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★★★まあ、そうなるわな、当然★★★

 さて、帰りはどうしようか?そんな気持ちで俺はボーっと突っ立っている。


 エルフは気を失ったままで居てくれているのでまだ今の所は安全である。

 一応は猿轡を噛ませて喋れない様にしておいたが、しかし無詠唱で魔法をこのエルフが発動できたりするとなれば、コレは意味が無い。


「はぁ~。しょうがねえ。ここに居続けても救助、何て洒落たモノは来ないな。だったら・・・来た方向は向こうだったか?」


 俺はエルフを担いでここまで来た道を戻るつもりで歩き始める。

 取り合えずはあの野盗どもの拠点のあった森まで行って、後はまたその時になって決めれば良い。


「エルフが襲撃してくる可能性は充分に考えてたんだけどねぇ。ソレがこのタイミングってのが、思いつかなかったよ。」


 俺は今本気ダッシュはしていない。ある程度は走る速度を落としていた。

 あの瞬間移動したかの様な本気ダッシュをエルフを担いだままでやった場合にどの様な結果が出るか分かったモノでは無い。

 気を失っているエルフが最悪「死ぬ」かもしれないと考えてしまうとそんな無謀な実験は出来ない。


「いや、どうせなら死んでも良いか・・・?いや、止そう。もうこれ以上は森の民ってのの恨みを受ける要素は作らない方が良いだろ。」


 殺したら終わりだ。取り戻せない。生きていればこそ、利用できると言った事もある。


「色んな事が同時進行すると対応が無理。俺はマルチタスクなんて出来んぞ?」


 ボヤキながら景色を少しづつ確認しつつ走り続ける。

 来た道をちゃんと戻れているかを全く無い記憶力を総動員して方向を修正していく。


 そうして走っていてやっと覚えのしっかりと有る場所に戻って来れた。


「しかしこっからも問題なんだよなぁ。このまま森に入っても、元来た道なんて森の中で分かるはず無いって言うね?それ所じゃ無かったしな。追いかけられてて。」


 森の木々に目印を付けて逃げていられた訳じゃ無い。ずっと背後に迫り続けるエルフから必死に逃げていて方向なども全くゴチャゴチャである。記憶できる訳が無い。


「いや、進路を塞いで来ていた木の枝を打ち払ってたから、もしかしたらそう言ったのが折れて目印になっていたりしないか?」


 もしかして、そんな風に思ったのはホンの短い間だけ。

 そうした対応をしていたのは結構な距離を逃げた後。エルフが木を操って俺の妨害をしてきている事を察した後の事である。


「ここで待つか?遭難したらジッとその場で待機して体力温存、救助が来るのを待つ、ってのがセオリーだろうけど。」


 その間にこのエルフの気絶が治ったりしたら最悪だ。コイツと二人きりの時間などもうこれ以上は過ごしたくはない。


「森の外縁部を回り込んで行けばどっかの街道に繋がっていたりしないかなぁ。」


 ここでじっと待つ事をした所で救助の来る可能性など皆無だと思って俺はそのままブラブラとエルフを担いだままに森の外周沿いを歩いて進んだ。


 そもそも森の中へと入って進んだ場合、途中でエルフが目を覚まして木々を操ってまた俺に仕向けて来たらどうなるか?

 そんな事になれば鬱陶しいし、もしかするとエルフを逃がしてしまう、などと言った場面が出るかもしれないのだ。

 ソレを考えたら森の中に入って進むのは選べない。


 しかしこの森の外縁を回って歩き進むにしたって、この森のそもそもの広さ、大きさを俺は解っていない。

 このまま何も知らずに進む続けるのもどうかと言った所である。この先に行ってマリたちに合流できるかどうかも分からない。


 と言うか、この世界そのものを俺は全く解かっていないので無茶言うな、である。

 まあその無茶もこんな訳の分からないハイスペックチート気味な体を持っているから出来る事であるのだが。


「流石にこいつとやり合ってる時は死ぬ覚悟もしたけどもさー?」


 ジッとしていると何だか無駄に時間を浪費している気分になって精神的な疲労を余計に感じてしまう。そう言った理由で動き続ける事を選択した部分もある。


「こいつが目を覚ました所で俺への憎悪が無くなってるとか言ったパターン、にはならないよなぁ・・・はぁ~。」


 こういう時に異能チートが欲しい。このエルフの記憶とか操作して何もかも忘れさせられ無いだろうか?


