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★★★殿下の行進★★★

 帰り道は俺が先頭に立ってスイスイと戻る。出て来る試練獣は俺がサクッと撃ち殺す。

 俺の使っている魔法がどんなモノであるかをその都度観察してくる殿下の目が俺を射殺す勢いである。


 攻撃魔法、ウォーターガンは物凄く便利過ぎて使わ無い手は無い。

 その威力もそうだが、発動も高速、飛ぶ速度も高速となれば、ソレを肉眼で確認しようとするのは困難を極めるだろう。

 けれども殿下は俺が魔法を撃つ度にソレを見極めようとしてくるから鬱陶しい。


「おい、教えろ。その魔法は何だ?一体何を飛ばして試練獣を撃破している?魔法の事に関しても我は学んでいる。しかし、お前の使っている今の魔法は我の知る魔法に一切無い。・・・ちッ!教える気は無いと?」


 殿下のイラつきに俺は全く心の籠っていない謝罪の言葉を並べる。


「サーセンネー。これ、俺にも理解できて無いんすヨ。使えてるから使う、みたいな?教えたくても教えられ無いってのが、正直な所でねぇ?原理も道理も俺にもサッパリチンプンカンプン?神様に聞いてね?あ、コレも口外無用でオネガイシャース!」


 これに非常に嫌な顔をされながら殿下に盛大な舌打ちをされた。俺はコレを了承の返事と見做して先を急ぐ。

 そしてドンドン進んで辿り着いたのは五階層の魔法陣の部屋。


「・・・道を外れたと思えば、コレは、何だ?我を此処に連れて来た意味は?」


 そう、俺はここでワープの魔法陣を使って皆で帰ろうぜ!と言いたかったのだ。

 まだ実験は終わっていないのだ。そう、この魔法陣は何人を通行させる事が出来るのかという点だ。

 今の所は俺だけしかこの魔法陣を通過していない。なのでどんな仕様なのかをもっと確かめる為にもここで殿下に協力して貰おうと言う魂胆である。

 ここの調査を後々で国がするにしてもだ。あらかじめある程度までは俺たちが実験調査をした結果があった方が良いだろう。

 ソレに殿下を巻き込めばこの功績を横から掠め取ろうとしてくる邪魔者は排除できるハズ。

 殿下にはコレを見つけたのが俺たちである事の証人になって貰う点もある。


 ここで一応はジェーウが殿下へとこの魔法陣の詳細について話を始めた。

 この説明に少しづつ殿下の表情は驚きと納得の顔に変わって行った。


「なるほどな。理解した。しかし完全に安全だとまだ分かっていないコレを利用して試練場を出ようとは思わん。こういった実験は重犯罪者を使って刑罰の一つとして利用し、安全の立証をするものだ。いきなり自分の身を使って直に体験するなどと言った事をする奴は正気を疑うな。」


「おう、何だとコラ。ソレは俺の事をバカ呼ばわりしてんのか?オオン?」


「まさか馬鹿がここに存在するとは・・・」


「誰が馬鹿じゃコラァ!いや、否定はデキネーかぁ~。自覚はある。けど、周りに迷惑かけてるどっかの殿下程じゃねーな。うん。」


「・・・貴様、死にたいらしいな?」


「あ、自覚がありました?なら後ろでずっとウンザリした目でアンタに付いて来ていた護衛の人たちに先に一言だけでも謝罪の言葉を言ってやるんだな?」


「調子に乗るなよ?貴様のここまでの働きに免じて手討ちにせずにおいてやっているだけなのだからな?」


「俺は代弁してやってるだけだ。殿下こそ今回の事で自分の軽率な行動を振り返って反省して、猛省して欲しいですね?同じ過ちを繰り返さないためにも、勝手な事は今後控えて貰いたいデスネー。そうでしょう?皆さん?」


 俺は殿下の後ろの騎士たちにそう言って同意を求める。するとどうだ?その騎士たちは大きく、そして何度も首を縦に振る。

 これには流石に殿下も言い返せなかった模様。いや、そもそもがこれまでにこの様な暗殺が一度も無かったのだろうか?


