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★★★平気になるのは良い事か、悪い事か★★★

 やはり俺の精神はこちらに来た際に弄られて何処か壊れているんだと思う。

 例えソレが悪人だったとしても、百人近かったそいつらを一人残らず虐殺しても何も心に動きが出なかった。


 使った魔法は「グラビティプレス」と言う名前だ。やはりコレは何時か名前のダサさにこのゲームの開発関係者に一度は文句の一つも付けるべきである。


 さて、それは置いておいて、この魔法を使った結果だ。まあ言ってみれば「地面に赤い血の花が咲いた」とでも言えば良いだろうか?

 魔法発動の際には俺の目には奇妙で不気味な光景が目に入っていた。それは「人が上から目に見えない力で押し潰された」と言った感じである。

 一人もそれに抗えず、逃れられず、只々に「ぶしゃり」と、肉の塊と言うか、残骸と言うか、それらに一瞬で変わる光景である。


「今の俺はこんなのを見ても吐き気すら湧き上がって来ない?嘘だろ・・・」


 こんなのを見たら普通は胃の中のモノをゲロリアンするはずである。しかしそれが無い。

 流石に相手が悪人だと分かっていようとも、これだけの数を一人残らずこの様な無残な殺し方をすれば僅かな罪悪感くらいは湧いても良さそうなモノなのに、それも無い。全く無い。


 この光景を見て逆に吐いたのは俺の事などはどうでも良いなどと言っておいてここにまで様子見をしに来ていたマキスである。


「おげぇぇぇぇぇ・・・おえぇぇぇぇぇぇ・・・」


「何でお前来ちゃったんだよ?アレだけ言ってたのに。ツンデレか?と言うか、やっぱこれ、裏の仕事してる奴の感性でも吐くのか。俺はなんで何とも無いの?神様?ちょっとO・HA・NA・SI・・・したいな?」


 密偵などやっているくらいだから多少のグロ耐性はあるかと思ったのだが、どうやらそれは俺の勝手な思い込みであるらしい。


「・・・何故お前は平気でいられるんだ?・・・と言うか、コレは・・・お前が?まさか・・・」


「あー、済まないけど、ちょっとそれじゃ無くて。この屋敷、捕らえられてる人とか居たりするなんて情報はあったりする?秘密の部屋とか、地下室とか?そう言う被害者が存在するって言うのであれば救助しとこうかと思うんだけど?」


 俺が何とも無くそんな事をサラッと聞くものだからマキスは怯えた目で俺を見る。どうやら俺の事を異常者か何かだと受け止めたらしい。俺にはそれを否定できない。確かにコレは異常だと自分でも自覚しているから。

 しかしそうして怯えつつもマキスは律儀にも質問には答えてくれる。


「私が合図を出す。屋敷内の捜索はお前がせずともそれで国の方で対処をする。・・・次に行くぞ。」


 どうやらマキスの合図によって兵士がここの後片付けはしてくれるらしい。

 なのでこの場ではここまでだ。そのまま俺はこの屋敷とおさらばである。


 そうして次の「赤い流星」の拠点としている場所に来た。それは言ってみればスラム。貧民街と言った感じの場所だった。

 そこに存在するちょっと大きめの一つの家。そこがどうやら次の目的地と言う事らしい。


「ここに居るのはロクでも無い奴らばかりだ。遠慮無く・・・先程の様に奴らを片づけると良い。」


 マキスはそう言ってその身を路地裏の陰に隠す。俺の側に居ようとしない。

 此処まで来る間にも頻繁にチラチラと案内の後ろに付いていく俺に振り向いてずっと挙動不審だったのだが。


「うーん?嫌われ・・・てるのは会った当初からだから、怖がられてる、んだろうな。それもそうだよな。あんな結末に自分の身が一瞬で変わると分かったら俺の機嫌を損ねない様にって気を遣うか。と言うか、未だに顔全体覆面で顔を一度も見た事無いなぁ。何時か見せてくれる気はあったりするのかね?」


 顔も知らない相手からの態度など全く気にする気は俺には無い。だからあんまりマキスには過剰に気を使わないで良いぞと後で言っておくべきだろうか?