 そんな事をするのは殺すよりも残酷、などと言うヤツが居るかもしれないが、そんなの俺には関係ねえ!と言ってやりたい。


「扱いに困るんだよねぇ。殺しても後々の展開的に胸糞悪くなりそうだし?だからと言ってこのまま生かしておいてもねぇ?コイツ、取り合えず森の民に引き取らせるしか無さそうだな。」


 毒にも薬にも為らない様にする為にはこのエルフをあの集落に閉じ込める位しか思いつかない。

 しかし俺があの森に本当にまたもう一度戻っても良いものか?


「絶対に何かしらの物事に引きずられてあれよあれよ、何て首突っ込まざるを得なくなったりがラノベの定番・・・嫌だ嫌だ・・・」


 ぼやくだけしか俺には出来ない。多分そんな流れになれば俺は抵抗も逃げ出す事も出来ずに巻き込まれるのだ、きっと。


 だけども今もまだ目を覚まさないエルフの「今後の為の安全な処理」の為には行かねばなるまい。

 俺はその点を腹を決めて進み続ける。誰かしらが俺を見つけてくれないかと期待して。


 で、思いついた。


「おーい、おーい!ベラやーい!魔石を食う事に関して意地汚いベラやーい!俺を見つけてくれたら手の上に山盛りな魔石を進呈してやるぞー!マリと隊長さんも一緒に連れて来てくれー!」


