★★★おい俺、落ち着けよ・・・ああ、もう遅かったか★★★
王子様の件は横に置いておいて俺たちは実験をしてみる事に。
とは言えソレをやるのは俺だけで、マリも騎士団の面々もここで待機である。
話し合った内容をざっくりと纏めると、先ず前準備として。
1・鍵とみられるこの四角の棒の穴に魔石を全て嵌め込む。
2・ソレを魔法陣の起動スイッチとみられる穴に差し込んでみる。
である。ソレで上手く魔法陣が動いたらそこに俺が突入と言った流れだ。単純である。
それで俺が試練場の外に出られた際にはもう一度この魔法陣の場所まで一人でダッシュで戻って来て報告。
俺がもし戻って来なかったら残った全員は試練場から脱出をすると言った感じだ。
一応は待機するのは時間制限としてザックリと感覚で一時間位を目安として考えて行動開始としてある。
「よし、それじゃあ入れてみるけど、部屋から全員出てるか?なら部屋の中を誰か観察しておくのは誰に、ああ、バリーダが?それじゃあ行くぞ?」
バリーダが部屋の中で何が起こるのかを終始その目にしてどの様な状況になるのかを監視する役目をする様だ。
俺は魔石をはめ込んだ例の物をあの見つけた四角い穴へと刺し込んでみる。すると。
「ふはッ!すげえ!気持ちが良いくらいにぴったりだし!しかもスーっと入ってくぞ!?うはッ!」
「お前、変な所で興奮するのな・・・キモいぞ?」
ドン引きしているバリーダの声が俺の耳に入って来たが、それを俺は無視する。
そしてぴったりと穴の奥まで入ったその「キー」は一瞬だけ青く光るとその次には魔法陣が輝き始める。
「おほッ!オラわくわくして来たぞぉ!いっちょやってみっか!よーし!飛び込むぞ!」
俺は勢い良くその魔法陣へと踏み込んで行く。これで通り抜けられずに壁にぶつかったらトンだコントだなとか思いながら。
しかしそうはならなかった。俺の身体は何の抵抗も無く魔法陣を通り抜ける。
そして通り抜けた先は。
「・・・ここ、試練場の入り口の横だな。ほほう?やっぱり帰還の魔法陣なんだな。・・・あら?」
そこで俺は違和感に気付く。何の違和感か?ソレは手の中にある握っていた覚えの無い、あの「キー」が手の中にあったから。
あの「鍵穴」に刺したコレが俺の手の中に戻って来たと言う事なのだろうか?
ソレを俺はまじまじと観察してみるとどうにも全く同じ物であると言った結論が出る。
「・・・使い捨てとか、一度使ったら再度ゲットしないといけないとかじゃ無いんだな。随分と親切な仕様だぜ。」
この「キー」が俺の手元にあると言うのであれば、あの刺し込んだ「キー」はどうなったと言うのだろうか?
