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★★★そう何度も何度も★★★

 これまでの事を俺は一息ついて振り返る。そもそも俺は「テンプレ!テンプレ!」と叫んでいるが、そもそもテンプレとは?と言った部分で引っ掛かっていた。


 それこそ俺がこの世界で目覚めた事はスルーする。そしてドラドラクエストの主人公になっている状態もスルーだ。サイキョウソウビもここでは敢えてスルーする。

 冒頭の俺の状態、状況などは大抵は「理不尽スタート」であるからしてソレは大抵の転移ものなら標準装備だ。


 大事なのはその後だ。「展開」だ。物語の冒頭で混乱する主人公が叫び声を聞いて咄嗟にそのトラブルに駆けつけてソレを解決する。


「うん、分かる。だけど俺はどうだった?村娘が人攫いに襲われているのを助けたな?うん、そこまでは、いい。だけどその後だな。」


 俺が感じるテンプレで言うとその後として、その助けた娘にホレられて案内された村で「オレツエエ」と「知識チートで村が異常発展!」でどんどん成り上がり!的な流れである。

 ついでにハーレムと「あれ?俺なんかやっちゃいました?」もあるよ!も追加だ。あとラブコメでも良い。


「しかしそうはならなかったな。ホント、流れに身を任せていた所はあったし、そう言ったテンプレ展開なんて考えてる暇も無かったな、村で生活してる時は普通に。必死だったしな、余計な事は考えてられなかった。この世界で生きていく為の知識も経験も得る為に。あー何だろ?展開的にはテンプレの亜種?変種?な感じだなぁ。」


 その後である。村である程度のこの世界の知識を得た俺は「さあ!満を持しての諸国漫遊!」となった訳であるが。

 やはりこの後もテンプレ変種的な展開になっている。


 俺のここでの想像する「テンプレ」は。


 悲鳴が聞こえる。馬車が襲われている。それを助ける。お礼の為に一緒に同行を求められる。到着してお礼をされて歓待。縁を繋いでそこからあれよあれよと様々な出来事に、と言ったのがテンプレだろう。


 しかし俺の今の現実は違う。え?テンプレって、何?みたいな展開だ。おかしい。実に、おかしい。

 このおかしいのは全て侯爵代理様のせいである。俺が悪い訳じゃ無い。何で寄りにも因ってあんな変な人物に目を付けられてしまったのだろうか?


「今後の俺の方針は?・・・先ず無事に侯爵代理様に見つからずにこの町から脱出。で、その後?・・・全力で此処から隣の町に逃走、だな・・・ヤバイ、嫌な事考えちまった。」


 まさかとは思ったのだが、俺はこの世界の「魔法」をまだロクに知らない。そもそも自分が魔法を使えるかどうかもまだ試していない位である。

 迂闊に使って災害を起こすなんて事はノーサンキューであるからして。使うならもっと慎重に安全を確保できる場面か、或いはにっちもさっちもいかなくなった時だろう。


 さてそうなると、もしかしたら既にこことは別の、それこそ周辺の町に魔法で一瞬で連絡が回っている可能性を考えてしまった。

 その場合、俺の事は既に指名手配犯的な感じで既に周知されてしまっている危険性がある。


「ソレを考えたら、追跡魔法とかあったりしたら不味いのでは?より一層に危険が、増す?」


 俺はすぐさま潰して丸めた金属を取り出す。そう、傭兵証である。まさかとは思うがこれにもし、俺の知らない魔法、それでいて俺を追跡する機能の付いた魔法などを付与されていたら?と。


「速攻で棄てないとダメじゃん?・・・うわっ!?俺の居場所見つかって無いよな!無いよな!?」


 俺は全力で周囲に意識を広げた。だがどうやら人の気配は感じ取れない。

 人が動くと空気も揺れる、服が磨れる、足音がする。それらに全神経を集中して探ったが、別段そう言った音や振動は感じられなかった。

 そこで俺は大きく一つ深呼吸をして再び心を落ち着ける。


「捨てよう。この建物の影に捨てておけば見つからないだろそう簡単には。・・・用心を重ねてちょっと埋めておこ。」


 心配し過ぎだと思う。が、精神安定的な部分でコレは俺には必要だった。簡単に見つかってしまって俺の逃走経路と言うか、逃走パターンなどの推測の材料にされない為にもそう易々と発見されるのは避けたいのだ。

