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★★★後の処理は任せた★★★

 何かもう大変な事になっている。その賊のリーダーの腕が。

 俺の拳が叩きつけられた部分はもちろん骨が折れている。折れていると言うか、多分粉々に砕け散っていると思う。

 だけどそれだけじゃ無かった。そのリーダーの腕は俺の拳で弾かれた勢いでグリュン、とその背中の方にまで行ってしまっている。

 肩の関節が多分破壊されていると思う。靭帯とか筋肉とかも断裂していそうだ。

 そして一拍、間を置いて闇夜に痛みでの叫び声がこだまする。


「う・・・?うがっ!うぎゃあああああああああ!?」


 腕がそんな事になっているのでリーダーがその手に持っていたはずのナイフは既に無い。何処かに飛んで行った様子。

 と言うか、そのナイフ、まだ無事だった残り二名の内の一人の胸に刺さっていた。どれだけ運が悪かったのだろうかそいつは。

 口から血を吐き出して地面にそいつはそのまま倒れてしまった。ナイフは深く肺に刺さっていて恐らくは致命傷。南無阿弥陀仏である。


「・・・あー、最後はお前だけだ。まだやる?」


 運が良いのか、悪いのか。その最後の一人は全身が脱力して地面に両膝を付いて俯いてしまった。どうやら反抗する気持ちは無いみたいだった。


「すいませーん!今終わりました。後の処理の方お願いしまーす。」


 俺がそう言えば周囲からゾロゾロと軽鎧を見に纏った警備兵が集まって来た。その数三十人程。

 腰には剣を佩いていてロープを手にしている。捕縛の為の物だろう。

 それと簡易的な荷車を二台引いて来ていた。こちらは気を失っている賊の運搬、或いは死んでいる者を運ぶための物だろう。

 これ以降は俺の仕事は無い。任せてしまっても良いだろう。


「ふぅ~。今日の所はもう寝れるかな?残りは、あー、明日か。案内とか付けてくれるかね?」


 俺がそう言って屋敷の方に歩いていると声を掛けられる。


「タクマ!凄いじゃないか!何だったんだい今の動きは!?一瞬で君が移動している様に見えたよ?どうすればそんな動きが可能になるんだい?あの動きは夜で視界が悪かったから見えにくかっただけと言った理屈じゃ通らないよね?ぜひ今度教えてくれないか?お茶でものんびりと一緒に飲みながら茶菓子でも食べつつ説明をしてくれないか?」


「何で俺とお前でノンビリ茶をシバキながらそんな色気もへったくれも無い話せにゃならんのだ・・・断る!」


「そんな事言わずに!その強さの秘訣を聞きたい!私たちは友達だろう?」


「友達ねぇ?だったら余計に喋る気は無いな。親しき中にも礼儀あり、家族間にも秘密アリ、って言葉、知ってるか?友人だって言ってもな、言えない事は言えないんだよ。と言うか、お前には絶対に教えねえ!」


 家族間にも秘密アリ、なんて言葉は俺が今勝手に作った。それと、絶対に今後も侯爵代理様に俺の強さに関しての事は話さねぇ!無理なモノは無理!


 俺が声をちょっと荒げて断言したのでこれに侯爵代理様はブー垂れている。


「別に教えてくれても良く無いかい?そこまで否定するっていうのは相当、法に触れる事でもしているのかい?」


「その誘導には乗らん。なんだよ、その法に触れる強くなる方法って。そんなの寧ろ逆に何があんのか聞いてみたいわ。と言うか、言っても聞いてもいけない禁忌とかだろどうせ。聞いてみたいとか言ったけど即行で聞きたく無くなったわ。」


