保健室にて
俺の処方は湿布とサポーターで終わった。それでも仰々しいと思うが。むしろ橘先輩の方が部屋入った時に盛大な咳をしていたから、そっちの方が治療したほうが良かったのでは。なんか大丈夫とか言ってたけど。
保健室の先生は和泉先輩が保健委員だからと言って、全く安心し任せっきりにしてそそくさと保健室を出て行った。しかも、次の授業の先生に言付けをしてくれるのはありがたい。さすが大人は空気が読めるようだ。
体調不良の生徒がベッドに横になっているとか、ヤンキーな生徒がさぼりに来ているとかはなく、男子二人女子二人が丸イスに車座で無言になっていた。なんだ、このダブルデートもどき。それよりも先輩たちの話しに俺が首を突っ込むわけにもいかない。となれば、俺はせっかく遅れる報告をしに行ってくれた先生には申し訳ないが、あとを追うように移動した方がいいだろう。と思って立ち上がると、
「真白がいない方がいい話か?」
早瀬さん、余計なことは言わないように。ほら先輩たち困っているじゃないか。そして、俺を見ないで下さい。俺には何の要求とかの権利もないんですから。
「えっと、気に障らないようであれば、ね、美和ちゃん、さっきのこともあるし」
和泉先輩が橘先輩に確認をする。教室の声掛けもそうだったが、どうやら橘美和先輩は人見知りか、無口なのだろう。あれ? なら……。橘先輩は俺を逡巡したまなざしで見つめた後、やはり黙って頷いたことで、俺も話とやらに加わることになった。