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★★★一件落着のその後もまだある★★★

「私はこの赤い流星に関する事に対しての責任者にされてしまったんだ。」


「・・・は?どう言う事?」


「まだひよっ子の新興勢力でしかないから、私の手腕でそれを潰して見せろ、だってさ。父上は本当に私に対して容赦が無いよ。こき使ってくれるよねぇ。無理難題だよ、こんなのはさ。今の私の使える力はどう考えても少な過ぎる。明らかにソレが足りていないのに事を成せと。そこを分かっているのに父上は私に命令をしてきたんだよねぇ。」


「おい、まさか・・・」


「今度こそタクマ、雇われてくれないかな?いやー、結局はここで協力してくれなかった場合はタクマ一人で全部赤い流星の対処はして貰う事になるね?」


 侯爵代理様は俺をどうしても自分の懐に引き入れたいらしい。妙な言い回しで俺を逃がさぬように遠回しに脅してきたが。


「脅迫かな?いや、違うな。俺はもうとっくに逃げられないって事か?」


「そうなるねぇ。この件の事も恐らくは直ぐにでも奴らの本拠に連絡が言くと思うよ?」


 向こうの犯罪者集団も定時連絡と言った手段を使っているのであれば、街道に差し向けている奴らからの連絡が途絶えれば異常だと気付く事に繋がるだろう。馬鹿じゃ無ければ。

 そうすれば情報収集をしてこの衛兵詰め所にも人を出して探りを入れて来るに違いない。そうしたら俺の事は遅かれ早かれバレるはずだ。


「・・・既に俺は今チャン商会に護衛として雇われているんだ。侯爵代理様の要求には答えられ無いなぁ。」


 俺は苦し紛れにそう言って話を切って終りにしようと仕向けたのだが。


「あれ?チャン商会?もしかしてワイロイロ伯爵とエゴチヤ商会の癒着と不正の証拠を掴んだって言う件の事かな?」


「おいおい、そんな容易くその話を簡単に漏らして良い物なのかよ?」


「そうだね。これから私はこちらに来る予定のその使者に会う予定になっているからタクマも一緒だね。」


「・・・おい?」


 全力で今直ぐに逃げたい。しかしリーとメデスにもしっかりとお暇の返事はしておかねばならないだろう。

 それにまだ護衛料を貰っていない。どんな世界も先立つものは金なのだ。これを要らぬとばかりにこの首都から逃げ出すのはできない。

 それに俺はそもそもこの首都の図書館に調べ物をしたいと言う事でついでにリーの護衛で一緒に来ているのだ。

 ここでまた俺が逃げ出せば次に何処に行けば俺の満足できる調べ物ができる図書館があるか分からない。


(リーの護衛はもう大丈夫、なのか?侯爵代理様がこれから会うって事はリーの保護は侯爵預かり・・・は?じゃあエゴチヤ商会とワイワイロ伯爵の件も?)


 侯爵代理様はこの件に関しても責任者として任命されていると言う事である。詰んだ。

 ここまで揃ってしまっていては俺が侯爵代理様からケツ捲って逃げられる状況じゃない。


 そうして俺はこの部屋で侯爵代理様と待つ事に。その間はこの首都でどの様に父親からこの件に関して押し付けられたかの経緯を侯爵代理様は俺に話して聞かせて来る。俺はそんなの微塵も聞きたくも無いのに。


「それでいきなり父上からこちらに滞在しているチャン商会の者と面会させられてねー。まあ言うなれば私の方に囮の使者の対応を任せるって事だったんだけどね。私が前に出て派手に目立てば裏で父上の部下が動きやすいって事で。その目論見はタクマがきっちりこなしてくれて本当に助かったって感じなんだ。ありがとう!」


「物凄い爽やかなニッコリ笑顔でお礼を言われても全然嬉しくないのだが?」


 俺のこの返しに部屋に控えている御用聞き用に残っている兵士は目がキョドっている。この俺の態度にいつ何時に侯爵代理様に俺が「無礼討ち」されるかと冷や冷やモノなんだろう。

 こういった場面では普通に俺の方が姿勢低く「光栄です」と口にするのが当たり前と言った形であるのだろう。

 でも俺はついつい嬉しく無いのでぶっきらぼうな返事をしてしまう。そもそもこっちの意見を聞いているのか、いないのか分からない侯爵代理様が悪い。俺が機嫌宜しく無いのはそのせいだから。