そこら辺があの部屋ではどう言った事になっているのかをしっかりと確かめねばならない。
なので俺がコレからする事は試練場タイムアタックである。
「よっしゃ!レディー・・・ゴー!」
道順は覚えている。俺のこの異常スペックなドラドラクエスト主人公の肉体なら本気を出せば一時間も掛からない。
周囲からの挑戦者たちの視線も気にせずに俺は試練場内を走る。ダッシュダッシュ、Bダッシュである。まるで一切止まらないRTAのマ◯オである。
行く手を遮る試練獣が現れればスピードを落とさずにそのまま剣を抜いて斬り捨てて魔石は回収しない。
距離がある試練獣に対しては先読みして進路を塞いで来ないと判断したら無視してそのまま。邪魔だなと思ったら魔法、ウォーターガンで先行して片づけておくなど。
とにかくちょっと俺はこの時テンションがおかしくなっていた。
まあ普通に考えてオタク気質のファンタジー好きが魔法陣で、転移で、などと言った体験をしたのだから多少の興奮は許して欲しい範囲だ。
だけども俺の今のこの場合だとちょっと許される範囲を超えるスペックの肉体だと言うのを忘れていた。
多少の興奮と言ってもこんな超ハイスペックの肉体でそのまま羽目を外してちょっとヒャッハー!し、その勢いで事故を起こした場合は目も当てられ無い有様になりかねない。
今俺に必要なのは冷静さだったのだが、その冷静さは転移魔法陣を体験した事に因って吹き飛んでソレが戻ってくるまでに時間が相当掛かる状態に陥っている。
だからやらかした。
進路を塞ぐ、試練獣。そしてソレに苦戦している挑戦者五名。
試練獣の数は十五を超えている。そう、ここはあの嫌味騎士と会った所とは別の場所なのだが。
所謂モンスターハウス?まあそんな大げさな名前を付ける程の数の試練獣が出て来ているとは言えない部屋であるが。
「おおおおおう!邪魔だジャマだ邪魔だじゃまああああああだああああ!」
俺はそこに乱入して一気に試練獣を全て片付けた。そしてその勢いを殺さずに先に進む。
そんな出来事が目の前で起きて、そして置き去りにされた挑戦者たちはきっとポカンとした顔でこれを見送ったんだろうな、後から考えればそんな感想が出て来る場面である。
この事は頭の隅に追いやって魔法陣部屋へのタイムアタックに夢中になっている俺である。もう既にテンションがおかしくなっていた。
そんな状態を冷静に見ているもう一人の俺が脳内に現れ始めた所で魔法陣部屋に到着である。既に全ては終わった事になってから冷静になっても取り返しが付かないのだが。
その事をなるべく思い浮かべ無い様に皆に声を掛けた。
「おっす!ただいま!この魔法陣やっぱ帰還の効果だったよ!どこでもド◯とか初体験!やべえ!」
取り合えずこの魔法陣は別に何処でも扉なんかでは無いのだが、しかし俺にはこの初めての感覚はそう称するのが近いのだ。
俺のこの帰って来ての第一声にマリ以外が全員ドン引きしていた。騎士五名は全員「一体何を言っているんだ?」と言った疑問と共に「帰ってくるのが早過ぎる・・・」と溢している。
「タクマ!お帰り!で、どうだったんだい?こちらの話の前にどう言った場所に出たのかを教えてくれないかい?」
マリだけが今回の魔法陣の話を進めようとして言う。既にこの程度の俺の行動には慣れて呆気に取られるような事はしない様になって欲しい所である騎士の皆さまには。
そうして俺はマリの質問にワープして何処に出たのかを説明する。その時に俺の手の中に「キー」が何故か握られていた事も説明した。
するとここでマリが「答え」をくれた。
「そうなんだよ!タクマが魔法陣を潜って暫くはずっと魔法陣は光っていたんだ。その時間も記録してある。そうして光が治まった後はその「鍵」がスーッと!穴の奥はそれ以上無かったはずなのに吸い込まれて行ってね。消えてしまったんだ。その「鍵」も一緒に魔法陣に吸い込まれてタクマの手の中に戻ったと言えるかも。」
「ほーん?それじゃあもしかして魔石の嵌める数によっては光っている時間が減少するのかもな。魔石を半分にしてもう一回潜ってみるわ。そんじゃ行ってくる。」
