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★★★便利は何事をも大きく変えてしまう★★★

 で、早速待っていた皆と合流して再び下層へとひたすらに下りる。

 別段待っていた時間も試練場では特に妙な事も起きずにいたと言う事なので俺が来た際には直ぐに出発と言った感じだった。


「で、今あの嫌味騎士はどうなってるかは知っていたりする?」


「順調に下層に下りている頃じゃ無いか?とは言え、多分追い付くだろうな、この速度で行くと。と言うか、嫌味騎士って・・・」


 俺の質問に答えてくれたのはバリーダである。呆れた感じでそう言われたのはやはり俺の進行速度が異常だと受け取っての事だろう。

 何せ足を止める何て事は無い。早歩きの速度である。出て来る試練獣はやはり魔法で一撃。このペースで行くと前回の記録を更新しそうな勢いだ。


「じゃあこのままあいつ等に追い付いちゃおうか。それとも地図を全埋めする?」


「測量などができる者がウチの隊には居ませんからねぇ。正確な物を作る事は出来ないと思いますが?」


 ポンスが俺のマップ制覇の案を却下する。しかしここでアリーエが。


「別に精密な物を書こうとしなくても分かれ道とか行き止まりなんかをちゃんと分かる様にしておくだけでも価値があるわよ?私は地図を取ってみるって言うのも良いと思うけれど?」


