰ったらもう二度と会え無いんだよね?ソレは、凄く寂しいな。」


 悲しい目をしてこっちを見るマリ。俺も多少の情は出来てしまったのでそんな目を向けられてもこっちとしては困るだけだ。

 試練場に入る前であったならば気にもしなかったと思う。けれどもそう言った部分を既に超えてしまっていた。

 だけども俺は帰ると言う意思は曲げない。だけどソレが達成できるかできないかは神様の気まぐれみたいな所もあるので今この場では何とも言えない。

 帰らせてくれと俺が求めても神様がソレを叶えてくれるかどうかは未知数だ。

 ソレにそもそもこのまま試練場を攻略し続けて神様と本当に会えるのかどうかすらも怪しいと感じる所もある。


「そんな先の話は知らねーよ。結局本当に会えるかどうかも、願いを聞いてくれるかどうかも分からんし?まだまだこの先長い付き合いになる、って言っただろ?そう言うセリフはその時が近づいてから万感の気持ちを込めて口に出した方が威力が増すってもんだろ。今言うセリフじゃ無いな。早まったな?マリ?俺の心を動かすには重みが足りなかったな、今言うのじゃ。」


「・・・ふふふ、ダメかぁ。それでも少しは気にしてくれた様だね?だってちょっとだけ沈黙してくれたでしょ?タクマ。」


「まあなぁ。貴族様とは深く関わりたく無いって思ってたけど。こんなお城にまでこうして入っちゃって、しかも王様と会うって。もうそんなの無理って言うしかないよなぁ。侯爵様には世話になっちゃったし、渡世の義理は果たさんとなぁ。とは言っても本気でウンザリしたら行方くらます気はあるからそこ注意な?今さっきも何だ?第一王女だっけ?ラナーシェって名乗ったお子ちゃまが乗り込んで来てよ?俺の事を小馬鹿にしたり、態度が気に入らないって言って捕縛して拷問してやるとかぬかしやがったからなぁ。」


「・・・え?」


「ん?」


 変な沈黙が部屋を支配した。何だろうかこのマリの反応は?物凄く眉根を顰めて驚いている様子なのだ。

 理由を聞くのが怖い。しかし聞かない方がもっと後で厄介な事に発展する要素になりそうな気がして俺は問う。


「な、なんなのかなー?マリ、さん?説明をお願いしても?」


「・・・ラナーシェ王女は、その、殿下にベッタリで何でも兄の事は把握しておきたいとおっしゃっているお方で。そんな方がタクマの情報を此処まで素早く仕入れていたと言うのが・・・」


「え?ブラコン?ヤバいのに目を付けられちゃったのか俺は?・・・あれ?でも王女の発言は殿下の事を別にそう言った感じで言っていた風には聞こえなかったんだが?」


 俺はその時の王女の発言の中身を教えた。ついでにブラコンの意味も。そしてマリは再び険しい表情をする。


「嫉妬、なのかな?うん、多分。それと執着、かも?うーん、もしかしたらタクマ、このまま城に居ると王女にずっと付き纏われるかもしれないね。」


「鬱陶しいぞ?あのまんまでこっちに突っかかって来るのに対応するの。確かなんだったっけか?御付きの人が俺に謝罪して来たから一応は抑え込むお目付け役はいるっぽかったけど。それでも嫌な予感が消えないんだが?」


「王女はもしかすると殿下を独占できていたと自分では思っているのかもね。そこに横入りして来た者が居ると勘違いしちゃったのかも?」


「え・・・?ソレもソレでめちゃ糞に誤解説くの面倒じゃん?絶対にああ言った人種は自分の思い込んでいる事が中心で、全てで、人の言う事に耳を貸さないばかりか理解も最初っからしようともしないだろ?」


