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★★★容赦は無しで★★★

 そんな風に簡単に人が吹っ飛んで行くのを目にして驚かない奴が居る訳が無い。

 でも驚きながらも動く者は動く。「それとこれとは別」と、しっかりと体と気持ちを切り離して動ける者は存在する。

 こうした事は経験を積んで、或いは訓練を積んでできる様になる事であろう。


 動いたのはバルツだ。呆気に取られた顔で棒立ちになっている教会騎士の一人の首を盾で殴った。

 多分首の骨が折れて致命傷だと思う。それ程の一撃を放っていたのだバルツは。容赦は無い、と言う事だろう。

 これでもう二人も戦闘不能と化してしまった教会騎士団。ここでイヤームが叫ぶ。


「何故こうなる!?今のは一体なんなのだ!?しかもどうして貴様ら程度の腕前で私たちを倒せるのだ!運が良かっただけの分際でぇ!」


 どうやらコレはジェーウ達の事を言っているらしい。だがこの言葉は今の現状を何ら変えたりできない。

 殿下の護衛の騎士が一人ここで踏み込み抜刀をして一番近かった教会騎士に斬りつけたのだ。

 その一撃は鋭く、それを教会騎士はまともに食らっていた。そしてこれも容赦無かった。首を狙った一撃だったのだ。


「・・・うっわ、えっぐ・・・」


 見事に油断を突かれ首を三分の一もバッサリと斬られたその教会騎士は急激に頸動脈から噴出する血によって失血性ショック死である。


 こうなると逆転の目はもうイヤームには無いだろう。それを理解してか、していないのか?


「軟弱な肩書だけの王族護衛騎士が何故我らを倒せるのだ!?話が違うでは無いかぁ!」


 何だろうかこの虚しい感じは?そもそもがどうにも教会騎士たちはこちらを最初から見下して、そして勝手に弱いと決めつけていただけに過ぎないらしい。


「コレは流石に何も言えないな?そもそもここに俺たちが辿り着いてる時点でもっと警戒レベルを上げておくべき話だったんじゃ無いか?寧ろ作戦の失敗を判断して暗殺中止する案件だろ・・・」


 思わず俺はそんなツッコミをしてしまった。けど、もう遅い。今の時点で教会騎士側に三人の被害が出てしまっている。

 ついでに神具であるはずのベルは幾ら鳴らしても試練獣がこの場に来ないのだからここはもう「詰み」だろう。

 ここで殿下がイヤームに最終勧告を出す。


「イヤームよ!観念せよ!もし素直に情報を吐くと言うのであればその命は保証してやろう。さあ、言うが良い。誰の差し金で我を討とうとした?」


 殿下の命を誰が狙ったのか?ここで単純に疑うのなら「教会」が、と言った所だろう。

 しかしそんな安易な話であるなら簡単で良いのだが。ここでもしかしたら「国」の方の貴族の誰かが教会と結託して事に及んだ可能性も否定できないのだ。

 国の方の騎士団は既に中身が腐敗していると言った話である。いや、教会の方もそうだったか?

 そうなると利権関係で殿下を消したいと言った考えの教会と貴族が共通の利害で一致とか?或いは後継者問題に絡んだ、殿下を敵と見做す派閥が教会に協力を求めて刺客を放ったと言った事も深読みしたら考えられる。

 まあそう言った読みは回りくど過ぎるので今回の件では無いと俺は個人的に思っているが。


 俺はこの国の内部事情、派閥の対立など知らない。知らないけど、ラノベ展開的には別に珍しくも無いパターンであるこんなのは。


 そして試練獣を操る事の出来る神具などを持ち出している時点で今回の暗殺は肝入りと言った所か。

 暗殺を仕掛けた向こうとしてはこれで確実に殿下を屠れると考えていただろう所にこれだ。失敗だ。相当な大打撃を与えられたと言えるのでは無いだろうか?


