★★★相手から「証拠を見せてみろ」と言ってきた場合★★★
「ああ、ソレは報告例が二回ある。擬態虫と言う試練獣だな。迂闊に全員で箱側に居て挑戦者たちがその突然の奇襲で壊滅に、生き残りが這う這うの体で逃げて、と言った事が一回目。二回目は警戒していた挑戦者が油断無く開けて奇襲を回避、その後戦闘。負傷者は出したモノの討伐に成功。その後は出て来た金銀財宝を得て試練場を脱出、だったな。・・・出て来ないな?」
ジェーウが俺の説明を聞いて先程の気持ちの悪いヤツの事を教えてくれた。
しかし倒した後に出て来るはずの何かしらが無い事に気付いた。二回目の例でいくなら金銀財宝がここで出て来ても良い様なモノだが。
一回目はどうやら挑戦者たちはやられてしまっている様だが、二回目は倒す事が出来てその後のドロップで大金を得たと言う事である。
しかし今、俺が倒したその擬態虫、俺の中ではミミック呼びするが、その後には何も出て来ない。あの小さな小石、魔石すら出て来ない。
だがその後ちょっと待つとこの部屋の壁にある物が浮かんで来た。
ソレは探そうとしても見つからなかった例のアレ。そう、魔法陣だ。
「床に浮かんで来るんじゃなくて壁?そのまま通って行けって事?え、珍しくね?」
てっきり魔法陣は床、と言った固定観念が俺の中にあった。でも考えてみれば確かに魔法陣なんて何処にどう描かれていても良い物だ。
ラノベ作品によっては空中に魔力で描かれたり、はたまた大規模魔法陣が天空遥か高みに現れたり、宝石の中に刻まれていたりと。
幾らでもある空想の世界には様々に魔法陣と言うのは描かれ、刻まれていたりする。
「・・・で、触ってみても反応しないんだが?え?ナニコレ?地上にワープ、繋がってたりするんじゃないのかよ・・・あれ?」
ペタペタと壁を触って何かしらの発動スイッチが無いかを探す俺。
しかしそんな俺の行動に協力してくれない面々。何故だと思って振り返ってみると。
「迂闊な危険行動だ。」
「ねえ?何で突然現れたソレに恐怖心も何も無さそうに触れるの?」
「お前、やっぱどっかしら壊れてんよ、マジで。慎重さってのを母ちゃんの腹の中に置いて来たんか?」
「いけませんねぇ・・・突然ソレが発動して私たちまで巻き込まれて危険に晒されたり、などと言う事を想像して欲しい所ですねぇ。」
「タクマ、もう少し、その、行動する前に私たちと話し合いをしてからにして欲しいのだが?」
騎士の面々は俺に対してそう非難を飛ばして来た。まあ確かに俺のこの行動は余りにも軽薄で危険予知をしていなかった。反省するべき点だ。今は団体行動中である。
俺の不注意の行動で全員を危険に晒す事になりかねない事は控えるべき所である。しかしここでマリは。
「あはははは!タクマはドキドキさせてくれるよねいつも!一緒に居て凄く刺激的だよ!」
と呑気に、そして楽しそうに、嬉しそうに、喜んでいた。コレにドン引きした視線を送る騎士の面々。
「取り合えずこれの「操作盤」みたいなのが無いと起動できないのか、はたまた他の何か条件があったりするのかが分らんなぁ。何処かに別の何かが無いか探してくれないか一緒に。」
俺の求めで皆がこの部屋の隅々まで目を凝らし始める。するとマリが何かを見つけた。
「ねえ!ここに小さな人工的な窪みがあるんだけど。これじゃないかな?」
そう言うので全員の目がそのマリの指さす部分に向く。そこには確かにきっちっりと四角い穴があった。
だがソレをどうしたら良いのかの説明などは何処にもあったりはしない。それが何のためにあるのか謎なのだ。
