★★★この先の事は雑に決めていく★★★
衛生面、お風呂問題は解決の目途が立つ。このマジック小袋にたっぷりの水樽を確保。
湯舟もマジック小袋に入れてしまえばどんなに大きな物だろうと持ち運びは楽々。
そうすると湯の問題だが、コレはアリーエが水を簡単に沸かせる魔法があると言う事で、試練場内で風呂に入る事は可能だと言う結論に至った。
「でも今は出来ないじゃない?湯舟をどうするつもりなの?またタクマが地上に出て戻って来るって事かしら?」
アリーエがそう言って現状の問題を指摘してきた。これはやろうと思えば簡単にできる。
しかし何でもカンでも「今」にそこまで必死になって解決するべき事なのか?と言う訳だ。
アリーエ的にはもうここら辺で一度地上に戻って諸々の報告をしてしまうのが良いのでは無いかと思っている様子である。
「俺はまだここに居た方が良いと思うぜ。何せ殿下も教会騎士も今ここに潜っちまってる。そんな中で俺たちだけ戻ったらウザい貴族たちに何を今度は言われるか分かったモノじゃ無い。」
バリーダがそう言って一つ深呼吸をする。ここでポンスは選択肢を三つ出す。
「我々の今後の動きとしては、このまま地上に帰還。殿下の後を追って協力体制を取り付ける。教会騎士を追い抜いてこちらが先に十階層を攻略して見せる、ですかねぇ?」
別に嫌味騎士に「ザマア」をしてやろうと言うのは出来る機会があればやる、くらいのつもりだと聞いていたのだが、ポンスはどうやらそこら辺は根に持っていたみたいである。
「殿下と協力すると言う点は遠慮させてもらいたい所だね私は。」
マリがちょっと嫌そうに選択肢の一つを否定する。まあこのマリの意見はしょうがないだろう。何せ殿下はマリに御執心。粘着していると言うから。
ここでバルツがもう一つの選択肢を消す。
「地上に帰還は勿体無い。この機会を最大限に使い切るべきだ。」
地上への帰還も選ぶのは無しだと。そうすると嫌味騎士にギャフンと言わせると言ったモノしか残らなくなってしまうのだが。
コレをジェーウはソレも無いと否定する。
「私は無用に教会騎士と揉め事を起す気は無い。まあ言い合うくらい迄は許容範囲だが。と言うか、私たちの今回の件をもう一度お前ら思い出せ。事ある事に何かしらタクマが私たちの頭をぶん殴る様な衝撃的な事案を見せつけて来ているから、ちょっと忘れがちだぞ?私たちはマリエンス嬢の護衛だ。そして侯爵様からはその点について期限を設けられていない。マリエンス嬢が満足するまで私たちはコレに付き合う事になっている。幾らマリエンス嬢が私たち騎士の指示に従うと言う話にはなってはいるが、コレは半ば建前と言った意味も含まれているんだぞ?恐らくは侯爵様の狙いは教会騎士への牽制だ。多分殿下がこうして勇んで試練場に突撃するだろう事もきっと読まれている。私たちが選べる今後の方針はそこまで自由度は無い。だが、どんな事であろうと試練場内に居るからには縛りは無いんだ。そこは気を楽に持とう。で、タクマ、今後の事、どう動く?」
「え?そこで俺に振るの?うーん?まあどうすっかなー?じゃあもうそろそろ八階層の地図作りに行ってみるか?流石にもう良い感じに時間は過ぎてるし、あの嫌味騎士も九階層に辿り着いたんじゃねーかと思うんだけど?ソレを作り終えたら一度地上に戻るっていうのは?」
ここでジェーウが沈黙する。そして「しょうがないか」と決断を下した。
「タクマの意見でいこう。私たちは既に十五階層にまで到達しているし、その通って来た道順も荒いとはいえ記録は取ってある。十階層の主の事は、全く情報を掴めてはいないんだが。それは横に置いておいて。それらの成果を直接私たちの功績として国王陛下へと献上できれば良いのだが。そこら辺の事は侯爵様に頼んでみよう。戻ってこの件を騎士団に報告を上げると言う事は避ける。まあ、悪く言えば隠す。隠蔽だな。」
ジェーウはどうやら思い切った事を決断した様だ。にやりと笑うそのジェーウの顔は覚悟の決まったモノとなっている。
こうして一応の区切りは付けてその後にまた何かあればその場その場で対処すると言う事になった。まあ言うなれば行き当たりばったりである。
ハプニングがあればまたその都度考えるしかないと言った感じだ。
最初っからそもそもがこの試練場に潜るうえで方針といった事を決めてはいなかったのだから今更何だと言った感じで。
ついでに言うとここ試練場内では何が起きても不思議では無いと言う事で。そんな場所で教会騎士も居て、ソレを追う殿下率いる騎士団もここには存在する。
俺たちがそこに混ざっても良い事は起こりそうも無い。触らぬ神に祟り無しである。君子危うきに近寄らず。
八階層にこの二つの騎士たちが居ない事を祈るばかりだ。
こうして俺たちはこの魔法陣部屋で大休憩をまた一度取る事にした。食事に睡眠である。
この部屋は入り口は一つでそれさえ塞いでしまえば誰も入って来れない。なのでバリケードを作れれば安心して寝る事が出来そうだなと思ったのだが。
そこら辺は適当な材料が無かったので今回は諦める事にして見張りを立ててローテーションを組んでまた仮眠を取る事に。
全員が休息を取り終えて再び俺たちは動き出す。目指すのは八階層。次に潜る際にはもうちょっと計画をしっかりと立ててからにするのが良いだろう。
とは言っても騎士の皆は今度は何時に試練場に入れるかは分からない。のっぴきならない状況になって仕方が無くと言った感じで地上へと帰還したいと言った気持ちはある。