 そんな時間が過ぎているとドアのノックがされる。どうやら客がやって来たと。

 そのまま侯爵代理様はその者をそのままこの部屋に通す様に命じる。

 すると入って来たのはやはりと言って良いだろう。リーとメデスだった。


「遅れてしまい申し訳ありませんマリエンス様。チャン・リー、無事に役目を果たしてまいりました。」


「ああ、リー、ご苦労様だったね。話は聞いているよ。引継ぎなどの件は既にもう通達はされているよね?ならそこら辺の事は省こうか。すると時間は余るはずだ。出発からここまでの間に起った事を全て報告して貰え無いか?特に、タクマの事をね?」


「畏まりました。では、彼との出会いからご説明させて頂きます。」


 ここで説明が始める前に侯爵代理様がリーに椅子に座る様に勧める。リーはこれに「失礼します」と一言断わってから席に着いた。

 これにメデスは立ったままだ。リーの護衛なのでまあ当たり前であるのだろう。


「何でリーはアルヨアルネアルカを付けないで喋ってるの?」


 俺はここで空気を読ま無いツッコミを入れてしまった。普通ならここでその話題はスルーが無難であろう。

 だけど気になるではないか。ずっとここまで俺はリーとの会話ではそれを耳にしていたのだ。ここでそれが突然無くなるのは違和感しかない。


「高位の方を相手に自らの癖を全開で喋る何て真似ができるハズ無いでしょう?と言うか、タクマ、貴方、マリエンス様とはどういった関係なの?知り合いなら、それならそうと早く教えて欲しかったのだけど?」


「いや、そんなの分かるはず無いじゃんね?・・・俺としてはもう二度と会いたく無かった相手だしなぁ。こんな所で、こんな件で再会をしてしまうなんて思ってもみて無かったんだが?寧ろ、あり得るかよ!って叫んで否定したい気分なの俺の方なんだが?」


「タクマは私が嫌いなのかい?なら好きになって貰う為に今後はもっと交流を持ちたいな。ああそうだ!今度タクマには贈り物をしよう!良い案だ。タクマ、何が欲しい?今度ソレを聞かせてくれないか?もちろんお茶をしながらね?」


「お前は何で前向きに捉えるのか?俺のこのあけっぴろげな「関わりたく無い!」って主張が見えて無いの?聞こえて無いの?頭の中どっか悪いの?」


 俺のこの返しにリーもメデスもギョッとした表情に。まあ無理も無いか。

 俺と侯爵代理様とのファーストコンタクトを全く知らないのだから。

 他人からしたら態度の悪い傭兵が自分の命を顧みずに高位貴族に軽口を叩いているばかりか、侮辱を飛ばしているのだ。

 これは「空気を読まない」なんて事では無く「度が過ぎている」である。

 この場で侯爵代理様自らで手討ちにされてもおかしくない、と言うか、既にされていなければオカシイ状況なのである。


 一体どんな関係なのか?と心底問いたそうなリーを無視して侯爵代理様は俺とリーとの出会いがどの様であったのかを質問してきたのだった。


 さて、ここに至るまでのリーの話はそこそこの時間を要した。しかし侯爵代理様は満足げに頷く。


「やっぱり私が見込んだ通りの人物だったねタクマは。それにしてもそうなると、以前組長と手合わせしていた時は力を抜いていたって事かい?タクマの全力をいつか見てみたい所だね!」


「ヤメロヨ・・・フラグ建てようとすんじゃねーよ。冗談じゃ済まないんだよ、マジでそんな時が来たらさ。命の保証をしてやれないんだよ。だから逆にそんな場面が今後起きない事を祈れ。」