「あー、一度しか会っていないのにタクマの王女への評価が適切過ぎて・・・」


 マリが手で顔を覆った。どうやら俺のラノベあるある知識はここでも当て嵌まってしまうらしい。何だこのテンプレ?嫌な所ばかり当たるんじゃないよと文句を付けたい。


 そうしている内にお呼びが掛かった。どうやら全員が集まったのだろう。

 俺とマリは立ち上がって開かれたドアの先に居るメイドさんと執事の案内で廊下を進む。


「行きたくねぇ・・・何でこうなったのかなぁ・・・」


「ソレはもうどうにも為らない事だよね?私もタクマと初めて会った時はこんな状況になるとは想像なんてできなかったしね。」


 俺のボヤキを拾ってマリがツッコミを入れて来る。本当にそうだ。俺は目の前の事だけを追っていたと言っても過言じゃ無い。

 未来の想像をしたとしても王様と会うと言った事に繋がる事象など欠片も見つけられなかった。見付けようともしなかった。

 もし事前に俺がそこら辺の事を回避しようと考えながら行動していたとしても本当にソレが出来たかどうかは分からないが。

 こうした状況になってしまったのだから「もしも」何て事は幾ら考えても不毛なだけだ。

 分岐点、王様に会うと言う結果を引き寄せない様にする為に、その都度場面ごとにどの様な選択肢を選べば良かったのか何て俺には知る事などできなかったはずだ。

 何を選んでもこの結果に辿り着いていた、と言われたとしても、事前に覚悟をしていたか、してい無いかでは雲泥の差である。

 今の俺は覚悟なんてからっきし。何処かに置き去りにしてきてしまっているソレを今直ぐ探しに行きたい気分である。


 そうして案内された扉は彫刻が豪勢な扉。どうにもここが王様の私室と言う事らしかった。

 今回の事はどうやら公式な議題に上げる前に王様が先んじて全ての話を聞いて纏めてその後の対処を考えると言う展開らしいのだ。

 なのできっとこの部屋の中に居るのは王様の信用、信頼している部下の人たちも居るんだろうと推測する。


 そうして開かれた扉の中へと入れば俺の予想通り。神経質そうな顔の眼鏡を掛けたオールバックの四十台ほどの男性が王様の座る椅子の背後に立っていた。

 だけどもそれだけじゃ無い。俺はビビった。騎士が居たのだ。しかも全身ガチのフルアーマー。ソレが金属の擦れる音を僅かにもさせずに直立不動で立っていたので一瞬置物と勘違い仕掛けた。

 その兜の視界確保用の隙間から鋭い視線を向けられているのを気づけなければそのまま俺はこのフルプレート騎士をずっと置物と勘違いし続けただろう。


 こうしてこの部屋には王様と、殿下、侯爵、ジェーウ、マリ、俺、それと王様の部下二名が揃っている。


「さて、揃ったな。では話をしよう。その前に、おぬしがタクマか?並々ならぬ力を持っていると聞いた。我が国に仕える気は無いか?その能力に見合った報酬を揃える用意がある。どうだ?」


「え?いきなり勧誘の話?殿下の事は後回しって、ソレはちょっと親としてヒドクね?」


 俺の思わずと言った感じで返したこの言葉に真っ先に反応を見せたのは、置物騎士だった。

 その腰の剣に手を掛けたのだ。思いっきりヤル気をその体から放出しているのが分る。その俺に向けて来る熱量が半端無い。そいつと俺との位置は結構離れている。離れているのに何だか「熱い」と感じるのだ。

 それで本気でこの騎士は俺を殺す気なんだなと言うのを感じた。


「止めよ。控えておれマルダース。いや、コレは私が悪かったな。馬鹿息子を助けて貰って礼の言葉一つも言わずにこの様な発言は恥であるか。タクマよ、今回は済まなかったな。危ない所を息子が助けて貰ったと言う事で私から頭を下げよう。ありがとう。」


「あーあ、殿下、父親に頭下げさせてますよ?思う所は無いですか?あ、頭上げてくれます王様?別に俺は礼の言葉が欲しくて助けたって訳じゃ無いんで。別にそう言うのは要らないっす。」


 殿下にめっちゃ睨まれた。それ以上にこの部屋の空気がめっちゃカオス。

 ジェーウや侯爵やマリはハラハラしている模様。殿下は思いっきり俺を睨んでくるし。マルダースって騎士は剣から手を離したけれどもその剣呑な雰囲気はずっとある。

 一切空気を変えていないのが王様とその背後の秘書みたいな人物だけ。


「では改めて。私がこの国の王をやっているバラードラム五世だ。タクマよ、今後も宜しく。今回の件は非常に重く受け止めている。そこでこうして先ずは何ら周囲の憶測や調査の結果に左右されない為にも初期情報を重要と見做して関係者に集まって貰って話をしたかった。集まってくれて御苦労。」


 俺に対して気さく過ぎ王様。しかもアッサリこの空気を変えて見せた間の取り方は絶妙だ。やり手のオッサンに見える。

 その見た目は殿下を順当に年を取らせた感じだ。落ち着きがあって殿下にも見習って欲しい所であるコレは。


 こうしてここでおさらいと言う事で話の時系列準に順番に説明が始まる。それは先ずは侯爵様からだった。

 教会騎士が何やらきな臭い行動を起こしていると言う情報を手に入れた所からが話の発端であるらしい。

 けれどもその後は俺の今持ち合わせているこの世界の足りない知識ではチンプンカンプンな話が続いた。

 なのでここだけで説明の十分の一も理解できていないと思う。


(あれ?俺この場に残る必要あったんだろうか?王様との挨拶だけして終わったら帰ってても良くない?)


「マリ、すまんけど、俺、寝るわ。俺の話が必要になったら起こしてくれね?じゃあお休み。」


 我慢が出来なかった。俺は寝る。眠気が限界だった。小難しい話を理解も出来ないのに長々と聞かされていると眠くなるよね誰だって。


 この俺のふてぶてしい行動にジェーウが「マジか」と言った信じられ無いと言いたげな目でこちらを見ていたのを視認した瞬間に眠りに落ちていた。

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