「なら今度じっくりと説明してあげるよ!」


「うぜぇ!」


 侯爵代理様は何が何でも俺とお茶会をしたいらしい。粘着されるのは勘弁だ。


 こうして今夜はもうこれ以上は無いだろうと言う事で、俺は宛がわれた部屋のベッドに飛び込んで目を瞑る。


「何だよもう・・・あー。早い所赤いナンチャラを壊滅させて調べ物したいんだよ。静かな時間が欲しい・・・」


 そうぼやいてから目を瞑ったら速攻で俺は意識が眠りに落っこちた。残りは明日で、全部消す心算でぐっすりお休みである。


 そうして翌日。俺は当主様と一緒の席にて朝食を摂らされている。


「なんで目が覚めての朝飯でいきなりお偉いさんと一緒に食わにゃならんのですか・・・」


「昨夜の襲撃、それを全て片付けた事に対しての礼を言わせて貰う為だな。それと、この屋敷での滞在許可と図書館への自由使用を許可する証明証を渡す。これで自由にこの首都にて調べ物をしてくれたまえ。」


 そう言って当主様が俺におもむろに近づいて来て「手に取れ」と言いたげに銀に輝くチェキ写真程の大きさの銀の2mm程の厚さの板を差し出してきた。

 ソレを俺は受け取って一言。


「それって当主様が直に俺に渡さないといけない物だったんです?」


「これには侯爵家の承認印を入れてある。悪用されては困るのでな。紛失はしない様にくれぐれも注意してくれ。」


「重たい、実に重たいんですが?動きが鈍りそうです・・・朝から何て物を渡してくれるんです?」


 実際に重いのはそのカードの物理的な所では無い。その印の事だ。そんな重要なモノを預けると言うのだから、どれだけ俺の事を信用したんだよ?と言いたい。どこの馬の骨とも知らない奴に出す物じゃ無いのだこんなのは。


「君の力は私も見せて貰った。有り得無い力をこの目にしたのでな。言ってしまえば、君をできれば取り込めたらなと考えての事だ。」


「うへぇ・・・あんたら、ぶっちゃける所がしっかりと親子だな、ホント。」


 この朝食の席には侯爵代理様が一緒に朝食を摂っている。ニコニコ顔で居るので思わずそれに。


「俺と一緒に食う飯はそんなにも美味いのか?」


 と聞いたら、これには。


「友人と一緒にこうして父上を交えて一緒に食事なんて初めてだからね!ああ、昨日の夕食もそうだ。今私は初めての事を沢山経験しているんだからこれ程に楽しい事は無いよ!タクマには責任を取って欲しいな!」


「・・・うん、何だかお前が哀れに見えて来ちゃったよ。と言うか、何だよその責任って!俺にな何の関係も無いだろそれは!」


 友達と一緒に飯を食うと言った経験を楽しいと断じている侯爵代理様に俺は何だか変な哀れみの目で見てしまう。

 当人は別に哀れまれる事など一切無いと本当に分かっていないみたいで、俺のこの視線には首を傾げて「何で?」みたいなリアクションを取ってくる。


(・・・確か友人居ないとか言っていたからなぁ。貴族の世界って、ホント、やだなぁ)


 この鬱陶しいキャラに忘れそうになるのだが、侯爵代理様の見た目が「宝塚の男役ですか?」な見た目で、恐らくは友人と呼べる者が出来なかった程に貴族たちが寄ってこなかったんだろう。

 周囲とはかけ離れた見た目を持つ者と言うのは浮く。普通では無い、そんな下らない理由で先ずはその者の内面などはすっ飛ばして見た目で全てを判断して近寄らないと言う判断を下す奴は多い。


(どうやら剣やら魔法ってのを習っていたらしいから、その点もやっぱ影響してんだろうな)


