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★★★キレて吹っ切る場面とはこういう時なんだろうな★★★

 さて、今はかなりのギリギリで殿下とその護衛?騎士団が戦闘を行って勝利した。そんな十回目。


「こ、コレは正直言ってキツイな・・・済まないが次からは加勢してくれないか?」


 殿下、音を上げた。まあ十体以上の試練獣に毎度毎度に群がられては体力の消耗も激しいだろうし、精神力も使うだろう。

 しかしそれでもこうして誰も傷を受けずに勝利を続けられているのはこの騎士団が、殿下が、しっかりと強者だからだろう。

 だけどもそんな強者も限度はあると。ジェーウに殿下は協力要請を出す。


(最初に王子様が協力しないでもオッケー言うからここまで手出しせずに同行してたんだよなぁ。それでもまあこうなる事は目に見えていたよな)


 俺はそんな事を思いながらジェーウを見た。協力を求められているジェーウはと言うと俺をちらりと見てから返事をする。


「畏まりました殿下。これより我らも戦闘に参加致します。先ずは次の試練獣は私たちに任せてお休みになられてください。そこで私たちの戦い方を見て頂いて擦り合わせをしてまいりましょう。では、行こう。」


 そう、いきなり一緒に戦い始めても連携など取れはしない。なので互いの事を先ず知る所から始めなければならないのだ。

 そこで互いに出せる力、守る技、攻めるタイミング、引き際、などなどを話し合って形にするべきなのだ。

 そう言った物は日ごろ毎日の地道な訓練の中で培い、重ねて、積んでいくモノなのだろうが。

 ここは試練場、そんな時間は無い。なので即席で作り上げてソレを実践で磨きながら先へと進むのだ。


「我が麗しの姫に情けない所ばかりを今回は見られ過ぎたが、しかし命には代えられん。我は将来国を背負う存在なのだからな!」


「いや、何でそんな大事なお方ってのが命の危険に晒される場所にのこのこ来てんだよ?普通は来ちゃダメじゃね?周りの奴が止めるのが普通じゃね?・・・ああ、そう、自由奔放で無茶を平気でする王子様なんだな。だからついて来てる騎士の人たちの諦め顔なのね。」


 俺はこういったキャラを良く知っている。止めても無駄、説得しようとしても難しい、行動力が無駄に高い、自分の思う道を爆走するタイプ。

 だからそんな人物を守る立場の者たちは悟り、諦めの境地に上るしか精神を守る術が無いと。

 俺のこのツッコミに対して王子様は言い返してくる。


「ふん!この我が率先して前へと進まなければ誰がその役目をすると言うのだ?国民は先頭に立つ我の背を見て安心感を得るのだ。この背中に付いて行けば明るい未来に辿り着けると、そう思わせる勇敢な姿を王となる者が見せずして何を見せると?臆病者の様に城の中に閉じ籠っているだけでは民には信用も信頼もされんだろう。民を導くのは国だ。王だ。教会では無い。ここで教会騎士に偉そうな顔をさせるなど、そんな事は出来んのだ。」


 考え方は悪くない。でもだからと言って周りに多大な迷惑を掛ける程の御大層な事でも無い。

 真っすぐで愚直と評すれば多少は聞こえは良いかもしれないが、その実態は周囲の心配など御構い無しに暴走して振り返りもしないと言う厄介な存在である。

 しかも王子などと言う立ち場の抑え込み辛い偉い人物である。臣下と言う立場の者たちではコレを止めようとするのはかなりの難しさだろう。

 コレを止めるなら直接に王様が、父親がしっかりと罰則も含めて説教をせねばならない事になりそうだ。


(でもそんなのも一時的にしか止められ無いとか言ったパターンがあるあるだよなぁ)


 そうやって大人しくしていると思っていれば隙を見て部下の制止を振り切って飛び出すのでは無いだろうか?

 こういった性格なら既に何度もやっていそうな感じである。そうで無ければもう少し今付いて来ている騎士の皆さんの目には生気が宿っていても良いハズだから。

 そして最終的にはかなりの痛い目を本人が見ないとこういった行動に制限は掛からないのがデフォルトだ。

 人は過ちをその身で体験せねば分からない。人から何を言われ様とも根拠の無い自信で「自分はその様な事にはならない」と漠然と思ってしまうモノである。そして痛い目見てから後悔するのだ。