(無かったからこそこれだけ殿下が動揺してるんだろうな今。騎士たちのジト目が相当に突き刺さってる模様)


 非難の目をずっと受けている殿下の姿を俺は「プッ」と小さく笑う。

 その瞬間に殿下が振り向いて来て睨んでくるのでマリの背後に素早く俺は隠れてやった。


 このやり取りにずっとジェーウ達の方はハラハラしている。俺にしたらこの程度は別にどうって事無いだろ?と思うのだが。

 相手は殿下、この国の王子様。ここで不敬罪と言う事で俺が斬り捨てられないかどうかを心配していたのだと思う。

 けれども俺からしてみればそんな偉い立場の相手であろうが関係無い。この殿下は人の上に立つには未熟過ぎるし、尊敬できる様な部分もまだ極短い時間の付き合いしかしてない俺にしたら発見できていない。

 今の俺には殿下が周囲に迷惑を掛けているガキにしか見えていないので改まった態度で接しようと思えないのだ。

 だからこんな怖いモノ知らずな態度を取れてしまう。


(本来だったら何となくにでも王族相手だし畏まった言動を取る所なんだろうけどな、ラノベ主人公なら)


 俺は自分がそんな御大層な存在になった覚えが無い。主人公?何それ?である。

 そして何か事が起こったとしてもこのドラドラクエスト主人公の超過剰ハイスペック身体である。危険が迫って来ても如何とでも出来ると言った感覚があった。

 なので偉い相手、たとえ王族などであろうが「多分大丈夫じゃね?」と言った楽観した態度をとる事が出来たのだ。

 最終的にここで俺が犯罪者として指名手配されても逃走は容易だと判断するし。

 力づくで俺を捕縛などと言った事をしてこよう物なら全て返り討ちにできる自信がある。被害などを考えなければ。


 こんな厄介な考えをしている俺である。つくづく何でこのドラドラクエスト主人公の身体に俺の意識が入ってるんだ?と思わざるを得ない。

 神様、中に入れる人を間違ってます、と言ってやりたい所である。もうちょっと主人公主人公した奴を選べなかったの?と。


「最終的には力こそパワー?みたいな?さて、じゃあ殿下がビビッて帰還の魔法陣使わないって言うし、順路を通って試練場を出ようか。なーに、俺が居ればタイムアタック!タイムアタック!だぜ?」


「おい、誰がビビッているだと?怯えもせずに未知に飛び込む様な事をする命知らずよりかはマシだ。」


「ヘイヘイヘイ。分かりましたよ。さっさと帰りましょ、帰りましょ。」


 俺は気安い態度を崩さない。もう徹底して殿下に対して畏まった態度を取る事をしない事に俺は決めた。これぞ不敬極まると言うべきだろう。

 こんな俺の態度に殿下は何も言ってこなかった。なのでこの魔法陣部屋を出てさっさとこの試練場から出る為に俺は歩き出した。


 途中で休憩を入れるかどうかをちゃんと尋ねたが、何故か不機嫌な声で「要らん」と殿下に断られた。解せぬ。

 俺は別に魔法陣部屋を出てから何らおかしな事は一切していないのに殿下の機嫌が悪いのだ。

 その悪くなったタイミングとしては殿下がアリーエに話をしてからだと思う。

 アリーエが首を横に振ったのを見てから殿下の機嫌は悪い。ついでに俺を睨む目も鋭くなっている。

 その話の中身は俺には聞き取れなかったが、その予測くらいはできる。どうせ俺の使っている魔法、ウォーターガンの件についてだろう。

 どうせアリーエに見当が付くかを聞いてその返答が「ノー」だった事で増々俺に対して警戒心を募らせたと言った所か。


 そうやってノンストップで歩き続ければ既にもう二階層にまで上がって来ていた。

 通路には他のお客様、挑戦者と呼ばれる者たちが居て結構な回数すれ違ったりしている。


 浅い階層にはこうして日々の稼ぎを取りに来ている挑戦者たちが多いのだ。

 そうした挑戦者たちが俺たちに向けて来る視線は様々。驚き、興味、恐怖、好奇心、拒否拒絶、嫌悪などなど。

 好意的な視線は一切その中で向けられてこないのは、いっそ清々しいと言えるか。


 そんな視線を気にせず歩き続ければ試練場を出る。


「うーん!娑婆の空気は美味いぜ!と、一度言ってみたいセリフ第何位だこれ?」


 俺は背伸びをしながらそんなセリフを吐いた。ここでバリーダのツッコミである。


「何だ?その一言は?本当に得体がしれなくて何処までも理解不能な奴だったな、お前。」


 さてここからである。この後はどうするかを殿下に聞いておくべきタイミング。


「で、この後はどうします?手を貸せと言うのであれば、もう乗りかかった船みたいな感じだし?切りの良いトコまでお付き合いしますよ。ここまで来ちゃうとね。あ、教会騎士たちの死体の引き渡しもしないとダメだから付いて行かなきゃダメなのは確定だったな。」


