早瀬晶
かっちりとした髪型と銀縁のメガネがなお一層とっつきにくい印象を持たせて周りが距離感詰められないんだよね。
ちなみに、この人は留年している。だから、実質的には俺の一年先輩ということになる。だからと言っておつむがアレとか素行不良ということではない。素行が……不良ではないのだが、その、アレなのである。列挙に事欠かないくらいに。
ある日の英語の授業、指名されて黒板へ。つらつらと板書を始めましたよ、漢文で。ちなみに、先生の解説もノートに漢文で書いていた。
とある数学の授業、これまた指名されての板書時。正答の一番最後から書き始める。分かりづらいよな……そうだな、完答を逆再生しているといったらどうだろう。句点↓た↓し↓ま↓明↓証……といった感じ。普通に「証明しました。」の順で書けばいいようなものを。
こういうことを実際に目の前でやってんだよ。一体この人は何がしたいんだろうね。思考体操? とか言っていたような、いないような。
今日もほら、教師さんが黒板に板書させようと、その日の日付に関係ある出席番号を探そうと学級名簿を見て、絶句するならまだましな方で、
「ゲッ」
ベテラン教員が決して発してはいけないような一言を吐いたくらいだ。何をしでかすかしれない。
つまりは、不思議というよりも「不思議ちゃん」と呼ぶほうが適当なのだ。ところが。そんな早瀬さんをお茶ら桁ニックネームで言ってられない一騒動に俺は巻き込まれてしまった。あれはそう、数日前のことだった。