 今の俺は追われる身である。あのどうにも執着心駄々洩れな侯爵代理様が諦めるなんて思うのは甘いだろう。


「さて、この町の外壁はザっと・・・6m?7m?俺のこの体のスペックで全力で垂直飛び?超えられる、のか?」


 俺はソレを思案する。村で狩猟をしていた自分の身体のスペックから導き出した答えで言えば「可能」と出てくるのだが。


「まただよ・・・本番ぶっつけ?やめてくれよ、俺はそんな博打打ちじゃないんだぜ?」


 跳び上がって壁を超えられるならばソレは良い事だ。そこから降りる事を考え無いのであれば。

 そんな高さから落ちて着地に俺は耐えられるのか?跳ぶのは良いのだ、そう、良いのだ。

 しかし予想以上に高さが出てしまい、壁を跳び越えてその後の着地はどうすると言うのか?と言った問題だ。


「この体なら大丈夫だと思うけど。だからって言ってそれ、失敗したら俺、怪我するじゃん?着地を失敗したら大怪我じゃん?」


 しかしそれを迷っている時間は既に少なくなっている事を知る。


「おい、見つかったか?そんな新人が居れば直ぐに見つかりそうなもんだけどよ?」

「連行すれば追加で金が手に入るんだ。他の奴らにゃ渡せないぞ?」

「ここ等辺は俺たちの庭なんだ。時間の問題だろうよ。」


 どうやら太っ腹な侯爵代理様は傭兵たちに俺を見つけて連れて来る様にと依頼を出した模様。

 本当に今の俺は指名手配である。堪ったモノじゃない、冗談ではない。

 と言うか、森の調査はどうしたゴラァ!?と心の中だけで唸る俺。


(・・・そこまでするかよフツー!?面子がどうのこうのって事か?いや、違うか。侯爵代理様は本気で、個人で、俺を逃がすつもりは無いと。増々以ってしてその執着は異常だよ!ヤンデレ?そんなのお断りだよ!)


 ここまでやられてはこちらも遠慮はしていられないし、迷っても居られない。

 なのでもうどちらの方向でも構わないのでこの町を囲う外壁側まで即行で移動した。

 先程の俺を見つけようとしていた傭兵たちには見つからずに済んだが、他にも俺を探す傭兵が居ないとも限らない。

 だから俺は決心した。怪我をするかもしれなくても、壁を超える、と。

 最悪怪我をしてもこのドラドラ主人公は回復魔法も使えてしまう万能型である。本当に盛り過ぎ、やり過ぎである。このゲームの設定を、主人公の能力を決めた開発者はバランスと言うものを考えていなかったんだなと思う。


 しかし今はその事を有難く思わなければならない。なにせ多少の無茶はできると言う事なのだから。


「とは言っても!コレもぶっつけ本番なんだけど!」


 魔法が使えるか実証もまだ済んでいない状態でコレだ。博打である。もしかしたら回復魔法を使えない、何て事になったら目も当てられない。

 しかしここで気合を入れて俺は跳ぶ。誰も見ていない瞬間に。そして後悔した。


「跳んでる跳んでる跳んでるとんでるうううううううう!?」


 外壁よりも遥かに5mは高く跳んだ。壁を跳び越えるに幾度かのテストをしておきたかったのだが、その時間はもう傭兵たちが俺を探し回っている事で捻出は無理だと切り捨てたのだ。

 だから、跳び越えられずに何度か力の調整を失敗すると言った事は見つかる可能性を上げる事に繋がるのでできなかった。


「着地はぁァぁァぁァ!確か・・・膝!横倒れ!ゴロゴロ!」


 もう焦って知能低下しているとしか思えない。この高さから落ちるのは恐怖でしかない。

 何とか衝撃を分散する着地法を地面への激突までに思い出してソレを実行できる様にと覚悟する。


「・・・は?」


 そんな心配は無用だった。もの凄く漫画ちっく、アニメちっく、俺は「こんなのアリか?」と即座に呆れてしまった。

 もうそれこそ「シュタッ!」と何の衝撃も発生させずに膝の曲げだけで着地を成功させてしまったのだ。


「ほんと、バカみたいだな、この体のスペック。どれだけやれば限界なんだよ・・・」


 そんな事を考えている暇は無い。早くこの町から遠ざかりたい。その一心で真正面を見る。

 目に入って来るのは何処までも続く草原。そして地平にはどうやら森。


 ソレを認識して俺は全力で走った。取り敢えずこの丸見えな草原はいち早く抜けなくてはならないと。森にせめて入らなければと。

 で、俺はそこでまたしてもちょっと後悔した。まだ全力で走る事に慣れていなかったのを忘れていた。


 だけどそのおかげで即座に森に入る事に成功する。そう、即座に、だ。

 俺の全速力は地平に見える森に即座と言える短い時間で到着できる速度を出していた。


「・・・こ、コワかった・・・逃げる事だけに必死で俺自身がまだ全然この身体を使い熟せていない事をすっかり忘却してたヨ・・・」


 焦っていた事を自覚する。しかしソレも町から抜け出す事が出来たこの時点でやっと安堵して精神は落ち着いて来る。後はこのままこの森を突っ切って見つからない様に逃走を続けるだけだ。