 その後は二度ほどジェーウたちが戦闘。見事に試練獣を倒している。

 まあその数も一回目は七体、二回目は九体と言った感じで、その戦闘も危なげ無く確実に戦い勝っていた。

 ここで殿下、冷静に分析を口にする。


「この階層の試練獣は出て来る種類が多いな。しかもその強さもかなり上がっているのだな。先程の試練獣は三階層で戦っているが、その力強さは一段も二段も上がっている。」


 殿下の言うそいつは猪の試練獣だ。とは言っても何故かその脚は俺の知る猪とは違って馬みたいな長さだったのだが。物凄くキモイ。

 ここの試練場に出て来る試練獣はドレもコレもがその姿が異様なのだ。

 俺の見た事のある動物だな?などと思ってもソレをよく見てみると目が違ったり、牙が生えていたり、どう見てもその大きさじゃ飛べないだろってツッコミ所の翼が生えていたり、脚やら腕が長いなどもある。


 そんな奇妙な試練獣が次から次に現れては戦闘になっている。しかもその一度の戦闘での数は十体前後とのぶつかり合いで消耗が激しい。

 ここにマリは戦闘に参加していない。殿下が「姫は私の命に代えても守る!」と張り切ってしまったので。

 ついでにポンスは荷物持ち兼回復担当なので彼が戦闘不能になるのは絶対に避けねばならないと言う事で後方に下がっている。


 戦闘が終わればポンスは各自にどうやら体力を回復させる魔法を掛けている。

 ポンスが何やらごにょごにょと呪文を唱えたと思えばその手が黄色に光ったのだ。

 その手が息の上がっている者に触れるとたちまちにその者は元気を取り戻す。何とも便利。魔法って不思議。


「いや、不思議とか言うなら俺の存在そのものだろ。忘れかけてたわ一瞬。危ない所だった。」


 自覚を忘れると何事も力尽くで物事を解決してしまう俺へと変わってしまうだろう。

 そうなると厄介事に何でもカンでも首をつっこんで「俺ツエエ!」で終始してしまいかねない。

 恐らくはこの世界で俺は多分「最強」だ。しかし「その「最強」でハーレムを」などと言った展開にする気も無い。

 今の俺は神様に「呪われている」と言っても良いハズの状態だ。ならば調子に乗るのは今後の為にもならないと心に刻まねばなるまい。


「あ、危ない。」


 俺はそんな思いを置き去りにして魔法を撃ってしまった。一瞬の判断だった。

 マリと一緒に後方に居た俺はそもそもがバリーダに「大人しくしとけ」と言われてこの立ち位置だったのだ。

 しかし殿下は集中力が切れて来ていたのか飛び込んで来た「蝙蝠」の試練獣に一撃を食らいそうになっていた。ソレを俺が思わずウォーターガンで撃ち落としてしまった。

 俺は小声で魔法名を口にしたのでワンチャンもしかすると俺が助けたとは思われないかも?と一瞬考えたのだが。


「くッ!?・・・貴様、まだ名を聞いていなかったな?この後で教えろ。覚えておいてやる。」


 俺はとうとう本気で殿下に目を付けられてしまった。どうやら俺が危ないと口にしたのをちゃんと聞こえていたらしい。それでその「蝙蝠」を撃ち落としたのが俺しかタイミング的にも居ないと判断した模様。

 アリーエの魔法はどうにも詠唱をするタイプの魔法なので殿下の危機には完全に間に合わなかったのだ。


 そこでそうなると殿下を助けたのは誰かと言うのを消去法を使っていくと俺しか残らなかったのだと思う。


(名前教えなきゃダメか?・・・ダメなパターンかぁー。これって俺、王子様にライバル扱いされるフラグ?勘弁してくれねーかなぁー?)


 もしかしたら別の展開になる可能性もあるが、俺はその場合はライバル視される以外でそれ以上に面倒そうな展開は何かと考えるのだった。


 その後も地道な九階層の攻略は進む。と言うか、ぶっちゃけ俺たちは何度もここを行ったり来たりしていたので今更感デカい。

 しかし殿下たちに合わせているのでもうとっくに俺たちが十五階層まで行っちゃってる事は秘密にしておかねばならない事態だ。ぶっちゃけ、面倒臭い。

 とは言っても今の流されに流されている状況は如何ともし難い。俺はなるべくなら目立ちたくは無いし、殿下にこれ以上俺は目を付けられたくはない。


 しかしそんな俺の思いなどは関係無く殿下の要求はされた。


「タクマとやら。お前も戦闘に参加しろ。交代で休息を誰かに取らせる。そうやって人員を回して行くぞ。消耗を抑えていかねばこの先は苦しいモノとなっていく、確実にだ。お前にも協力して貰う。これは命令だ。」


