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★★★絶対にこういう場面があるんだから嫌なモノだ★★★

「お待ちください。ポーリス殿下とお見受けします。ご事情を説明して頂けると助かります。私は衛兵長のマドルスと申します。これは一体何事でありましょうか?住民の通報を受けて駆け付けて来た次第で御座います。」


「仕事御苦労。これは敵への牽制と同時に我の安全の為の行動である。試練場内で刺客に命を狙われた。そこに捕縛して歩かせているのはその犯人の一人だ。このまま我らは歩いて城に入る。お前たちは同行せずともよい。仕事に戻れ。」


「は!しかし殿下の御命が狙われたと聞いてはこのまま戻る事も出来かねます。周囲の警戒の為に同行を許可願いたく。」


「要らん。戻れ。今のお前たちの中に敵に通じている者が居るかどうかの判別は付かん。敵が紛れ込んでいない事を我も信じたいが、今は引け。安全の可能性の話だコレは。お前たちの中に刺客が紛れ込んでいないと言い切れるか?衛兵長?」


「は!出過ぎた真似を申しました。これより自分たちは元の任務に戻ります。お前たち、戻るぞ!」


 聞き分けの良い人物で良かった。まあ確かに駆け付けたこの十名の中に敵の刺客が紛れ込んでいる可能性を考えたら近づかせて良いモノじゃ無い。

 今連行している犯人を口封じされるかもしれないし、殿下の命をまた狙われたらソレもやっぱり面倒である。

 その点を論じて衛兵長を引かせた殿下は再び歩き出す。このまま行けば無事に城に入る事が出来ると思えた。


「だけどまあ、何だろうな?お約束っていうの?城に入る門の前にずらーッと勢揃いって・・・敵の勢力のデカさが良く解る人数だな?」


 三十名来た。全身黒づくめの解り易い武装集団が。これだけの数を揃え引っ張り出すのに金が幾ら必要だろうかと考えてしまう。

 それだけの資金を使ってでも殿下をそんなに殺したいのかと。城に入られると手出しがし難くなると敵も分かっていての、この行動なのだろう。

 今の城から出ている機会を逃すと次にいつ狙える時がやって来るか分からないと、そう言う焦りが今の目の前の人数で見えて取れる。


 突然に目の前に現れたこの三十名は一気に展開してこちらを囲んで来た。素早く、かつ、慎重に。

 襲撃に関しては奇襲が本来なら基本だろうが、こいつらはこんな昼間なのに俺たちの隙を突く様な行動をしなかった。

 人数的な余裕からなのか?はたまた慎重に慎重を期すためなのかは分からないが、俺たちの前にしっかりと姿を現した後での包囲展開である。

 コレはまぁ、こちらの抱える戦力との兼ね合いを見たのかもしれない。怪我人や死人を向こうも無駄に出す事を嫌っての慎重行動と言った所か。


 それならば住民に紛れての格好で一気に襲ってきても良い物だと思えたのだが。それならばきっとこうして真正面から対峙するよりかは暗殺の可能性も上がるし、その後の逃走でも逃げ切り易いと思うのだが。


 ここでその疑問の答えが刺客たちのリーダーらしき男の口から語られた。


「俺たちは暗殺者「宵闇」と言う。俺たちの名を上げる為、実力を見せる為、お偉いさんたちへの売り込みの為にこうして真正面から今回は挑ませて貰う。」


「殊勝な事だな・・・こうして我らを舐めて掛かるとは。お前たちを雇ったのは誰だ?今ならソレを白状すれば命だけは取らずにいておいてやる。言う気はあるか?・・・無い、か。まあ当たり前の事だな。」


「これから死に往く者への手向けとして教えてやっても良いのだが、ソレは明らかに格下に対して余裕がある時にする戯言でね。この場の誰かしらが万が一にも生き残ってはならないのだよ。簡単にそう依頼者の名を出せるはずが無い。我々は舐めて掛かっているのでは無いと言う事をこの人数で知って欲しかったのだがな?」