 チラチラと毎度毎度の事に俺の方を見てきて機嫌の確認などせずとも、さっさとこの仕事を終わらせればもう二度と会う事も無いはずなのだ。

 だからこちらを過剰に気にするよりも仕事をさっさと終わらせる事に専念、集中して欲しい所である。


 さて、先程に遠慮無くと言われたので次の実験をするのも良いだろう。とはいえやはりここにも連れ込まれている被害者が居ないかどうかは確認しないと先程の「重力魔法」の実験をする事は出来無い。


「さっきはどれだけの数をターゲットにできるか試したんだよなぁ。だけど、次はその一つの範囲、ってのがどれくらいまで広げられるかを試そうと思うんだけど・・・」


 任意、と言う文言である。その魔法の効果はどこら辺まで広げられるかを試しておきたい所なのだ。

 先程の数の実験は「百名以上でも余裕そう」と言った結論を出している俺の中で。

 ならば次はどれくらいの広さを魔法の効果範囲内にできるのかをやってみたい。

 目の前にその実験検証に丁度よさげな大きさの家があるのだが、何の罪も無い人を巻き込むつもりは無いので万が一を考えて魔法で一網打尽は狙えない。

 中にこの「赤い流星」に拉致監禁されていたりする被害者が居たりすると魔法の被害に巻き込んでしまう。


 そうとなれば中に入って一暴れしてくる他に無い。俺はここに「赤い流星」の壊滅をしに来ているのだ。魔法の実験台を探しに来ている訳じゃ無かった。ならば突入あるのみ。


「たのもー。俺はお前らを壊滅にし来た者だ。命が惜しかったら国の兵士がこちらにやって来てお前らを連行するまでジッと大人しくしている事を忠告する。」


 俺は結構な大声で叫ぶようにそう先に警告をしたので聞こえている事だろう。

 見た感じはボロイ家であるので音響的に見て防音壁とかは使っていないだろう。届いているはず、と思いたい。


「・・・あ、魔法の道具で防音とかあったりするのか?聞こえて無かったらちょっと俺だけコレ恥ずかしくね?うーん、そこらへんを今考えても意味無いか。んじゃま、荒いノックを合図に中にお邪魔させて貰いますかね。」


 こういった場面ではドアを蹴り破って盛大なノッカーとするのがお約束だろう。

 俺は結構本気を出してドアに結構いい感じの前蹴りを放った。


「おらよっと!・・・ドア、ボロ過ぎだろ。俺の足が貫通しちゃったじゃんか・・・」


 締まらない。バキドカーン!とドアを蹴り吹き飛ばして内部へと突撃とかしてみたかった。映画みたいに、漫画みたいに。この結果には盛大に自分の中で「大失敗!」と物凄く恥ずかしい。


「先ずは剣で鍵の部分と蝶番を切っておいてからにするんだった・・・」


 物事には大抵は下準備が大事だ。それを疎かにした俺が悪いのだ。ここで俺は足をゆっくりとドアから抜いて代わりに腰の剣を抜いてドアを切り刻む。

 当然そんな事をしても先程のカッコ悪い姿が無い事になる訳じゃ無い。だけども改めて俺が家の中に突入する儀式として気持ちを改める為にやった。

 俺の剣の錆びとなったそのドアはガラガラと崩れて結構派手な音を立てる。そこへ俺は一歩踏み込んだ。

 そこには八つ当たり相手は幾らでも居た。全員漏れなく酒臭い。と言うか、この家の中が臭気でいっぱいだった。


「クッセ!お前ら・・・よくもこんな場所に引き籠っていられるなぁ?取り合えず換気したい。天井に向けてストーンショット連発すれば効率良く空気の入れ替え穴にできねぇかなぁ?」


 そんな事を言っている俺に対して「手前は誰だ!」とか「カチコミだ!」とか「野郎ども!暇つぶしがやって来たぜ!」とか「何処のどいつだ?」とか「ガサ入れか!?」とか「他所の組織からの宣戦布告?」とか好き放題口にしているむさ苦しい男たち。


「どうすっかなぁ・・・こんな中が臭いとは思って無かったから、正直言って外でやりたいんだけど・・・」


 今回も大声で挑発してこの家の中に居る奴らを誘き寄せる作戦をせねばならないのだろうか?