 女だてらに剣を習う、自己防衛以上の剣技を身につける。

 知識としての魔法、と言うだけじゃなく、それを使用する事ができるまでに魔法を習熟する。


 これらの点もこの侯爵代理様に友人が出来なかった要因に入っている事だろう。淑女とはかけ離れた事を修練している女性を敵視している奴も居そうだ。


 そんな所に俺みたいな変な奴が現れ、下手に出ず、ふざけた態度、言葉遣いも荒くて直す気も無く、対等だと言わんばかりに馬鹿にする様な揶揄う言葉のチョイス。


(うん、そんな存在、衝撃が酷過ぎて本来の「普通」の貴族なら俺の事を見下して蛇蝎の如く嫌うだろう所だ。だけどこの侯爵代理様は・・・)


 俺みたいなのを本気で友人にする気になる程に、侯爵代理様は「寂しかった」のだろう。

 まあそこには色んな打算も少なからず含まれているのだろうが。その点が油断のできない可愛げの感じられない部分である。

 そんな点があるから、だから俺は侯爵代理様とはこれ以上には仲良くしたく無いと思ってしまうのだ。


「で、メデスとリーは?何で一緒に食事しないんで?」


 此処には二人が居ないのだ。同席していても良いはずなのに。俺は席についてテーブルの上に出されたスープとパンを口に詰め込んでは飲み込んで減っている腹を満たしていく。


「ああ、二人はこれからチャン商会の方での仕事があってね。食事を摂りながら部屋で書類を処理すると。集中したいと言う事で同席は断られたんだ。」


 俺の質問に答えたのは侯爵代理様。ここで俺は閃いた。出ている野菜サラダ?の様なものをバリバリと食いながら。


「あー、そうなんだ。リーは歳も近そうだったし?友人になって貰わないの?」


「・・・!?」


 俺は巻き込んだ。リーを。この「侯爵代理様の友人」と言う枠に。

 そしてそれはまんまと嵌まった。この「盲点だった」とでも言いたげに驚いたリアクションを取った侯爵代理様の反応で確信した。


(おう、頑張れよリー。これからお前は栄えある侯爵代理様の「御友人」だぜ?)


 これでチャン商会の商売の未来もより安泰だ。俺は良い事をした。反論は受け付けない。

 せいぜいリーには俺の代わりに侯爵代理様の対応をして貰う。俺の受けている負担を分け与える。担って貰う。


 ここで当主様が話し出した。本日の予定、と言うやつだ。それを俺は何の卵か分からない目玉焼きと、何の肉か分からないハムをもしゃもしゃと食べながら聞く。


「さて、昨夜に君の力は見せて貰った。その力は自分の目で見ていたのに未だに半ば信じられ無いのだがね。しかし結果を然りともたらしている。ならば、君の昨日の要望を叶える事に何ら問題は無い。案内役を用意した。食事の後に紹介しよう。」


「あー、はいはい、ありがとうございます。・・・お前の為にやるんじゃないからな?自分の為にやるんだからな?」


 ニコニコ笑顔で俺を見て来る侯爵代理様は「赤い流星」を潰せと当主様から命じられているので、俺がコレを今日早々に達成できれば万々歳と言う訳だ。

 なので一応はと思ってそこは否定の言葉を言っておいたのだが。


「いやー有難う!やはり持つべきモノは友人だね!」


「やっぱりお前は頭の中にお花畑が出来てやがるな?全く俺の言ってる言葉をそのままの意味で受け取ってねーだろ!ヤメロ!勝手に自分の都合の良い様に解釈して勝手に納得するのは!」


 食事を終えた俺は水を一口飲んで「何でやねん!」とツッコミを入れるのだが。そこはやはり侯爵代理様、何ら通じない。


「はぁ~・・・で、当主様、その案内役、自衛はできます?俺が暴れてる時には邪魔にならない所に居てくれるだけで、まあ、充分ではあるんですけど?」


「大丈夫だ、問題無い。では少々早いが顔合わせといこう。」


 当主様はそう言ってから手を二度程叩いた。するとこの食堂に入って来る者が一人現れる。


「・・・おい、何だこいつは?当主様、本気で言ってます?」


 現れたのはビビッドカラーの塊だった。

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