 これにマリは。


「タクマの好きな方で良いと思うよ。多分追い付いたらきっと「背後を付いて来ていた」って言われるだけだろうしね。」


 あの嫌味騎士の事だ。平気でそんな事を言うだろう。そしてこちらがどれだけソレを否定しても証拠が無いと言ってくるに違いない。

 まあその時にはお前らの言い掛かりにも証拠が無いだろうがと言ってやるが。

 下らない水掛け論になるくらいなら下手に接触しない方が良いと言う事である。


 これにジェーウが提案をしてきた。


「五階層はまだ全域を把握しきれていない。四階層までは完璧とは言えないまでも八割、九割は判明している。なら五階層からやってみないか?」


 階層を下りる階段までの道のりは地図で分ってはいるが、それ以外の部分は判明していない所の方が多い。五階層から下はどうやらそこまでの探索を進められていない様だ。

 と言うか、寧ろ挑戦者たちは日々の小銭稼ぎをするだけで本気で試練場を潜ると言った事は少ないらしい。

 なので稼ぎが安定していて安全の確保がしやすい四階層までにここの試練場は攻略が集中しているそうだ。

 俺には一階層も十階層も全くそこら辺の違いが判らなかったのだが。


 そう言う訳で俺たちはどうせならこの試練場での経験を最大限にする為にと言う事で地図作りをする事に決める。

 ここで皆の様子が嫌味騎士たちに「ザマア」や「ギャフン」をしてやるのはどうでも良いだろう、と言った感じになっている事に気が付いてその点を聞いてみた所。

 どうやら待ち時間の間に皆は頭が冷えたそうだ。なので嫌味騎士たちに対して何かしらの「やり返し」をするのは無理にしないでも機会があれば、と言った話で纏まったらしい。


 こうして俺たちは五階層の地図の作成準備から先ず始める。

 筆記用具と紙はポンスが持ち込んで来ていたのでソレを使って先ずキッチリとマス目を書いていった。

 藁半紙、と言った感じだろうか?紙の質は少々悪いのだが、ソレに苦戦しつつも完成した細かいマス目が基本となって距離感や分かれ道などを記録しやすくなったと思える。


 そこから基準計測である。五階層のスタート地点から六階層の階段までの道のりをざっくりとした歩幅で何歩で到着するのかを測った。

 日本全国を歩き回る様な距離でも無いし、出て来る試練獣は俺が速攻して消滅させるので仕事の速度は早い。

 あっという間にこれで基準計算は終わってポンスが記録係担当で地図の書き込みを開始だ。

 紙にびっしにり細かく付けられたマス目に少しずつ迷路の様な道が記入されて行き、その全貌が露わになって行く。


 その途中で小部屋などを発見し、そこに大きな箱が見つかったりもしたが、ソレをあえてスルーする。触らない、開けない。

 あくまでも今は地図作成を優先して後で取に来る事を忘れない様にその位置のメモも取ってある。


 そして結構な時間が掛かってようやっと五階層の地図が出来上がった。今時間がどうなっているのか感覚が曖昧になって来てしまっている。


「・・・暇だったな、俺ら、ひたすら。」


 ここでバリーダが遠い目をして疲れた様にそう言う。これに同意してしみじみとアリーエも言う。


「私たち一体何しにここに居るんだったかしら?忘れそうになったわ何度か。」


 俺はこれに「マリの護衛だよ」としっかりとツッコんでおいた。ここでポンスが休憩を取ろうと口にする。


「大分時間が経過しています。食事を摂りませんか?そうですねぇ、六階層の階段部分で休憩を入れたら箱を開けに行くのはどうでしょうか?」


 ジェーウはこれに「そうしよう」と賛成し、バルツも「うむ」と頷く。


「あの途中で見つけた小部屋にあった箱!楽しみだね!今度は何が出て来るんだろう?タクマの予想は?」


「いや、そこは先に罠を疑えよ?冷静になって考えたらお宝は空っぽで箱を開けた奴を殺す為だけの罠しか掛けられて無い場合ってのもあるかもしれんからな?まあドキドキするのは変わらんし、期待もしちゃうけどな。」


 只々殺す為だけのトラップ宝箱。これは殺意マシマシで恐ろしいと言える代物だ。

 だけど宝箱と言う開けずにはいられない物を目の前にして思い止まる事が出来る奴が居るだろうか?

 いや、いない!俺はそう断言できる。遊んでいたゲーム、それこそRPGにて、見つけた宝箱は取り合えず片っ端から何も考えずに開けるのが、礼儀と言うか、反射と言うか、サ・ガと言うか。

 そう、開けずにはいられないのだ。それはドリーム、それはロマン。


 その前に腹ごしらえだ。俺たちは階段部分に到着後に食事の準備を始める。

 そこでマジック小袋から出て来る諸々を見てポンスがはぁ~と大きく溜息を吐いた。


「これがあったら荷物持ちと言う存在が必要なくなりますなぁ。いや、実にこれは恐ろしい物です。・・・と言うか、新鮮な食材が多いですね?しかもこれは・・・」


 取り出された鍋やらポータブルコンロの様な物、それと大きい水の入った樽。これらを全員が目にして呆れていた。


「この袋の中にモノを入れると時間の経過が止まるらしいんだ。だからこんな新鮮な野菜が何時でも食べられるって寸法でな。ほら、コレ見てみ?」


 俺は凍らせた干し肉を取り出して見せた。本当なら氷が溶けていてもおかしくない時間が経過しているのにも関わらず、その表面は水滴すらついていない。

 しっかりとその氷を触れば体温で溶けて水と変わるので「魔法の氷だから溶けない」何て事は無い。


「じゃあ食事も塩辛い干し肉を噛み続けたり革の匂いが染みついた水を飲む必要が無いって事だね!凄い!しかもこれ、調理?あったかいスープが飲めるね!」


 マリがそんな事を口にするとアリーエとバリーダが「おぉ~」とハモッた。

 俺が出したこれらをポンスがテキパキと展開していって早速調理をし始めている。

 物凄くソレは手慣れた様子であっという間に鍋に水、コンロに火がついて、具材になる野菜は細かく刻まれ干し肉と共に鍋へと投入されて温められていく。


 そうして十分も煮込まれたその具沢山のスープが全員に行き渡る。

 俺は器を注文し忘れていたのだが、どうやらワレーナが気を利かせて揃えておいてくれた様でマジック小袋の中にそれらは揃っていた。


 俺たちは早速できたスープで食事を摂った。そしてその感想は。


「美味い。」

「あー、試練場でこんなあったかい物食べられるとは思ってもみなかったわ。」

「これ、ヤバいな。こんなの知ったらもう戻れねーぞ?」

「いやはや、私たちも欲しいですな、この小袋。」


 俺はそこで警告を発しておいた。


「なあ?もしかしてこの手の道具って世間じゃ出回って無いって事で良いんだよな?その反応だと。そうするとだ。もしこの情報が広まった場合、俺を殺してでもコレを奪おうとする奴らが出てくる、って事で良いか?」