 でもイヤームは諦めなかった。こんな「詰み」と言える状況でも矜持を捨てたりはしなかった。

 その手に持っていた神具のベルをもはやゴミとでも言わんばかりに投げ捨ててその腰の剣を抜く。


「この私が貴様らの言う事を聞くなどあり得んわあァァァ!」


 気合と共に斬り込んで来た。でもその一撃で狙ったのは。


 マリエンスであった。


 イヤーム、ここで一番戦力が低いとの狙いでマリに斬りかかった様子。

 ここで人質にでも取れればこの場を脱する事も不可能じゃない、などとも思ったのかもしれない。

 けどソレは虚しい結果に終わる。


 ギャリリ、キーン、ザク。


 そのイヤームの一撃は受け流され、切り返され、腹を貫かれている。

 マリはそれらの動きを流れる様にして熟し、反撃をしているのだ。


「・・・げはッ!?ば、バカな・・・」


 イヤーム、致命傷。ちょうど鳩尾の所にマリの剣がざっくりと深めに刺さっている。


「ふぅ~・・・焦ったよ。でも、これは貴方の行動が招いた結果だ。悪く思わないで欲しい。」


 悪く思うなと言ってみても、こう言った手合いは逆恨みするモノだ。

 でもイヤームの命の灯はもうそろそろ尽きる。床に倒れ伏したイヤームは気合で何とか意識を保とうとしているのだが、次第に体の力が抜けていき、その見開いた目は虚ろになっていく。

 そしてとうとう動かなくなって物言わぬ物体と化してしまった。


「かなり濃ゆいキャラだったのにな。死に方はかなりのアッサリ塩味とは、何だろうなぁ。虚しいもんだな。」


 俺はイヤームの死に様に一言送る。こう言うキャラってしぶとく最後まで生き残るパターンが多いと思っていたが。まさに「死ぬ時は死ぬ」と言った感じである。


 さて残りは一人だったのだが。そいつの様子がどうにもおかしい。

 着ていた鎧を全て脱いでいた。身軽になった事でぴょんぴょんとその場で飛び跳ねてその後は軽いストレッチなどを始めたのだ。


「あ、もしかして一人だけ教会騎士所属じゃないとか?鎧を捨てたって事は本来は素早さが持ち味の戦闘をする?暗殺組織かなんかか?その様子だと一人でなら逃げ切れる自信がある?・・・ああ、もしくはこれだけの人数差があっても殿下だけを殺す自信か、或いは手段持ち?」


 ここで俺の必殺「ラノベあるあるパターン」が火を噴いた。これに見事にピタリと動きを止めるその男。

 そこに俺は追撃の言葉をぶつけていく。


「おいおい、そこで動きを止めちゃったら「ハイそうです」って白状しちゃってるのと一緒だろうに。皆、警戒してくれ。毒の煙とか、もしくは目つぶしの煙幕か何かもやって来るかもしれない。」