 アイツなら俺の事を見つけられる能力があったはずだ。

 その事をすっかりと失念していた俺はそんな言葉を叫ぶ。


「まぁ直ぐには来れないだろうからな。このまま外縁を歩いてるしか無いか。」


 俺はエルフを担いだままに歩き続けた。そうして約30分?だろうか?それくらいして遠くから声が。


「おーい、タクマー!大丈夫だったー?」


 心配している様でいてその声質には本心が込められていない様に感じる呑気な声。マリである。


「連れて来てやったぞ?ホレ、早うその魔石を我に渡せ。」


 ベラは早速報酬の要求。隊長さんはコレを驚愕の目で見て来ている。


 と言うか、その視線がエルフに向けられている。

 俺はこれで「あ、かなりヤバいかも」と内心冷たい物が。


 先に俺はベラに魔石をガバッと一掴み渡す。これでベラは大人しくなるので後は隊長のリアクションの対処だ。


「あのー、こいつ、見覚えでも?」


「死んでいるのか?・・・いや、気を失っている?その人物は・・・森の民だろう?何でそんな存在の恨みを買う様な・・・マリエンス様、こやつ、危険過ぎます!」


 どうやら隊長、森の民を知っている模様。だけども問題はそんな部分じゃない。

 俺をこの隊長さんが危険人物呼ばわりして来た事である。


「あー、まあ、確かに俺は危険人物だなぁ。迂闊に魔法の一つもぶっ放せば、そりゃ大惨事だもんなぁ。」


 指摘された事を俺は否定できない。俺は自分の身がどの様なモノであるかを理解しているから。


 ここで隊長さんは俺に近づこうとしているマリの前に咄嗟に出て壁になる様に動いた。

 これにマリが文句をつける。


「彼は私の友人だよ?危険とは何だい?彼自身の性格の事を言っているの?それともこの森の民と関わっている事?恨みを買っている事?」


「マリ、何気に酷くないかその言い方?改めて言われ直すと嫌な感じだなぁ。俺だってこんな事にしたくてした訳じゃ無いからね?隊長さん、ちょっとそこん所考慮して?」


 俺とマリとのこんなおバカな会話にも隊長さんは黙って俺を、と言うか、エルフを睨んで警戒をしている。


 確かにこのエルフがここで目を覚ますとゴチャゴチャと事が面倒になってしまいそうだ。

 騒いでまた俺の命を狙ってくるか、或いは逃げ出そうと暴れるかもしれないのでマリを守ろうとする隊長さんの態度は間違っていないと言えるか。


 このエルフの狙いが俺に対する「人質」を狙ってマリを襲うなどと言った事もあり得るかもしれないのだから。


 隊長さんにもこのエルフの「恨み節」は聞こえていたはずだ最初に。

 ならばそう言った危険性を考えてのマリの壁になる動きであれば、この隊長さんそこそこに優秀である。


「ベラ、追加で良いか?こいつが冷静な判断をせずに暴挙に出た際には殺して貰えるか?」


「ふむ、こやつはアレだろう?ハイエルフだろう?珍しい。そんな存在と知り合って、しかも恨みを買うなどと。やはりお前は面白おかしいな。」


「何その評価・・・ベラ、お前、俺を何だと思ってんの?」


 ベラに「エルフ殺し」の罪を擦り付ける為にそんな事をお願いしたのだが。

 しかしそのベラは俺のそんな思惑など全く気付いていない様子でそんな事を言い始めた。

 持ちろんそれにツッコミは入れたが、大事な事はそこじゃ無かった。


「と言うか、何?ハイエルフ?え?ファンタジー極まるな、それは。おお、そう言えば聞きたかったんだけどなベラ。エルフって魔法使えるの?精霊と仲良しとか、或いは契約とかして精霊の力が使えるとか無い?」


「ふむ、こやつはかなりの使い手と見受けるが?まあ我には勝てぬだろうが、そこそこに楽しめそうだ。」


「評価の仕方が良く解んないんだよお前。で、それって使えるって事か?精霊が。」


「ふむ、風、木、水、あと土を少々、かの。今見えている精霊はその程度か。」


「ほっほー?なるほどナルホド。その精霊と俺ってお話できたりしない?その方法とかは?」


「無いな。我の目は特殊だ。だから見えるが。今お前に見えていないのであれば交流は難しいと思え。只人が精霊と交信できるとしたら、ソレは生まれが特別か、或いは生まれ持って来た資質か、或いは死ぬ目に遭う様な鍛錬、修行をした者くらいだろう。」


「なあ、その修行の内容って?」


 怖いモノ知りたさでそんな質問をする俺。ここで隊長さんの方を見るとちょっと引いている。

 ベラを不気味な対象と捉えたのかもしれない。何でそんな事をこの少女は知っているのか?と。


 見た目が子供でも中身は年月を、歳月を重ね続けて来た正真正銘の化物である。そのくらいの知識があっても当然ではあるのだが。


(まあこの見た目で一瞬でソレを看破しろと言うのは無理だろうからな)


「言葉通りだぞ?それこそ死ぬ目にあう。と言うか、生き残れる者はおらんだろ。我の知っている中で、そうだな、一人くらいだぞ?それでも水の精霊との交流が出来る様になったくらいでな。ああ、風を読む、程度は普通の只人でも出来るか。それは風の精霊が見える様になった訳では無く経験を重ねて来たから、と言った事だろう?水流を読む、と言った事も海ではできる漁師が居るだろうが、ソレも経験則と言った所だな。修練、修行はその程度の事では収まらんからな。それこそ死ぬ前提の内容が中心だ。それだけ「死」に近い場所に立たねば、只の人程度には精霊は見る事も叶わんのだ。憐れよ。ソレで何人が死んでいったか。観察していた我は途中で哀れを通り越して笑いに変わる程だったぞ?」


「・・・それでも一人いたのかよ・・・」


 ベラの説明でヤバい修行である事は分かった。しかしそんな過酷と言う言葉が裸足で逃げ出す修行でも、奇跡と評しても良いだろう一人が現れたのだから冗談話でも何でもないのだろう。


「ま、まさか、ソレは「聖人」・・・」


「うん?」


 いきなり隊長さんが驚きながらパワーワードを口にした事に俺は一瞬「またラノベか」と思ってしまった。

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