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エピローグ➀
シスコの奮闘もむなしく、父親の経営する大会社は潰れてしまった。
明日、ここ香港を離れることになる。
彼女は屋敷の跡地で、モエとユンと三人で並んでいた。
今は草ばかり生い茂る荒地だが、懐かしい思い出の場所。
三人は黙って眺めていた。
「モエ」
「はい」
振り返るモエにシスコは、そっと首に玉璽をかけた。
「これは?」
「あなたが持っていて」
「いけません。これは夏の王女である証」
「私はいらない」
「媛!」
「だって・・・」
シスコは笑った。
「私は日本に帰るんだよ」
「・・・媛」
「ねっ、お願い」
長い沈黙があり、ようやくモエが口を開く。
「分かりました。これは預かっておきます。でも、いつの日か」
「うん、きっと」
「いつの日か、その時が来たら、お返しします。必ず受け取ってくださいね」
「必ず」
シスコはそっと手をさしだす。その手に手を重ねるモエとユン。
「いつか、きっと」
三人の思いは同じだった。