 今この場で俺が「だが断る」と言ってしまうのは駄目な場面なのだろう。

 俺は別にこの殿下の命令とやらに従う義理も責務も無いと思っている。

 しかし今以上に殿下から敵視されるのは御免被るのだ。ならば少しでも被害を少なくできる様にと考えて立ち回るしかない。


 こうして俺は次の戦闘に参加する事になった。取り合えず、魔法は使わない。剣で戦う事にする。

 傍から見ていた感じ、俺の敵になりそうな試練獣はいない印象だった。なので適当に剣を振っていれば多分無難にやり過ごせると判断している。


「とは言ってもなぁ?何で王子様?俺の横に居るの?え?後方に下がっていて貰え無いすか?・・・邪魔なんですけど?」


「貴様、我に対してその様な口の利き方、無礼千万だな・・・しかし今は見逃してやらん事も無い。その代わり、貴様の強さが使い物にならぬと判断すればこの場で我自らがその首叩き斬ってくれようぞ?」


「・・・はぁ~。ハイハイ、ワカリマシタヨ。やりますやります。頑張りますよ。」


 完全に殿下、俺を目の敵にしている。勘弁願いたい。試練場を出たら俺はもう二度と殿下と関わる事の無い様になりたいな、と心底思った。


(さて、どうしたもんか・・・一気に踏み込んで即座に試練獣を片づけるか?それとも、バルツが抑え込んだ奴だけ片づけていくか?)


 俺の力を見せない様にしていくのなら後者の選択肢だ。しかしまだまだ連携がおぼつかないこのメンバーじゃ俺がさっさと見つけた瞬間に踏み込んで試練獣を斬り捨ててしまった方が安全であり、早い。


「まあ突進してくるやつばっかりだし、カウンター入れて片づけれそうだから「待ち」で行くか。」


 俺は通路の先頭を進んでいる。その横に殿下だ。いや、危ないし邪魔だから後ろに下がっていて欲しいのだが、近い位置にずっと付いて来ている。

 この距離だと横薙ぎで試練獣を仕留める事が出来ない。そんな距離にくっついて来ているのでハッキリ「うぜえ」と口に出したい気分。

 横に剣を抜き放つと同時に試練獣を二体まとめて斬ると言った事がこの分だとでき無い。本当に、殿下、邪魔。巻き込んだろか?と思ってしまう。寧ろ事故を装って片づけてやろうか?などと邪な思考が頭の中を過ぎりそうになっている。


「・・・はぁ~。御出でなすった。ひのふのみのよ?ざっと二十ぅぅぅ~?いきなり俺が出る事になってからこの数は無くね?アリーエ、魔法お願いしても?」


「・・・御免なさいタクマ。殿下は貴方の力量を見るからって言って先程私に先制の魔法は放つなと命令をしてきたの。貴方の力ならあの数も大丈夫でしょ?」


「オイこら無茶ぶりしてんなや、このクソ王子!てめえどう言う了見だごらぁ!」


 俺の横に居たはずなのにいつの間にか後方に下がっている王子。俺を次の戦闘で使い潰そうと思っていた様子。ふざけるなと叫ぶのは当然だろう。


「だから言ったであろう?貴様が我の文句を封殺する程の実力を持つのなら、その無礼を許してやろうと。・・・だが、まあ、この数は無いな。全員戦闘態勢に入れ!魔法の準備だ!この数は流石にそ奴一人でどうこうできる数では無いだろう。」


 場面と言うモノを分かっている。この殿下、ふざけている場合の数では無いとちゃんと理解できている様だ。

 だからこそ余計に何だか腹が立つ。何処までも謙虚でいろ、とは言わない。傲慢でいろとも言わない。

 しかしやって良い事とダメな事の限度ってのがあるだろう。嫉妬で俺を試そうとするのに試練場の中でそれをやろうとするのは流石に度が過ぎる。

 ここは俺にはヌルイ難易度だが、見た感じ殿下にとっては難度は高いハズ。試練獣の出て来る頻度とその数に押されてかなりの疲弊をしていたのだから。

 命の掛かった場面で好いた女に良いトコ見せようとするその根性も笑えない。そのライバル視している存在にはエゲツナイ事を要求して無茶を敷くとは。しかも王族の命令と言う形で。


「死ねよマジで。もう良いよ。俺が片づけるから。ウォーターガン。」


 正面から迫る団体を俺はハチの巣にしていく。次々に光と変わって消えて魔石となっていく試練獣たち。

 剣を使って俺の実力を何とか誤魔化せる範囲に納めようと思っていた俺だが、流石に面倒になって来てしまった。


「物語の主人公が堪忍袋の緒が切れた時ってこういう気分なのかなぁ・・・」


 やってしまった事はしょうがない。俺の気持ちは落ち込んではいるが、すっきりもしている。

 何時までも隠し通そうとする事は常時ストレスの元になる。それが今解放されたと思えばすっきりしない訳が無い。

 しかしこの後の展開を思うとドンヨリと重い物が頭の上に乗っかっている様な気分にさせられた。

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