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呪われた姿が可愛いので愛でてもよろしいでしょうか…?  作者: 矢野りと


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18.ひよこ殿下の自白

どうやら怒らせてはいけない人物を怒らせてしまったことをひよこは理解できたらしい。


「ぴぁぴぃ、ぴっぴろよ!(イザク様、なんでも聞いてください!)」 


ひよこは直立不動の姿勢で私が質問するのを待っている。

神経が図太いだけではなく変わり身が早い。いや、そんな性格だから切り替えが早いのか…。


どちらにしろ、尋問がスムーズにいくならば問題はない。だが思わずため息とともに心の声が漏れ出てしまう。


「はぁ…。誰だ、コイツをこんな風に育てたのは…」

「生まれたてのひよこを拾って面倒を見ていたのは殿下です」


主従関係に忖度することなく事実を述べるエレンは、まさに臣下の鑑だろう。

だがこれだけは言わせてくれ。


「お前も可愛がって面倒見ていたよな…」

「……はい、同罪です」



隣国から帰国する途中、行き倒れていたひよこを拾った。

ガリガリの体と『ピ‥ヨピヨ…』というか細い声に庇護欲を掻き立てられ『もう大丈夫だぞ』と懐に入れて連れ帰る。そして元気になっていくのが嬉しくてつい私とエレンは甘やかし、…その結果こうなった。


――腹黒ひよこをこの世に誕生させたことを、心から反省している。


落ち込む私達に向かってひよこが元気に囀る。


「ぴぉぴぁ~い(どんま~い)」

「「お前が言うな!!」」

「ヒィッ…」


私とエレンは二人揃って同じ言葉を返す。ひよこ語は理解できないが、なんとなく返す言葉はこれしかないと直感で分かったからだ。



――時間を無駄にしてしまった。


こんな事をしている場合ではない、早く詳細を把握してリラに会いに行かなくては。

気を取り直し尋問を始めることにする。


「リラとエレンがすれ違うようにわざと仕向けたのか?」

「ぴぅん!(うん!)」


ひよこは元気に囀って、【はい】の文字をトントンッと叩く。


「リラが使者の言葉を誤解していたことも知っていたのか?」

「ぴぅん!(うん!)」

「エレンに託した私の手紙がなくなったようだが、それにも関与しているのか?」

「ぴぅん!(うん!)」


トントントントンットントンッ……。


迷うことなくひよこは【はい】を連打し続ける。


――ひよこは腹黒どころか真っ黒だった。



私の質問に答えるだけでは物足りなくなったのか。

自ら文字盤の文字を高速で指し示し、どんな事をしたのか、リラはどのように誤解したのか詳細に語り始める。

途中でエレンやリラの役になりきって一人芝居まで取りいれる始末だ。

意外なことにひよこの演技はお世辞抜きで上手かった。


だが完全に自分の演技に酔っているひよこに、反省の色は微塵も感じられない。


そして全て伝え終わたあと【お・し・ま・い】とリズミカルに文字盤を叩き、満足げにお尻をふりふりする。


 おいっ、自分の置かれた状況を思い出せ!



私と一緒にひよこ劇場を見ていたエレンがそっと耳打ちしてくる。


「…イザク殿下。私は本気で料理長に引き渡したくなってきました」

「奇遇だな、私もだ」


私とエレンの意見は一致した。

それはそうだ、ひよこは全く反省していない。

それどころか都合の悪い部分を忘れて、今の状況を目一杯楽しんでいるところがなんとも小憎らしい。


「唐揚げでお願いしますか?」」

「いや、それよりは香草と一緒に丸ごと蒸してから焼き目をつけたほうがいいだろう。料理長の得意料理だからな」


もちろん普段は鶏を使っているが、……ひよこでも問題はないだろう。



ひよこはまだ文字盤の上で無邪気に踊っている。私達の話は全く聞こえていないようだ。


トントントンッ!


私達の注目を引こうとひよこが文字盤を連打してくる。


「どうした、最後に言い残すことがあるのか?」


私は物騒な言葉を口にするが、ひよこはその意味に気づいていない。


「ぴぴぇぴぇー!(見ててー!)」


ひよこは囀ってから文字盤の上をゆっくりと歩き、文字を一つずつ指し示していく。もちろんお尻をふりふりしながらだ。


【イー・ラ・イ・だ・い・す・き、エ・レ・ン・も・ね】


自分の気持ちを伝え終わったひよこは、私の胸に飛び込んで甘えて来る。


 まったく、仕方がない奴だな。


こういう素直なところがあるから結局は許してしまうのだ。


「今回だけは特別に許してやる。だがちゃんと反省しろ、二度とやるなよ」

「ぴよぅ!(うん!)」


食料にされないと分かって嬉しいのか、私の頭によじ登って毛づくろいを始める。感謝の気持ちを行動で表したいのだろう。

痛い目にあって少しは成長したのかと思うと、育ての親としては喜ばしかった。


ツンツン、ブチッ…ブチッ!


随分と雑な毛づくろいで、髪が引っ張られてパラパラと抜け落ちていく。 


「ぴぁ、ハゲぴっけ(あっ、ハゲ見っけ)」 


違うっ、お前が今まさに作ったハゲだ!


「黙れっ、ひよこ」


――意思の疎通は無駄に完璧だった。


似たようなやり取りを以前もしたことを思い出す。結局、ひよこはなにも変わっていないし、成長もしていなかった。



私の頭に現在進行形でハゲを作っているひよこを捕まえ、近くにいるエレンに投げ渡す。


「エレン、あとは任せた。そいつは煮るなり焼くなり蒸すなり好きにしろ。私はこれからリラに会いに行って来る」

「はい、承知いたしました。()()()()()()()をご用意して、良い報告をお待ちしております。イザク殿下」

「…‥ぴ‥ぽ?(…‥う‥そ?)」


エレンが悪い顔をしながらそう告げてくる。

ひよこにお灸を据える為にも、ここはエレンに合わせておくべきだろう。


「期待して待っていてくれ。美味しい()()()()()を楽しみにしている」

「ピギェーーーーー(いやーーーーー)」


エレンと絶叫するひよこ殿下をその場に残して、私はエール伯爵家の屋敷へと急いで向かうことにした。


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