実証実験だ。俺はもう一度「キー」に魔石を詰めていく。その数は最初に実験に入れた数の半分。
これでもし魔法陣が光る時間が半減したら予想は合っていたと言う事である。そしてソレはどうやらその通りだった様で。
またワープで地上に戻ってこの部屋に戻って来るまでの俺の行動は割愛させて貰う。
まあタイムアタックは2度目の方が早く到着できたと言う事だけここでは述べる。
「タクマの予想通りだったよ!半分の時間で魔法陣の光は消えちゃった!これは大発見だね!」
「あー、そうだな。この五階層の魔法陣の部屋からはどうやら地上への一方通行だな。それとこの「キー」は何度も繰り返し使えるみたいだし?次は全員で魔法陣を通って外に出てみないか?」
俺のこの次の実験提案に渋い顔をする騎士の面々。マリだけがキラキラした目でワクワクな態度を隠そうともしない。
「まだ実験は続けた方が良い。」
「そうね。複数人が同時に通った場合って言うのはもうちょっと慎重に検証したい所だわ。」
「俺たちがソレを最後の最後まで、全ての可能性を確かめて見なきゃいけない訳じゃ無い。もうこれは報告して国主導でやって貰った方が良い事じゃねーのか?」
「私たちはこの試練場を一度でも、どんな理由であろうが出てしまうと、また許可を貰えるのに何時になるかは分かりません。検証は大事ですが、それと比べるとどちらが、と考えますと、ねぇ?」
四人は否定。ジェーウもここで追加する。
「この事は我々の功績としては最大級となるのは決定事項だな。しかし・・・タクマがその中心、と言うか、全部タクマが居なければ有り得なかった話だし、複雑な立場だな、私たちの方はと言えば。それにこの報告をするとなれば国からタクマへその「鍵」を渡す様に要請が為されるはずだ。そうなればタクマ、ソレを手放す気はあるか?挑戦者はこの試練場で得た物に関して誰の干渉も受けないと言う約束がある。しかし国はソレを無視して権力を使って半ば無理やりにでも奪うと言った手法をとる事もあるんだ。まあそこはちゃんと金を積むと言う方法を使うんだが。金でそれを売る気はタクマに在るか?」
「ふーん?なあ?俺はそもそもその「挑戦者」じゃ無いんだがな?この試練場に入れているのは侯爵様の発行したこの許可証のおかげだ。この場合俺はどんな風に国は対処してくると考える?」
俺のこの言葉に「あー、そうだった」と溢す騎士の面々。どうやらそこら辺の事を失念していた様だ。いきなり俺が冷静に今の自身の状況を分析したものだからちょっと皆引いている。
「ついでに言うと俺はこの国の民でも無くてな。税金も納めて無いし、国の世話になった覚えも無い。だから金を積んで向こうが権力を傘に着て脅す様にして迫って来たとしても、俺は売らんと思うぞ?」
幾ら五階層と言う低い階層での帰還魔法陣とは言え、今のコレの価値は計り知れ無い物と言える。
ソレを脅されて買い叩かれる様な事は真っ平御免だ。俺が欲しい物は金じゃ無い、今は。
ソレにこの「キー」がこの試練場の他の階層で共通に使える物だった場合、もしかしたらもっと下の階層に魔法陣が同じ様に在った場合の利用価値が跳ね上がる。そうなったら計り知れない、と言った表現では収まり切らない価値が出る。
ソレが判明していない今の時点でコレを手放すのは阿呆のやる事であろう。
俺の目的は試練場の攻略。ならば金を幾ら積まれてもこの「キー」を売ると言う選択肢は絶対に有り得ない。
「うーん?でもタクマ、ごめん。もうそろそろお風呂に入りたいんだよねぇ。やっぱり試練場内で籠りっきりって言うのは流石に衛生面が気になるよ。」
「ん?ソレってこのマジック小袋で解決できるんじゃね?あ、ちょっとアリーエさん、ここで魔法の講義をお願いしても?」
「・・・はい?」
「熱湯を出す、もしくは水を湯に変えるって言った魔法は使えます?その場合はどれくらいが限度量ですか?まあ風呂に浸かるって言っても別に浅めの湯舟にすれば水量はそこそこ減らせるし、行けんじゃね?あー、そんな事言ってたら俺も風呂に入りたくなって来たわー。温泉行きたいわー。何も考えずに湯に浸かって何もかも忘れてーなー・・・」
俺の言った言葉にアリーエの顔が引き攣った。