 ここで沈黙が訪れる。このマジック小袋を甘く見ていた証拠だ、この沈黙は。

 だから追加でもっとヤバい展開を教えておいた。


「今は国同士が仲良しこよし、とまではいかないまでも争わずにいる時代なんだろ?だけど、この道具の存在が明るみに出れば、きっと戦争が起きるよな?だって、補給の、兵站線の概念が全くの別物に変わるだろ?コレがあれば。」


 沈黙は続く。そう、俺が今口にした可能性は全て「ラノベ」からのパターンである。

 いわゆる「ファンタジーもの」と言われる話には結構こういった展開が無い訳では無い。


「余りにも異常な光景を目にし続けていて冷静に考えれていなかった様だ。これは秘匿事項だな。余りにも危険過ぎる情報だ。これは私たちにも影響を及ぼす。」


 ジェーウが深刻にそう口を開く。と言うか、異常な光景って俺の事を指してるだろ!とツッコむのはここは控えておく。何せ今シリアスな話の流れだ。俺は空気を読める男。

 だけどここに一人空気クラッシャーが居た。マリだ。


「その点は気にしないでも良いんじゃないかな?だってタクマがコレを持っていて、誰かに奪われる、何て想像付かないよ?」


 俺が試練獣を片っ端から現れては即殺する光景でも思い出しているんだろうマリは。

 これに「それとコレとは話が全く別だろ」などと俺はここでツッコんでみたのだが。


「まだ今の段階では心配する必要はそこまで深刻じゃないと思うよ?私たちがコレを誰にも言わなければ良いだけ。そして露骨にその小袋から物を取り出したり、入れたりしている所を見られ無ければ良いと思うんだ。そして試練場だよ?ここには特定の者たちしか入っては来ないし、そもそも誰も到達してない階層に入れば他人に見られると言う心配は無くなるじゃない?そうなるとそこまで深刻さは無いと思うんだけどなぁ?」


「一応は後で侯爵様に説明をしろって言われてるけど?ソレは良いのか?」


「うーん?そこは出来る事なら黙っていられたら良いんだけど、しょうがないかな?父上への報告はどうしてもしないといけないだろうし?その際には小袋の事は他言無用にして貰うしかないなぁ。」


「侯爵様は国王に報告する義務があるんじゃねーのか?ソレで情報が漏れたらどうしようも無いし、俺に危険が襲ってきたらそんときゃ何を措いてでも逃げるからな?この国からもトンズラするってもんだ。」


「その時には私も一緒に連れて行って!責任取るよ!」


「・・・は?」


 いきなり何こいつは戯言を抜かすのかと俺は思考が一瞬フリーズした。

 ソレは騎士の皆さんも同じだった様で硬直している。


「だって私は侯爵家の者であるから当主への報告は絶対にしなければいけないし。そのせいでタクマが追われる様な身の上になってしまったら責任を持って私もそれを一緒に背負う覚悟があるよ!」


「責任の履き違えをしてんじゃないぞ、この小娘。お前が付いて来るのって正直言って足手纏いでしか無いから。ホント、そん時はついて来ないで、って言うか、置き去りにするけどな。ついて来れない様に前みたいに痕跡残さずいなくなるけどな。そもそもだ、まだそうなるとは決まってないだろうが?」


「えー!?ここはタクマが感動して「ああ、分かった」って言う場面じゃ無いのー!?」


「何にどう影響を受けたらそんな思考になって本気で驚けるんだよ、こんな展開で・・・」


 これに俺はマリの事が増々理解不能になった。

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