21.真実が明らかに…②
まずはリラに自分の正体を打ち明けて謝りたい。責められても受け入れる覚悟は出来ていた。
「リラ、実は――」
「コッケコッコ、コケコッコー!」
「えっ?なによく聞こえないわ、イーライ」
リラに抱かれている鶏が私の声に被せて、けたたましい声で鳴き始める。
相手は鳥だから仕方がない、どこかの誰かみたいにわざとやっているのではない。
たまたまタイミングがあってしまっただけ、そんな偶然はあるだろう。
そう自分に言い聞かせる。
「リラ、今まで黙っていたんだが――」
「コッケーーーーコッコーーー」
「ごめんなさい、やっぱり聞こえないわ」
くそっ、こいつも腹黒なのか!
わざと被せてきているとしか思えなかった。
なぜ私の周りにはこんな鶏やひよこばかり出没するんだ…?
なにか私に問題があるんだろうか。
――その答えを知りたい。
「人が話す時に邪魔をしたら駄目よ。今度また同じことをしたら焼き鳥の刑にしちゃうわよ、ふふ」
「コッケ…」
リラが笑いながら脅したら鶏は大人しくなった。
「この鶏とてもいい子でしょう。連れてくる前にいろいろと話して聞かせたのだけど、飲み込みが早いのよ」
「いったいなにを聞かせたんだ……」
知ってはいけない気もしたが、恐る恐る聞いてみた。
「世の中を生き抜く術と対人関係における心理的駆け引きとかよ。鶏社会でも役に立つと思って」
「…もしやひよこ殿下にもそれを教えたのか?」
もう確信しかなかった。
「ええ、二人だけの時にたくさん話したわ」
――知りたかった答えはあっさりと見つかった。
……原因はリラだったのか……。
そうだった、あのひよこ殿下だって離宮に来る前は少し我儘だが無邪気な賢いひよこだったと思い出す。
この鶏もリラに会うまでは賢いだけの無害な鶏だったのだろう。
私が全部悪いと思っていたが、そうでもなかったようだ。
意外な真実が明らかになったが、これは私だけの胸に秘めておこう。指摘したらリラは大喜びして獣使いになると言い出しかねないから。
とりあえず鶏が静かになったので良しとする。
「リラ、大事な話がある。私は本当はイーライ・ゴサンではなく、この国の第二王子であるイザクなんだ。今まで身分を偽っていてすまない」
単刀直入に話すことにした。回りくどい話し方をして誤解されるのを避けるためだ。
「イーライがイザク殿下?ではひよこ殿下がイーライなの?それならこの鶏はエレン・ゼイロなのね!エレン様の面影があるなって思っていたの、これで納得だわ」
いや、もういろいろおかしいから…。
納得などしないで欲しい。リラの認識は最初しか合っていない。
「コッケー!」
「黙れっ、エレン」
つい取り乱して鶏を従者の名で呼んでしまった。『すまない、エレン』と心のなかで本物の従者に詫びておく。
「エレン様、静かにしないと焼き鳥にされますよ」
「コッ…」
「いや、それ違うから…」
リラの言葉に鶏は絶妙なタイミングで返事をする。自らエレンだと名乗っているようなものだ。
私の真実を告げる声には誰も耳を傾けない。
なんだか変な方向に会話が進んでいく。
私が伝えたかったことは、こんなことではないはずなのに…。




