第一章、⑥
「着きました」
「えっ」
目の前に巨大な石の扉が現れた。
その扉には文字が描かれているが、シスコには全く判別不能だった。
「ここに書かれてあるのは、古代文字で扉の開閉の仕方」
「ちょっと待って、モエ」
シスコは階段を降りるまで巡らしていた思いをぶつける。
「あなたが私の従者でなく、この地の領主の娘だったことは分かった。なんで、そんな大事なことを私に・・・」
モエは笑った。
が、無理に笑うその顔は物悲しくみえる。
「出来れば、このままでいたかった・・・でも、もう遅いのです・・・はじまってしまったから」
「・・・・・・?」
「この時を待っていました」
モエはぽつりと呟いた。
シスコには分からない。
「それから隠し事がもう一つ」
モエの今度の笑顔はいたずらっぽい笑顔。
「?」
「ユンは私の姉です」
「えっ!」
容赦なく聞かされる衝撃の事実。
「秘密ばっかり」
シスコは頬をふくらませる。
「そうですね、すいません」
モエはくすりと笑った。
「ついでに・・・」
「まだあるの」
「この扉に手をつけてください」
「・・・はぁ」
シスコは溜息をつきながらも、モエの言う通り扉に手をおく。
「違います。こうです」
モエは手を広げてみせる。
「こう?」
「こうですけど、ここじゃなくそこです」
モエは扉の中心部を指さす。文字ばかり書かれた扉だが、その一部だけ何も書かれていない。
「もう・・・そういやそういうとこユン師に似てるわね」
シスコは手を広げ、その場所に手を置く。
「そうですね」
モエは屈託なく笑うと目を閉じた。