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【完結済み】押し倒されたら異世界で聖女になってました。何故か勇者な彼に邪険にされるわ魔王に求婚されるわでうまく行きません(>_<)【後日談完結】  作者: monaka
最終章:女神への願い。

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第46話:終幕と犠牲者。


「私はいったい何を見せられているんだ」


 ふとそんな声が聞こえて、唇を重ねたままチラりと視線を動かすと……。


 そこには、腕組みして眉間に皺を寄せたラスカルが立っていた。


「うわーっ!! い、いつから居たの!?」


「覗きとは趣味が悪いな」


「ふん、ついさっき来たばかりだ。どうやら間に合わなかったようだな……しかし、上手くやったようだ。よくやったぞユキナ」


 ラスカルは優しい笑顔で僕に歩み寄り、頭を撫でてくれた。


「えへへ……僕、頑張ったよ」


「ああ、分かっている。よく頑張ったな」


 ラスカルの優しい手に急に力がこもったかと思うと、まるでクラマから僕を奪い取るように抱き寄せられて……。


「っ!?」


「……ふふ、これでイーブンだな勇者よ。私はまだ諦めるつもりはないからな」


 き、き、キスされた!

 ラスカルにキスされたーっ!!


 心臓爆発するかと思った。

 好きだって言われた時だってびっくりしたけど今の不意打ちは卑怯だって……。


「貴様……俺のユキナに何をしやがる……!」


 クラマが露骨に怒りを露わにして、今にもラスカルに切りかかりそうだった。


「ふっ、そんな折れた剣で私が殺せるものか馬鹿め」


「殺す!」

「やれるものならやってみろ!」


「やめてっ!!」


 僕の叫びに二人とも睨み合って、やがて諦めたように剣と拳を収めた。


「……二人とも、ありがとうね。でもごめん……先にもっごを、ちゃんとした所に埋めてあげなきゃ……」


 そうだよ。急にキスなんてするから頭真っ白になったけど、そんな場合じゃない。

 もっごは僕の為に犠牲になったんだ。

 今僕は誰よりももっごの事を考えてあげたい。


「うむ、確かに早めに埋めてやった方がいいだろうな」


 ラスカルの声は随分と軽くて。

 僕はなんだか悲しくなってしまった。


「ねぇ、魔王ってさ……魔物一人の命なんてやっぱりどうでもいいの?」


「何を言っている?」


 ラスカルはあまりにあっけらかんとしていて、さすがにクラマも彼に対して冷ややかな視線を送った。


「だって、もっごが死んじゃったんだよ……? 頑張って回復魔法かけたのに……それでもダメだったんだ……どうして君はそんなに平気そうなの?」


 魔物とうまくやれると思ったのは間違い?

 人間と魔物じゃやっぱりどこか意識にズレがあるのかな……。


「だから何を言ってるんだ。ユキナがしっかり回復魔法をかけてくれたからこの程度ですんでるんだろうが」


「……死んじゃったら意味ないじゃんか!」


 もう怒った。

 どうして分かってくれないの?


「別に死んでないが?」


「ラスカルにとってもっごってその程度の存在だったの!? って、……え?」


「だから、別に死んでないが?」


 嘘だ。だって完全に穴開いちゃってるし、反応無いし、全然動かないし……。


「こいつは木だぞ? 回復魔法で傷は塞がっているが人間ほど細胞の動きが早くないんだ。活性化させた所で一昼夜くらいはかかるだろう。早めに栄養価が高い土に埋めてやれば回復も早まるだろうが」


「……それ、マジ?」


「私は嘘はつかないぞ」


 僕はその場でラスカルに土下座した。


「な、なんだいきなりっ!? 顔を上げろ! まるで私が悪い事したようではないかっ!」


「いや、どう考えてもお前が悪い。この場で死ね。死んで詫びろ」


 クラマがここぞとばかりに無茶苦茶言ってる。


「ごめんよぉ……ラスカルの事信じきれなかった……ごめん。僕なんてダメでカスでボケでバカでおたんこなすだよ……」


「お、おたんこなすはよく分からんが、もっごが死んだと思っていたのなら仕方ない。私も先に無事だと言うべきだった。てっきり分かっているものだとばかり」


 僕の肩を掴んで顔を上げろと言ってくれたラスカルは、やっぱりとても優しくて。


 僕が憧れていた魔王とは少しだけ違うけど、最高の魔王だと思う。


「君が魔王で良かった。ラスカルは、最高の魔王だよ」


「……と、とととと当然だ。ユキナもやっと私の魔王らしさに気付いたようだな!」


 照れて顔を真っ赤にしてるラスカルもやっぱり可愛い。


 本当にごめんね、もう絶対に疑ったりしないから。何があっても。


「じゃあ、帰ろっか」


「俺達の勝利を皆に伝えてやろう。あの女神にもな」


 立ち上がった時にちょっとだけフラついた僕をクラマが支えてくれた。


 女神様、か……願いを一つ叶えてくれるって言ってたよね。

 何を叶えて貰おうかな……。


「では転移魔法で帰るぞ」





「うえぇぇぇぇぇ……っ!! おろろろろ……」


 毎回のごとく僕は頭ぐっちゃぐちゃになってのた打ち回った。

 シャドウを滅ぼした達成感ともっごが無事に復活するって話を聞いて油断しきって忘れてた。


 つい抱えていたもっごに……。


 その日は城に帰るなり即お祭り騒ぎになりそうだったけど、さすがに疲れ切っていてそのまま眠らせてもらう事にした。

 詳しい話は明日に回そうって事に。


 翌日の朝、無事に復活したもっごにクラマとラスカルはあまり近寄ろうとしなかった。


「な、なんだなんだ? あの二人はどうしたってんだい」


「な、なんでもないよ……気にしない方がいいって。ね?」


 もっご、いろいろごめんだよ……。

 でも世の中には知らない方が良い事ってのがあるんだよ。



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