と言う訳で。そういう時には俺が生贄になるのである。部屋から俺以外が全員出ていく。安全確保の為である。そもそもこの魔法陣がどんな効果を発揮するのかすらも今の時点で判明していないのだ。
しかし調べて見なくちゃそこら辺の事も分からないまま。だから皆は危険と承知でも捜索はしてくれたのである。
そして俺は準備が出来た所でその穴の奥を覗く。ちょうどその四角穴は俺の腰辺りの高さにあったので屈む。
「奥行きは大体人差し指程度?何かキーを刺し込むのか?それとも燃料を入れる穴?生態認証機能?」
何の警戒も無しにその穴に人差し指を突っ込んでみたが、何も起きない。魔石を近づけて見ても反応無し。
こうなるとここに刺し込む為の「鍵」を使えばこの魔法陣が起動するのだろうと言った予想が立つ。
「いやー、いいねぇ。こういうギミック、好きだなぁ。おーい、皆、ちょっと俺の予想を聞いてくれ。」
そこで俺はこの穴が何かしらの鍵穴だと言う予想を述べた。それがあればこの魔法陣は起動するのではないかと。
そしてこの魔法陣が一体何の魔法陣なのかは分からないが、紋様?書かれている魔法陣の「写し」を今取っておいた方が良いだろうとの思い付きを伝える。
この小部屋の事を国へと報告する時には魔法陣があった事も付け加えて、そしてそれの写しを提出すれば評価はかなり上がるだろうと。
ついでに後出して「セットで地図が付いて来ます」などと付け加えれば煩い貴族たちの文句を潰せるのでは?と。
「まあ今以上の警戒と妨害と圧力が貴族たちからその後に増やされるかもしれないって危険はあるけどな。でもこれらの報告を秘密裏に直接王様に出来たらそこら辺の部分は大きく跳ね除けられそうじゃ無いか?」
騎士団が直接に王様と謁見、しかも煩い貴族たちが人っ子一人いないシチュエーション。ソレはかなりハードルは高い物だと思う。
けれども今の状況を脱したいとこの面々が本気で思っているならこのチャレンジはしてみる価値はあるはずだ。
そしてソレはどうやら響いたらしい。ジェーウの表情が難しい物に変わっている。
随分とこれまで長い雌伏の時を過ごして来たのだろう。ジェーウだけでなく他のメンバー全員も同じ顔に変わっていた。
どうやら真剣に考えている様子。どうしたらそんな事ができそうか?と。
「とまあ、それは今は後にして。六階層の地図作りしようぜ。鍵が必要かもね、って、あくまでも予想だからな。それを探さなきゃいけないだろ?だけどそんなの地図作りしながらで良いんだ。取り合えず手っ取り早く十五階層までの地図作りを直近の目標にして動こう今は。」
こうして俺たちは未練もあるがこの魔法陣のある部屋を後にして六階層へ行く。
その後は順調に難関などにも直面せずサクサクと地図作りは進んだ。途中でポンスに待ったを掛けられる程に。
「ペースが早過ぎてちょっと確認の時間を頂けませんかねぇ?タクマ君、もうちょっとこちらの事を考えて頂けると有難いねぇ。」
異常と呼べるペース、多分そんな速度でこの試練場を歩き回っている状態だ俺たちは。
そんな常識を超えた状況でポンスは必死に地図を記録してくれていたのだ。そちらに少しは気を使うべきだった。
ソレを素直に俺が謝ってから「速度を落とすか?」と聞いたらポンスは「もう少しだけ落として貰えたら」とだけ返して来た。
なのでその後は俺も全員の体調や顔色などを窺いつつ試練場を進む事に。
そうして大休憩をもう一つ挟んだ所でお次は八階層の地図作りへと突入した。
しかしそこであの嫌味騎士と遭遇してしまう。絶妙なタイミングと言えば良いのだろうか?
