第22話:やったね!なかまがふえるよ!
「えっと、カーシュラ、君って……なんで隔離障壁の外にいるの……?」
「それは簡単だ。私が外にいる間に街が隔離されてしまってな。中に入る事も出来ず外で暮らしている」
「えっ、かわいそう……」
外に出かけている間に隔離されちゃって家に戻れないっていうのはさすがに辛いだろうなぁ。
「別に家など寝る為以外の意味は無いから気にしていない。食い物も全て外で手に入るし、風呂は川や湖でどうとでもなる。なんなら魔法で湯を溜めればいい」
えっ、お湯を出すのって僕結構苦労したんだけど……。
「カーシュラは魔法も結構使えるんだ? やっぱり凄い戦力になるよ! 是非仲間になってほしいな!」
「あぁ。それは構わないし私の事はシュラでいい。……お前らは聖女と勇者だろう?」
「聖女と勇者ぁっ!?」
急に切り株さんが大声を出してガクガク震えだした。
「怯えなくて大丈夫だよ。さっきも言ったけど僕は君に危害を加えたりしないし、出来れば友達になりたいな。ダメ?」
「えーっ、えぇぇーっ??」
切り株さんはどうしようか迷うように大きな眼をキョロキョロ動かしてカーシュラと僕を交互に見る。
「こいつらなら大丈夫だろう」
「わ、分かった……じゃあ友達に……本当に魔物のおいらでいいのか?」
「何言ってんの。魔物だからいいんじゃん♪ これから宜しくね♪」
すごいすごい! 旅に出て初日でビーストテイマーと魔物一人仲間になった!
「じゃあとりあえず次の街目指してしゅっぱーつ♪」
何が凄いってさ、シュラはすっごく体力あるみたいでいくら歩いても疲れた感じまったく見せない。
クラマもそうだけどね。
しかも魔法も使えて魔物も使役できるし完璧超人みたいな人だ。しかも顔もいい。声もいい。
うわーなんか僕今ハーレム状態じゃない?
って言ってもシュラは僕にあまり興味ないだろうけど。
でもどうしてあっさり仲間になってくれたんだろ?
「嬢ちゃん、座り心地はどうだい?」
「うーん、さいこーっ♪」
「そりゃあ良かったぜ!」
そうそう、僕は歩くの疲れちゃったから切り株さんに乗って移動してる。
ちゃんとあまり揺れないように気を付けてくれるし、スピードもクラマ達に合わせてくれてるとってもいい切り株!
「切り株さんウッドバックっていうんだよね?」
「それはおいらの種族名だぜ。おいら達にいちいち名前なんかねぇよ」
「え、そうなの? じゃあちゃんとした名前考えてあげるよ♪」
「マジかよいいのか!? おま、魔物に名前付けるって意味分かってるか!?」
……?
切り株さんに揺られながらクラマの顔を見上げると、首を横に振る。
それを見かねたのかシュラが教えてくれた。
「魔物に名前を付けるという行為その物がある種の契約のようなものなのだ。私はあえて固有名詞は付けずに種族名で呼ぶ事で相手の自由をある程度尊重している。名前を付けるという事は自分の従者として契約し、対象を縛る行為でもある」
……契約、かぁ。
「僕は切り株さんの自由を奪いたいわけじゃないからやめとく?」
「い、いや。おいらはお嬢ちゃんにならいいぜ。むしろ名前付けてくれるなんて嬉しいしよ。でももう一回だけ聞くぜ? おいらでいいのかい?」
うーん、どうしようかなぁ。
「や、やっぱり嫌、だよな……忘れてくれ。気にしなくていいからよ」
「もっご! 今日から君はもっごだ!」
そう叫んだ瞬間、突然お尻の下が発光した。
というかもっごが光った。
「い、今のなに?」
「契約が完了した合図だ。聖女の身体のどこかに契約の印が現れている筈だ」
「えー、身体のどこかってどこ?」
少なくとも見える範囲には無かった。
服の胸元を引っ張ってみたけど胸周りにもないみたい。
「「お、お前は何をやっているんだ!」」
なんかクラマとシュラが同時に同じ言葉を叫んだ。
「君達仲良いね」
そう言うと二人とも顔を合わせてなんだか気まずそう。
「こっちかな?」
お腹の所をぺろんと捲ってみると、おへその下あたりに何か妙な模様が入っていた。
「見付けた! ねー、ここにあったよ!」
「「……」」
「ちょっと、見てってば!」
クラマとシュラは二人ともこちらを見ようとしなかった。
ちぇ~っ。せっかくカッコいい感じの模様入ったから見てもらいたかったのに。
「いいもん見てくれないなら後でリィルにでも見てもらうから。いでっ!!」
クラマが無言で僕の頭を叩いてきた。
「……恥ずかしい事をするのはやめろ」
「じょ、女性が気軽に肌を見せるのはよくない」
なんだ、二人とも恥ずかしがってるだけだったのか。
確かに男二人女一人だったら僕はもう少し気を付けないといけないかもね。
もうクラマだけじゃないんだった。
「お嬢ちゃん……おいら、もっごって名前なのかい?」
お尻の下からもっご。
心なしか一回り大きくなったような感じがする。
「うん、嫌だった?」
「……もっご、もっごか。嬉しいぜ……こんなおいらでもお嬢ちゃんの役に立つからよ! これからもよろしくな」
「あーかわいい! もっご可愛いよもっご!」
「よせやい照れるぜっ!」
「はいよーもっごーっ♪」
まるで馬にでも乗る気分でもっごの枝をぎゅっと掴んで操作するフリ。
「ぬお゛っ……」
「……今なんか凄い声出たけど大丈夫……?」
「お嬢ちゃん……頼むから、その枝は触らんといて……」
「ご、ごめんね……?」
よく分からないけどあまりに切実な声だったのでそっと手を離した。