 俺の全力なんて出したらこの世界の地形が一気に変わる。地図が役に立たなくなる。国が簡単に無くなる。やめて欲しい。俺は破壊の化身では無いし、殺戮者でも無い。


「さて、それじゃあ移動しようか。」


 侯爵代理様がそんな言葉でこの場の空気を変えた。俺はこの言葉で何となく何処に行こうとしているのかを察してしまった。


「この首都にある別邸にリー、君を匿うから一緒に行くよ。ああ、タクマも一緒に付いて来て。君はリーのまだ護衛なんだろう?」


「・・・行きたくねぇ・・・」


 俺はまだ護衛の役目を降りてはいない。なのでリーが行くのならば俺も付いて行かねばならないのだ。

 仕方なく俺は部屋を出る侯爵代理様の後ろを付いていく。リーもメデスもこれに付いてくる。

 そうして衛兵詰め所を出ればそこには何とも豪勢な箱馬車だ。こんなの狙ってくれと言っている様なモノである。

 だけども流石に侯爵家の馬車なので騎士の護衛は付いている。襲撃するには躊躇う人数、その数は十五名。

 この数であれば「赤い流星」とやらも迂闊には手出しはできない、とのリーの言葉である。


 こうして侯爵代理様とリーは馬車へと乗った。俺は乗らない。


「タクマも一緒に乗って欲しいな。ダメかい?」


「俺は護衛だろ?しかも雇われだ。チャン商会のな。乗せるなら護衛は護衛でもメデスの方に言ってくれ。俺がここで乗車できる立場に無い。」


 侯爵代理様が俺に乗れと言う。しかしこれを俺は拒否である。しかしリーがここで口を挟んで来た。


「タクマ、乗って。マリエンス様からの誘いだから。ここで護衛だからって理由で拒否は通らない。馬車の中に乗って行っても護衛は護衛だから。警戒は騎士の方たちに任せるべき場面。馬に乗らずに馬車に付いて走ってくるつもりならソレは駄目。侯爵家の格を落とすみっともない事だから。それをタクマにやらせたらチャン商会の品格が疑われる。」


 多分ここでの俺の顔は相当に歪んでいただろう。リーの話した内容は別に間違っていないから。雇い主の言う事である。ここは素直に従うしかない。

 なので物凄く嫌々ながらも俺は馬車に乗った。そしてちょっと驚く。馬車の外見はコンパクトに俺には見えていたのだが、しかし意外にも中は思っていたよりも広かった。足を伸ばして座っても向かいの席に座る者にぶつかったりしない程。

 それ程に広くゆったりしていたのだが俺の気分は最悪だ。真正面に侯爵代理様が座っているから。

 広い馬車内である。四人乗ってもまだ余裕があるのだ。リーと侯爵代理様は横並びで座り、俺とメデスがその反対の方の椅子に並んで座る。


「さあ、到着まで気楽におしゃべりでもして時間を過ごそうか。この中なら誰の目も耳も気にしないで良いから、言葉遣いは気にしないで良い。無礼講だ。公式な場では無いからね。」


「そんな事言われてもこれっぽっちも下々の者ってのは気楽にできねーからな?覚えとけよ?寧ろ緊張と遠慮が逆に上がるからな?恐れ多いってなって態度が硬くなるのが当たり前だぞ?」


「え?そうなのかい?だって私の口から直接に遠慮しないで良いと伝えているのに、何故そうなるんだい?」


「お前、実際にリーとメデスの顔見てみろよ。その目で確かめりゃ良く解るだろ?」


「・・・本当だね。私も色々と勉強不足だなぁ。指摘をしてくれてありがとうタクマ。これからも宜しく教えて欲しいなこう言う事を。」


「だから、俺はそこまで宜しくしたくねぇんだって!遠慮させて貰いたいんだがなぁ?」


 俺のこんな訴えは侯爵代理様には届かない。サラッとまるで「聞こえていません」とばかりに別の話題を振られる。


「リーは一度こちらの別邸には来た事があるよね。そちらで君を匿う。こうなればもう安全を得たと思ってくれて構わないだろう。「赤い流星」も首都の侯爵家別邸には攻め込もうなどとは考えないはずだ。そんな事をしたら他の貴族も、王家も、奴らを絶対に根絶やしにする為に力を注ぐだろうからね。それにリーは囮なのだから、本命の方はもう既に今頃は王城の方に父上と共に到着した頃だ。今回の件は後五日の内にでも終わるだろうから。そうしたら、私の仕事をタクマに手伝って貰いたいんだ。」


 要するに、本命の方がもう既に国へ報告を入れ終わった頃だから、ワイロイロ伯爵とエゴチヤ商会の件はこれで終了だと。そうするとリーの護衛はそれと同時に終わりとなるはずで。

 そこで残るのは「赤い流星」を潰す事。これは侯爵代理様が請け負っている案件だから、リーの護衛の件が無くなったその後は俺にそっちの解決を手伝えと。


「だが断・・・」


「図書館で調べ物をする為にタクマは首都まで来たんだよね?」


 俺が断る言葉の途中で侯爵代理様がそこに割って入って来た。

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[一言] :(;゛゜'ω゜'):・・・右手に幻想をぶち壊す的な何かが宿ってそうな運の悪さである
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