「おや?未だにまだ潜っていたのですか?とっくに外に出てしまわれているかと思っていましたがね?おや?もしかして我々の後を追ってここまで?そんなに楽をして我らの功績を横取りしたいのですか?」
「いえいえ、ソレは誤解と言い掛かりと言うモノですよ?確実な証拠も無いのにその様な嫌疑をこちらに掛けて来るのは御勘弁願いたいのですが?幾ら教会騎士である貴方たちであろうとその様な無理筋を通そうとするのはこちらも看過できない所です。発言の取り下げを要求させて頂きます。」
ジェーウは言い返した。これに嫌味騎士は。
「我々が試練獣を倒し、貴方たちはその後を通ってくれば余計な戦闘をしないで済む。我々を露払いとして使っておきながらその様な言い方はこちらを舐めていると言わざるを得ませんな?貴方たちの何処に疲れと戦闘の跡があると言うのです?」
向こうはもう俺たちをそうやって決めつけて言う。どうやら消耗が見られない事を「証拠だ」と主張したいらしい。
「その様な真似をして私たちがあなた方の後ろをついて来たと言うのであれば、こんな中途半端な場所でこうして接触をしていると言う事自体がおかしな話になりますよ。あなた方の主張で言えばこのまま私たちがあなた方の後ろをついていけば九階層でになるはずでしょう?それを今八階層です。私たちは数え間違いをした覚えは無いのですがね?寧ろ、何故今まだ教会騎士ともあろう方たちがこんな場所でウロウロとしているのかが疑問ですよ。あ。我々にそうやって言い掛かりをつけて嵌める為ですか?どうやら教会騎士の矜持と言うモノはそれだけ安い代物であるようですな?」
ジェーウ、ここで盛大な反撃。これに負けじと言い返す嫌味騎士。
「慎重に事を運んでいたに過ぎない程度の事をその様に我らの矜持を馬鹿にする言い方に変えるとは、いやはや国の選んだ精鋭と言うのは口と思考の汚い輩ばかりなのですかな?いえ、我らの後を着いて来ると言う小狡い真似ができる方々に何を言っても無駄でありましたなぁ?あなた方が着いてなど来ていない、と言った物的証拠が無いのであれば何を言っても無駄でしょう。そんなモノを持っているとは思えませんからなぁ?」
「いえ、あるんですよ、ソレが。ふっ、ああ、それ以上は近づかないでください。そんなモノはでっち上げだとか、偽物だとか、或いは武力行使で奪われる、破壊される、などとされると面倒だ。こちらの見せる証拠を隠滅しようとそちらが動くのは敵対行動とみなして反撃をさせて頂く。もちろん殺傷も厭わないと御覚悟を。さて、ポンス、少し広げて見せてあげてくれ。ああ、遠目で申し訳無いがね、こちらは五階層、六階層、七階層の地図だ。私たちはこれらを作成しながらここまで下りて来ましてね。ああ、八階層を早く下りてくださらないとこちらの地図作りの邪魔ですのでさっさと行ってくださりませんか?もう九階層は目の前ですよ?攻略されるのでしょう?・・・ああ、慎重に事を運ぶのでしたね?その程度の腕前しか無い・・・いや、失礼。八階層程度で手古摺る教会騎士など居るはずがありませんからな。しかし慎重結構。うっかり怪我など以ての外。教会騎士の実力を疑われる事になってしまうのは避けねばなりませんか。しかし余り時間も掛けて頂きたくない物です。こちらとしましても何時までもダラダラやられていると迷惑ですのでね?ああ、余り焦らせたり圧力を掛けてしまうのは本来の実力を出せなくなってしまいますか。ならば私たちはこれから戻って地図を一階層からより詳しい物を四階層まで作りながらまた戻りましょう。そうすれば時間的にはとっくにそちらが九階層の攻略を済ませていますな?さて、御答えは?」
ジェーウは教会騎士が八階層でもたついている間にこっちは地図を三つ分完全に製作していると言ってやった。
しかも地図を作りながらだったのにこっちは戦闘の痕跡も残さずにスムーズにお前たちに追い付いたぞ、とも。
これには嫌味騎士プルプル震える。相手に嫌味を言って喜ぶ性格している癖に言い返されて馬鹿にされると怒るとは何とも浅い器の持ち主だ。呆れる。
しかしその怒りを抑え込める精神力は称賛するべき所なのだろう。しかしそれを隠せる忍耐力や演技力が無い所が滑稽だ。
(顔真っ赤なんだろうなぁ。そのまま脳の血管がプチッといって倒れちゃったりすると大変だよ?)
この世界の魔法で脳内血管破裂と言う症状を回復させられるのだろうか?
この嫌味騎士が倒れた場合ポンスはどの様な対処をするだろうか?
そんな下らない事を考えながら俺は嫌味騎士が何と言い返して来るのかを観察した。




