第三章、③
少しのインターバルを置いて2回戦がはじまる。
次のシスコの相手は、不沈艦の異名を持つアメリカ人のジェフ。
彼の体躯は見事に丸々としており、超ふとっちょであった。
「ふへへっ、お嬢ちゃん。さっきは運よく小僧に勝ったようだけど、今度は相手が悪すぎる。さっさと負けないと大けがするぜ」
ジェフはまさに噛ませ犬的発言をする。
「ご丁寧にどうも」
シスコは律儀に挨拶をする。
「はじめ!」
審判の開始の声が響く。
「礼儀正しいお嬢ちゃんに大サービスだ。今から5回、お前さんに攻撃を許してやる。それで俺の強さが分かるだろう。分かったならさっさと舞台を降りてくれよ」
「・・・それはどうも」
シスコは身構えた。
ジェフはだらりと両手をさげ突っ立っていて、クイクイと手招きをして誘っている。
「では、いかせていただきます。こほん」
シスコは咳払いを一つすると、ジェフへ向かっていった。
丸々膨らんだ、そのどてっ腹に右拳の一撃。
「い~ち」
ジェフは表情を変えずカウントする。
彼女は右足の蹴りをもう一発腹にお見舞いする。
「に~」
それから顔面に強烈なかかと落とし、ジェフは少し身をかがめ額で受け止める。
「さ~ん」
にやりと笑うジェフに、シスコは、くの字に曲がった裏膝目掛けてローキックを一閃する。
巨体がよろめくが、
「よっ、よ~ん」
なんとか耐えた。
シスコはすっと飛び上がり、バランスを崩したジェフの首筋に延髄切りをしかける。