 しかし入る間に大声で外から宣言をしている手前「またソレはちょっと・・・」と思い止まってしまった。


「この程度の数ならサクッと片付けて終わりにした方が早いかな?もういいや。家の中で今回は戦ってみよう。屋内戦闘とか体験してきてないしな。」


 既に相手側は誰もが剣を、或いはナイフを、或いは手斧を持ってこちらに警戒をしてきてる。


「スラッシュは・・・この家の基礎まで切っちゃいそうだしアカンな。そうすると魔法も大抵は駄目、だな。」


 過剰な攻撃はこの家の倒壊を齎す。なのでここは剣での戦闘、室内空間で。といった事に注意して経験を積んでいくのが良いだろうか?


「悩むだけ時間の無駄と気づいた。さっさと片づけよ。」


 臭いと言えどもこいつらを片づけるのにちょっとの間息を止めていれば良いだけの話だった。なのでそこに気付いた俺は直ぐに一歩踏み込んだ。力を込めて。

 その一歩は一瞬で一階奥に居た男の背後に。そこで俺は既に剣を横一文字に振り抜いている。


「おー、成功した。やっぱ全然自分の意思で制御できていないけど。多分これっていわゆる「瞬歩」とか「縮地」とか言っちゃってイイ感じ?」


 斬られたそいつの胴は三分の二以上がバッサリ。致命傷で生き残れはしないだろう。


「あ、回復魔法とかあったり蘇生魔法が有ったりすればワンチャン・・・まあそこは今考える事じゃ無かった。」


 この世界の魔法の種類やら法則などは後回しだ。今は目の前の事をさっさと熟す事が先である。


 とここで奴らは俺の姿を見失っていた。まあ当然の結果か。だって俺も自分で動いた際の挙動を把握しきれていないのだから、そこは当然他からの見た俺の動きも人外な速度として目に映っているはずで。


「ど!?何処に消えやがったアイツ!・・・は?」


 家の奥で一人が床に倒れた音で一斉に奴らはこっちを向いた。そして既に一人始末されていた事に驚愕と言った反応で凍っている。


「そんな風に突っ立ってるだけで良いのか?反撃してくる気は?ぼさっとしてると俺からまた仕掛けるけど?」


 そうしてまた俺は一歩踏み込む。そして先程と同じ結果が出る。


「また背後に回ったな?何でだ?これにも法則があるのか?でも、ゲームの中にも、設定とかにも、こんな事どこにも説明とか解説は書かれて無かったと記憶してるんだけどなぁ。」


 俺はここでドラドラクエストの事をなるべく詳細に思い出そうとしてみた。けれども該当する情報がヒットしない。

 バッサリ、また一人敵が倒れる。まるで「鬼◯者」の主人公にでもなっている気分になる。空前絶後のバッサリかーんである。

 この動きはまるであのゲームのシステムにある「一閃」みたいな挙動だな、何て、そんな下らない事を今俺は考えていた。


 そこにいち早く正気に戻った一人が俺に向けて手斧を投げて来た。投擲である。しかしこれは別に当人に投擲の自信があった訳では無い様で。


「ひえゃぁぁぁぁァっ!?」


 悲鳴と共に錯乱しての行動だった。なのでまともに狙いが定まっていない。その手斧は俺の方に飛んでこずにあらぬ方へとスッ飛んでいった。ノーコントロールである。

 壁に見事にガキンと柄の部分がぶつかって勢いが止まるとそのまま床へ落下。ガンと言う音と共に静けさがやって来る。


 そこで俺はまた動いた。奴らは目の前で起きている出来事を全く吞み込めていない。その内に数を減らせるだけ減らそうと思って俺は動く。

 自分のこの動きにある程度は早めに慣れておきたいという所もある。

 部屋の中、一階にいた連中の数は最初は11人だった。今は二人倒して残りは「9」である。


「この時間帯は奴らが一番この家に集まるタイミングだったのかな?うーん、ドアは俺が使えなくして全開放だから換気が直ぐ終わると思ってたんだけど。まだ臭いなぁ。あ、血の臭いも混ざり始めて余計にくせぇや。」


 この家にこのまま長く居続けるのは苦痛になって来たのでさっさと全て片付ける方向に決めて俺は再び動いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] (`・ω・´)、汚ねえ花火だぜ!ですね。
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