 物凄く嫌そうな顔に変わるその男はジッと俺を睨んでくる。どうやらそいつは俺を厄介な相手と認識して来た模様。

 だけどまあ遅い。俺はここで魔法、ウォーターガンでそいつの太ももを撃ち抜いていた。


「うぐぅッ!?」


 この男、俺の事を警戒していた割には魔法の一撃を食らっている。しかしこれはこの世界の「魔法」と俺が使う魔法が全然違うからなのだと思う。


 どうやらこの世界では魔法は●二病な長めの詠唱が必要であるのだ。

 しかし俺の使う魔法はその名前だけを意識して口にするだけで発動してしまう。

 この差があってどうやら相手は油断とも言えない隙に俺の放った魔法を食らってしまったらしい。


 太ももに怪我を受けてしまってはもう恐らくは走っての逃走も、激しい戦闘も無理だろうこうなれば。


「捕縛する?殺害する?それとも見逃す?まあどれを選ぶにしてもまだ近寄らない方が良さそう。自爆されて被害を付けるのが一番馬鹿馬鹿しいしな。」


 自爆などと聞いてジェーウは眉根を顰める。殿下はギョッとした顔に一瞬なる。マリは真面目に「捕獲して情報を吐き出させよう!」と言っているけれども。


「・・・き、貴様ぁ・・・覚えておけよ!」


 その男は撃たれた太ももに緊急応急手当をした後に懐から白い球を取り出していた。それはパターン的に恐らくは煙幕玉。

 そいつを俺に向けて男は投げつけて来た。


 が、悲しいかな。ソレは俺には通じない。見事に俺はソレをキャッチして見せる。


「・・・おし!爆発したりしないな!掴む際に力加減とか失敗したら即ボンかも?とか思ったけども。上手く行ったぜ、上出来上出来!」


 もしかして導火線でも付いていて火での着火式かとも一瞬思ったが、そうじゃ無かった事でこうして見事に相手の目論見を無効化である。

 相手の男はこの結果に唖然として固まっている。自分の思い通りに行かなかった事がショックである様だ。

 ここで諦め悪くもう少し抵抗するかと思って少々俺は構えたのだが、相手はどうやら観念してしまった様でガクリと首をうなだらせてしまった。

 まあ騎士に囲まれ、剣を向けられ、逃げ道も塞がれてと、最後の綱として投げた玉も見事に効果を出せずでは衝撃の大きさに諦めるのも早まろうと言うモノか。


 殿下の護衛をしていた騎士たちがその男を捕縛する。殺さないで情報を搾り取るつもりの様だ。

 まあこうなったら試練場でどうのこうのと言っている場合では無いだろう。コイツを連れて早く戻り、今回の件の尋問をするべきである。

 教会騎士の九階層攻略は殿下を誘き寄せて事故に見せかけ亡き者にしようとした計略だったのだから。

 コレの裏を調べるのが今は最重要事項となるだろう。


「で、このベルどうする?それと死体は?」


 教会騎士の方は一人を除いて全員死んでいる。俺が殴って吹っ飛んだ者もどうやら受け身を失敗したらしくて運悪く息が無かった。

 死んだ四人も証拠として放置はできないだろう。しかし死体を担いで運ぶのは重労働である。しかも四体だ。だが俺にはこれに試したい事があった。


「殿下、ちょっと良いですか?ここでもう一度確認です。ここでの起きた俺に関する事は口外しない、ここだけの秘密って事を守って頂けるんですよね?」


「うむ、何を今さら言うのかと思えば。我が名において約束をする。違えはしない。で、何だ?」


「実験したい事があるのでこの四つの死体は俺に任せて貰えませんか?地上に運ばせて貰いますよ。ああ、黙っていてくれる約束だけで結構です。それと、このベル、殿下、要ります?これさえあれば試練獣を操れるって言う事らしいし、殿下がここの試練場をコレを使って簡単攻略!って事もできそうですよ?」


「・・・いや、ソレはどうやら無理な事であるらしいぞ?」


 俺が拾い上げたベルはその時にグズグズになって粉と崩れた。


「うおッ!?何だコレ・・・?びっくりした。どう言う事?」


 この俺の疑問には殿下が答えてくれた。


「その神具はどうやら登録者しか使えぬ代物だったのだろう。しかもその当人が死亡するとそうやって消滅する様だな。惜しかったが、そうなってしまってはしょうがない。」


「あー、ソレもあるあるかぁ。勿体無いなぁ。コレを使って殿下の暗殺なんか狙ってないで、普通にここの試練場の攻略してれば良かったのに。何でだろ?もしかしたら低階層に出る試練獣しか操れなかったとか?」


 この神具をどうしてこんな事に使ったのかの理由を考えてみる。だけども今更な話だ。もうその当人は死んでいる。話を聞こうにも死人に口無し。答えは出て来なさそうだ。


「で、タクマとやら。貴様は一体どうやってこれらを運び出すつもりだ?」


「え?それ教えないとダメですか?見られるのは勘弁なんで、先に八階層の方に行ってて貰えます?ああ、実験が失敗してもちゃんと死体運びはしますよ?なので安心して先に行っててください。」


 この俺の言葉で殿下は物凄く不機嫌な顔に変わったが、今はそれ所では無いとしっかりと解っているので捕縛した男を連れて先に八階層に戻って行った。


「さて、俺たちも戻ろうか。こんな事になっちゃったし、死体運ぶ約束もしちゃったしな。」


 こうして何処までもグダグダで終始していたが、俺たちも試練場をここで一度出る事に。

 ジェーウたちは殿下が襲われたと言う証人として捜査に協力せねばならないだろうから試練場にこのまま居続けるのも出来ないだろう。


 ここで俺は死体を掴んでマジック小袋の口に近づける。すると。


「うおぉ~・・・感動だ。ラノベあるある。マジックバッグやらアイテムボックスやらには生物は入れられないが、死体になれば入る、だな。」


 俺はこれに一人感動していたが、マリ以外の騎士団メンバーは随分とこの光景にドン引きしていた。

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