「・・・遭難するよね、絶対にソレ。でも、街道を行くって言うのは、無し、だな。」


 追跡が容易だ街道は。ついでに言えば何処に続いているのかすらも俺には分からない。


「そもそも俺はこの国の地理も、国境も分って無いしなぁ。侯爵代理様から完全に逃げるには隣国に入り込むしか無さそうなんだよなぁ。」


 何故こうも俺は侯爵代理様に怯えなくてはならないのか?だけども俺の頭は先程から「逃げた方が良い」という答え出し続けていた。絶対にあの侯爵代理様はヤバイ性格をしている。短い付き合いだが、それを俺は確信している。

 きっとあの契約書にサインをしておけばこの様な目には合わなかったかもしれないが。

 しかしその時にはその時でもっと別の悩みが待ち受けていたのではないかと思えた。

 それこそサインをしたらしたでその後に「何であそこで逃げなかったんだ」と後悔する様な目に遭っていたのでは?とすら今なら思う。


「俺のテンプレよ、何処に?」


 そんなボヤキが漏れた時にハタと気が付いた。


「まさか、二度ある事は、三度ある?・・・いや、流石にソレは・・・そんな事は・・・」


「ギャー!だ!誰か!助けてくれぇー!」


「な・・・なん、だと?」


 俺をこの世界にこんな形で誘拐して来た「神」って奴は俺に何をさせたいのか?何度襲われている者を俺に助けさせたいのか?

 このまま俺は行く先々でこうして突発的に襲われている人々を無限に助けて回らねばならぬのだろうか?


 聞こえてしまったものはしょうがない。その声の方に向かってしまう俺。どうしようも無い偽善だコレは。

 純粋に助けを呼ぶ声に動いたのでは無い。コレを見捨てて無視すると何だか寝覚めが悪くなりそうだから、と言った理由だ。


「もうこうなったら自棄だ!お次は何だよ!コンチクショウ!」


 俺が到着した場所は何ら変哲も無い街道、と見せかけて側に崖が聳えるそんな細道。

 そこに見えたのは馬車がどうにも土砂崩れで埋まっている場面。

 そこには命に別状は無さそうであるが、土に埋もれて身動きでき無さそうである小太りでバーコード禿のオッサンである。その顔、ちょび髭似合ってねーよとツッコミたい面をしていた。要するに、ブサイクである。


「あー、やだなぁ。これ絶対にまた何かあるじゃんか。厄介な事が起きなきゃ良いけどさ。・・・と思ったらこれかよ。」


 そこに武装集団が現れた。その数十三名。互いに失敗を押し付け合っている姿は醜いと言っていい。


「おい!誰だよタイミング外した奴は!」

「お前だろ?俺が落とした後に縄を切ってやがっただろ、俺は見てたぞ?」

「ちげーし!お前が切るの早かったんだよ、このボケ!」

「そもそも合図を出した奴誰だ?遅かったんじゃねーのか?」

「あァ?俺は完璧だったが?お前らが鈍いからこうなったんだが?」

「はぁ!?テメーがよそ見してたからだろうが!偉そうにしてんなよクズが?」


 どいつもクソで間違いないらしい。道を土砂で潰してこの馬車を足止めして襲うと言った計画だった様だ。

 ソレがどうにも落とした土砂で馬車ごと埋めちゃったからソレを片付けるのが大変、と。

 馬車を引き出して中の荷を回収出来ねば儲けにならぬと言う事である。野盗だ。完全に悪党どもだ。


「あー、うん。どう言ったきっかけかはどうでも良くて、その後の展開は俺が襲撃者を成敗する的な流れになるのね。ハイハイ、テンプレテンプレ、じゃあゴメンねゴメンねー?どうせ見逃してくれって言っても目撃者には死を、何て言うんでしょ?あーそうでしょう、そうでしょう。」


 もうこんな流れが連続三回目と言うのは流石に飽きるぜ、と思った俺はどうでも良いと言った感じでその野盗どもを蹴散らした。

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