表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/39

エピローグ②


 日本へ。

 シスコは船上の人となった。

 地平線を飲み込むような膨らんだ入道雲に照りつける太陽。

 乱反射する海の景色。

 シスコは甲板にあがると、外のあまりの眩しさに目を細めた。

 船首に近づくと、波を切って進む船の波飛沫をしばらくじっと眺めていた。


「お姉ちゃん、ここにいたんだ」

 同じく日本へ帰るトラマツが声をかける。

「うん」

 シスコの視線は波間をとらえたまま動かない。

 トラマツはそっと彼女の隣へ近づいた。

「さみしいの?」

「だね」

 シスコは翳りある笑みを浮かべる。


 香港での日々、モエとユンとの思いで、かけがえのないもの。

 トラマツはそっと手をさしだした。

「僕がいるよ」

「・・・生意気言っちゃって」

「へへ」

 トラマツは笑った。

「でも」

 シスコは彼から差し出された手をしっかり握り返した。

「ありがと」

 柔和に微笑み返す。



 その時、大きな悲鳴があがった。

「何事っ!」

 二人は悲鳴のあがる船内へ降りていく。

 その場所はサロンだった。

「私っ!私の!ダイヤがっ!」

 年配の婦人が形相を変えて、叫び散らしている。

(私の出番だ!)

 

 シスコは颯爽と婦人の前に現れた。

「どうしました?」

 彼女は優雅に尋ねる。

 が、小娘に尋ねられた婦人は、妙な顔を見せるが話を続ける。

「私のダイヤが無くなったの」

「ほう」

 シスコは彼女のスカートの下に光る物を見た。

「誰かが盗んだのよ。きっと!」

 シスコは自分の鼻先と唇に人差し指を近付け、婦人に沈黙を促した。


「・・・・・・」

「すでに事件は解決しました!」

「ほんとう?」

 婦人の目が輝く。

「ええ」

 シスコは大きく頷いた。

「奥様、スカートの裾を少し揺らしてください」

「?」

 婦人はシスコの言う通りスカートを激しく揺さぶった。

 ぽろり何かが落ちた。

 床に転がるは、光るダイヤだった。

「あっ、あった!」

 婦人は自分の独り相撲に赤面する。

「これで落着」

 シスコは身を翻し、静かにその場を後にした。


 再び甲板へとあがるシスコとトラマツ。

「はあ」

 シスコは溜息をつく。

「どうしたの」

 と、トラマツが聞く。

「なんだかね~」

「退屈なの?」

 トラマツが尋ねる。


 刺激的な香港での日々、それに代わるものなんて、この先にあるのだろうか、シスコはそう思う。


 男の叫び声があがる。

「いたぞ!」

 黒服の男達が二人へ迫る。

 シスコはくすりと微笑む。

「まだまだ、楽しめそうね」

 シスコとトラマツは手を繋ぎ駆けだした。

 物語ははじまったばかりだ。


 のち、シスコとトラマツは結ばれることになる。

 それは、また別のお話。

 シスコの物語は続く。


                        完



 航海日誌


 ここは現在。

 先日、母方のシスコばあちゃんが亡くなった。

 御年99歳という大往生だった。

 近年、ばあちゃんは病院に入院していた。

 訪れる度に笑顔を見せてくれたばあちゃんを覚えている。

 具合が悪くなっても意固地に酸素マスクをつけようともせず、最後まで気丈に過ごし逝った。

 きっと、むこうでトラマツじっちゃんと出会えたことだろう。

 いろんな積もる話をしているんじゃないだろうか。

 ばぁちゃんは幼い頃、徳島県から香港に移住し、両親はお金持ちだったらしい。

 母から聞いた話だと、屋敷にはお手伝いさんがいたほどらしい。


 ばあちゃんは耳が悪く、聞こえが悪かったので耳元で大きな声でゆっくりと話す。

 私はそれが億劫で、一度くらい若い頃の話を聞きたかったと思いながら言えなかった。

 ばあちゃんの静かに眠る姿を見て、私は後悔をした。

 聞けば良かったと。

 きっと、ばあちゃんは嬉しそうに話してくれただろうにと思った。

 激動の100年を生きたばあちゃん。


 何か感謝を込められるものはないか、そう思って書いてみた。

 出来あがったものは、なんだか突飛なお話となったけど・・・。

 ありがとう。




 さて、この作品は過去作です。

 ばあちゃんの事を思って書きましたが、中二病全開の拙作となってしまいました。

 確か、なにかの賞に応募しました。

そのさい、読んでいただいた担当の方から、便箋で酷評されたのを思いだします。

 悔しくて、部屋に貼っていたなあ、その便箋・・・。

 だいぶ、前の話です。

 確かに拙い・・・でも書きたかった。

 そんな拙作なのです。

 シスコの物語、読んでいただき感謝です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