「確実に全員を殺せると見込んだのがこの人数だと言いたいのか?ならば死ぬのはお前たちの方だったな。今日で店仕舞いになるとは、憐れだな。」


「・・・言葉を交わすのはここまでとさせて貰おうか。高貴なる殿下とこうして会話を交わせたのは良い土産になる。さて、覚悟して頂こう。」


「スラッシュ」


 暗殺者たちの準備が整った所で俺は一歩前に出て剣技「スラッシュ」を放った。

 ここでウインドカッターじゃ無かったのは暗殺者の展開した範囲的な物での判断だ。

 向こうは俺たちを包囲してじりじりと距離を詰めて来ていた。三十も数が居るのでそうやって包囲を狭めていけば前に出る者、後ろに下がってフォローに入る準備をする者と少しづつ分かれて行く。恐らくは事前に相談しての事だろう。それらはスムーズに動いていた。


 で、包囲がそうやって狭まって行けばこちらを囲って来ている範囲も少しづつ縮小していく。

 なのでソレを計算して魔法では無く、剣技の方を選んで発動したのだ。

 ウインドカッターの方を使うとその攻撃範囲に余分が出そうだと判断した。その余分に巻き込まれて何も関係ない物まで破壊してしまったらと考えたのだ。弁償はしたく無い。みみっちい事を考えた結果である。俺の人間性はその程度なのだ。


 そうして俺たちを囲う暗殺者の集団の半分が体を真っ二つにして息絶えた。

 横薙ぎであるので腹のあたりからズルリと上半身がずれ落ちて地に落ちる。

 綺麗に暗殺者たちはキッチリ十五名、死んだ。今この時、この瞬間に。


 俺はソレを全く意に介さずに反対側の暗殺者たちの方に歩く。そしてそちらにも。


「スラッシュ」


 たちまちの内に暗殺者たちは全滅だ。悲しいかな、俺は面倒事を避ける為にこの行動を取った。こちらの死人、或いは一切の怪我人を出さない判断をした為に「俺ツエエ」をやってしまったのだ。

 盛大な溜息の一つも出す所である。


「はアぁぁぁぁぁ~・・・やだなぁ。これだけの力を見せちゃったらもうケツ捲って逃げるとか出来無さそうじゃ無いか。だからって言って俺がここで動かなかった事で身内に死人が出ても後悔してただろうし?いや、ホント、力が無くて嫌な思いして後悔するのと、力があってこうして行使して被害無しでホッとした後に嫌な気分になって後悔するのとじゃ、ま、確かにこっちの方がマシなのかもしれないけどさ。」


 どちらかと言えば「俺なんかやっちゃいました?」みたいな鈍チン糞主人公よりかはマシだと思いたい。

 自分の力に自覚がある事は悪い事では無い。意識しないで周囲を巻き込むと言った無責任にならずに済むからだ。

 俺はちゃんとこの後で追及される覚悟の上で力を発揮した。この場に居る他の者たちが俺に対してどんな態度で質問攻めしてくるかを予想してからちゃんと動いたのでそこら辺の覚悟はできている。


「はい、じゃあ質問のある方は一人ずつ挙手をして行ってください。あ、ちゃんと質問内容はまとめて、かつ簡潔でお願いしますよ。一気に長々と聞きたい事を全部追及されても答えるのがメンドクなるからねぇ~。」


