第一章、⑨
「これは何?」
金色に輝く小さな四角の物体。
「夏王が持つ玉璽」
「玉璽?」
「王が持つ印鑑のことです」
「本当?」
「・・・多分」
「ホント頼りないなあ」
「すいません」
室内は光が消え、ランプの灯りのみとなった。
闇の中の静かな空間がシスコに落ち着きを戻す。
広いその場所は不思議と懐かしさと共に気持ちが和らぐ。
「・・・あ!ユン師、戻らなくっちゃ」
シスコは我に返った。
「多分、大丈夫ですよ」
意外にもモエは冷静に言う。
「・・・また、多分・・・何で?」
「それは媛が持つ玉璽が、相手の目的でしょうから、その達成までは手荒なことはされないでしょう」
「・・・元々そういう流れ?」
「ええ、前倒しになりましたが」
「そういうこと」
「それに、姉が相手にやられるような事は、まずないでしょうし」
「まあね」
シスコもそれは分かる。
「でも、相手って」
「夏王朝の象徴である玉璽を狙う者でしょうか」
「敵ってこと」
「そうですね」
「モエ、いまだに私、訳が分からないんだけど・・・」
「はい、おいおいと」
モエはにこりと笑う。
「それに結局、私のことを媛って呼ぶのね」
「はい。私たちの媛ですから」
「・・・はあ」
シスコは大きく溜息をついた。
「とにかく媛は玉璽を絶対守ってください」
「・・・納得してないけど、わかったわ。やってみる」
2人は地上へと続く階段をのぼる。