「何だ?乗りかかった船とは?まあ、良い。お前たちにはこのまま城にまで付いて来て貰う。そこで礼を渡す。それと正式な捜査の協力も要請する事となるだろう。」


 俺たち、と言うか、ジェーウ達はそもそも報告があるだろうし城に戻るのか決定していた事だ。

 ここでマリと俺は城に一緒に来いと言う殿下の言葉を断る事も出来よう。

 マリは侯爵様、自身の親に今回の件の報告をしに行く必要もある。


 とは言え、それよりも今は殿下からの要請の方が重要度は上なのかもしれない。

 どちらにしろ今回の事は別々に動くよりもひとまとめになって動いている方が安全度は高い。

 何せ試練場を出たからと言って安全とは言い切れないから。今もまだ暗殺者、刺客がこちらに差し向けられているかもしれないのだから。

 失敗した場合を考えて次の策を重ねておく、などと言うのは有り得る話なのだから。


 こうして俺たちは全員で移動だ。城まで歩きである。馬車は無しだ。

 縄で縛られて連行される犯人を街中で見せびらかしながら進む事で安全性を高めているのだ。

 ここでこの犯人を取り戻す、或いは口封じの為に殺すと言った事を相手がして来た場合は殿下が城で説明する話の信憑性がより増すから。

 目撃者多数となる街中でそんな襲撃があれば殿下が襲われた事を誰もが知る事になる。その影響はどれほどになるかは予想が出来ない。

 こうして敵への牽制の為に徒歩で城に向かうのだ。こうすると敵にも即座に暗殺の失敗は報告されてしまうだろうし、先んじてこの失敗のフォローに入られたりする事もあるだろう。

 けれども安全を第一に考えればこの方法が今は多分一番良い。目立つ事で自分の身の安全を確保などと言うのはちょっと遠慮したい事ではあるだろうが。


「と言うか、堂々としてるなぁやっぱ。民がどうのこうのと偉そうに語っていただけあって衆目を浴びるのは別にどうって事無いってか?」


「ふん!この程度の視線が何だと言うのだ?そんな物を気にしてしまうのは貴様の様な小者だ。力を持つ者が目立つのはどんな界隈だろうと道理だ。コレを真正面から受け止められぬならひっそりと最初から生きていればいいのだ。」


「ソレに巻き込まれてしょうがなく顔を晒しているのは?」


「だから貴様だけは目立たぬ様にと騎士たちに囲わせて顔を余り見せない様にしてやっているだろうが。」


「へいへ、有難い心遣いで御座いますよ。・・・あ、あの家の屋根に不審者目っけ。」


 俺はウォーターガンを一発空に撃つ。するとその人影には命中しなかった。距離と光の加減、それと斜めだった事で目測を誤った。

 回りを騎士で囲まれていて咄嗟に動いて狙いを安定できなかった事も原因だ。


「あちゃー。失敗した。当たんなかったわ。殿下、あれ放っておいて良いですか?逃げっちゃったけど。言われれば追いますが?」


「・・・ちッ!今はそんな奴は放っておけ。まだ城にまでは距離がある。堂々とこのまま行くぞ。」


 俺は目立ちたくない事を事前に伝えておいたので騎士たちに囲まれて歩いていた。

 本当は心底逃げ出したかったのだが、ここまで問題が大きくなってしまうと逆に今俺が逃げ出す事の方が厄介になると判断したのだ。

 犯人と通じていた、などと言われるのは心外だから。その場に無い人物は陰口を囁かれていたとしてもソレを否定できないのである。

 俺もここでちゃんと殿下の協力者としての態度を見せていないと、後で殿下にどんな風に言われるか分かったモノじゃ無い。

 俺の事を平気で犯人扱いして冤罪を被せて来る可能性も考えてしまう。

 まあそうなればマリやジェーウ達がソレを否定してくれると思うのだが。


 こうして堂々と街中を歩き続けていれば住民の誰かが通報してもおかしくはない。いや、寧ろ敵が時間稼ぎの為、或いは計略の為に通報したと言った事もあり得るか。

 城までの距離があと半分とマリから聞いた時に、俺たちの前に衛兵が十名程やって来て道を塞いで来たのだった。

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