 なので俺は先制してそう言い放つ。唖然とした顔になって全員が動けていないその瞬間を狙って。

 ここで一気にわちゃわちゃと群がられる所を俺は想像したのだが、何故か全員が静かだ。

 連行していた犯人も顎が外れんばかりに口をオッ開いているままで固まっていて動きもしない。


「・・・え~?俺の予想と違うよ?何でフリーズしたままなのよ全員が?誰か、喋って?え?何?マジで怖いんですけど?」


 視線、視線、視線、マリ以外が俺に向けて目を見開いてジッと見つめて来ている。

 ここでの救いはマリだけだ。散々関りたく無いと言っていた相手に縋っている状況は何だか嫌だが、しかし背は腹に変えられぬ。


「・・・マリ、何か聞きたい事、あるぅ~?」


「いや、何も無いよ?皆が今更タクマにこれ程に驚いて言葉が出ていない事の方が逆に私には「何で?」と疑問なくらいかな?」


「え?そう言う感想を言う?今?マジで?」


 これまた変な事をマリが言うモノだからこの場の空気が妙な雰囲気に変わる。

 ジェーウ達が集まってヒソヒソ話を始めてしまうから収拾が付かなくなってしまう。


「放っては置けない。」

「魔法じゃ無いのよね、アレ?剣を振っただけで何であんな現象が起こるの?え?やっぱ魔法?なの?」

「できねえよ、あんな事は。普通じゃねぇと思っていたけど、コレは流石に何て言えば良いか分からねえ・・・」

「いやはや、タクマ殿は底知れないですなぁ。私、もうこれ以上彼に関わるのは御免被りたいと思いましたぞ?」


 バルツ、アリーエ、バリーダ、ポンスがそんな勝手な事を言っているのが俺の耳に入って来る。

 と言うか、彼らは聞こえない様になどと言った配慮などせずに声量を落とさずこの会話をしている。

 これに俺はふざけんなよ?と言ってやりたかった。本人に聞こえている様な会話はヒソヒソとは言わねえ。


「殿下、危険では無いでしょうか?ここまでは彼が味方だったと判断できる行動を取って来ていたので安心しかけていましたが。これが、これが・・・敵に回るとなれば我々では殿下の御命を守る事は不可能かと・・・」


 殿下付きの騎士の一人がそう小声で殿下に耳打ちしている。と言うか、ソレもこっちに聞こえとる、聞こえとるがな。俺が殿下をぶっ殺そうと思っていればとっくにヤっちゃってますよ?

 心の中だけでそんなツッコミ入れて、実際にはそう言ったりはしない。相手の精神が落ち着くまでは何を言っても無駄なのだ、こういった場面では。

 だから待つ。俺は向こうの心の整理が付くまでジッとこの奇妙な空気に我慢して待つ。耐える。


 そして耐えていたらジェーウと殿下が同じ質問を飛ばして来た。


「タクマ、君は味方、と判断しても良いんだよな?」

「貴様は味方、として判断して構わぬな?」


「一番不安になる所は、まあ、そこに至るかぁ。そうだな、味方だよ。裏切られたりしない限りは。あ、この事もだんまりでお願いしますよ。こんなのを広められたら俺の事を利用してやろうだなんて輩が出て来ると迷惑なんでね。」


「うーん?多分父上は既にタクマの実力を鑑みて利用していると言えるよね?その今の状況は良いの?」


 マリがそこら辺の痛い所を突いて来たのだが。


「はぁ~。そこら辺はもう良いよ。これから先はちょっと遠慮したいけどな。俺は貴族の裏にある汚いゴタゴタに巻き込まれたくは無いんだよ。まあ、もう遅いかもしれないけど。・・・遅いかもしれないけど・・・」


 ちゃんとその点を口に出してく事は大事だ。じゃ無いとなあなあでズルズルと巻き込まれ続ける。

 ここでシッカリと拒絶の意思があるぞと脅しておかねば利用され続ける運命に転げ落ちて勢いを止められなくなる。

 まだ今はギリギリ止まれると思ってそうした事を絞り出して口に出したのだが。


「ふん、既に貴様の事は遅かれ早かれ知れ渡る事になろう。我らが黙っていたとしてもな。そうなれば貴様がいかに嫌だと言った所で周囲の動きは止められぬだろうな。ソレが心底に許しがたいと言うのであれば今直ぐに首都から離れてしまう事を勧めるが?」


「・・・それって殿下が夢中のマリの周囲から俺を遠ざけたいが為に言ってるだけだろ。・・・おい、図星じゃねーか。」


 このツッコミに対して顔を俺から逸らす殿下。しかもその時には盛大な「ちッ!」と舌打ちを忘れない。


 こうしたやり取りを終えた俺たちはやっとの事で城に入る事が出来たのだった。

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