なるべくなら騎士の皆に今回の一件の功績をしっかりと抱えさせて帰りたい所なのだ。
地味に地図作ってました、などと言った功績ではきっと圧力を掛けて来ていると言う貴族たちが嫌味を言ってくるに違いないから。
他の点で文句の付けようの無い功績を積ませたいものである。
十階層のボスを倒して十五階層にまで到達した事は公にするのは控えておく方が良いだろう。
これに関しては横から他人が何かと口を挟んでくるに決まっているからヤヤコシイ事態にきっとなるはず。
それこそ炎熱完全耐性のマントの方も秘密にしておいた方が良いくらいだろうか。
と言うか、俺の持つマジック小袋の件に関しては絶対に秘しておいて欲しい話題だ。
ここら辺の報告の塩梅の件には俺は口出ししたり、脅したり、口止めと言った事を言う気は無いので、どうするかは騎士団とマリの判断に任せるつもりである。
マリの方で言えば侯爵様には話は絶対にする事になってしまうだろうからソコは諦めてはいる。
と言うか、俺はマントの方を侯爵様にほぼ全部渡してしまってある。アレをどうするかは侯爵様次第なので、俺がここでドウのコウのと考えても意味が無い。
さて、八階層までの道のりはもう既に記録はしてあるので寄り道などせずに直行である。
到着後は入ってすぐの広場で俺たちは周囲に誰も居ないかを確認した。
「・・・よし、罠無し、教会騎士の気配も無さそうだ。殿下率いる騎士団も、どうやら近くには居ない。と言うか、流石に相当時間が経っているから居たとしても八階層の奥地か?」
ジェーウはそう言って軽く息を吐く。しかし緊張感は保ったまま。
「じゃあ地図作りは先ずどちらから行く?」
俺はそんな事を軽く聞いた。八階層はいきなり入ってすぐ正面、右、左、の三方に分かれ道である。
そして九階層へと繋がっているのは右方向だ。既に俺たちはこの階層の道順はざっくりと把握できているのである。
「まだ真ん中は行って無かったか?だったら真っすぐ正面で良いんじゃねーか?」
バリーダがそんな意見を述べる。確かにまだ正面は行った事が無い。なのでそれで良いかとボンヤリ決定しそうな空気になった所でアリーエは呟いた。
「ねえ?まだどっちのもこの八階層を彷徨っている、って可能性は?」
これには全員で「ああ、なるほど」と頷いた。
そもそもが俺たちはかなりすんなりと九階層に到着出来ていたりする。一応は事前に入手してあった道順の情報を頼りに通路を辿ったから。
しかしこれに何の情報も無しで進んだ他の騎士団になったらどうだろうか?
迷路の様に多くの分かれ道があるこの八階層である。事前準備を殿下の騎士団はしているのか?
教会騎士は九階層攻略と言っていたから当然八階層の道順は下調べした上で試練場に入ってきただろうから既に時間的に考えて見ても今は既に九階層に到着しているはず。
でも、もし何かしらのトラブルなどに遭って進捗が芳しく無い、などと言った状況になっていたら?
俺たちが今の時点でそんな教会騎士たちに遭遇してしまえば、また無駄な時間を使わねばならなくなりそうである。
殿下の騎士団の方も問題だ。ちゃんと下調べと必要な情報を得ている上での試練場への挑戦ならば、今頃は教会騎士に追い付いているはずで。
でもあの殿下の勢い、せっかち様である。マリを見た時のアッパラパー具合も加味すると、もしかしたらこの八階層を彷徨っている可能性すら出て来る。
教会騎士の情報を掴んで緊急でと言った感じでこの試練場にやって来た殿下である。迷子の可能性が拭い切れない。
「うん、侯爵様が今回付けてくれた皆はちゃんと色々と事前準備しっかりしてきてくれてたんだよな。有難いわー。ホント、感謝だなー。」
「そうだね。今回はタクマの監視も込めての事だったと思うけど。それにしてもちゃんと試練場内の今出回っている地図だけじゃ無くて五階層以降の情報もこれだけしっかりと準備してくれていたのは有り難かったね。ありがとう。」
マリは俺の意見にウンウンと頷いた。そして感謝の言葉も口にする。これにジェーウが苦笑い。
「本当はここまでの準備は必要は無いと考えていたんですがね。マリエンス嬢の護衛と言う立場だったので。まさか八階層を超えて九階層、ましてや十階層の主まで倒して、その後は信じられ無い事に十五階層まで行く事になる何てその時は想定などしていませんでしたから。と言うか、そんなのを想定しておくなんて誰にだって無理です。せいぜい四階層まで行って引き返す位と考えていましたよ当初は。そこに試練場内の地図、道順の情報を最新の物で揃えなければならないと言ったのはバルツなんですよ。」
これにバルツは静かに淡々と言う。
「どんな最悪な事にも対応できる様にしておくのが護衛の役目だ。」
バルツだけが護衛とは何かをしっかりと受け止めていたと言う事なんだろう。
そもそもこの騎士団は試練場を攻略する為の目的で発足した物であるからして、護衛と言う点において運用される事は考えられていなかったはずで。
「そうであったとしてもタクマがこんな規格外だとはバルツも思いもしていなかっただろう?」
ここでジェーウはバルツに突っ込みを入れた。これにバルツは「うむ」とだけ唸る。
「っておい!そこ、俺を規格外呼ばわりは幾ら何でもヒドクね?」
俺は抗議の声を上げたのだが、これにマリが。
「タクマ、説得力が無いよ?」
この「バッサリ」に、俺はここまでを振り返ってこれ以上言葉を言えず黙るしか無かった。




