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第二章、②


 少年トラマツはその場にいた。

 すらっとした細長の身体に、年に似合わず愁いを帯びた表情をたまに見せる。一見すると、クールな感じだが、じっとみてみると温和にもみえる。

 そんな少年だった。


 ウエイター姿の給仕係トラマツは、シスコと擦れ違った。

 強い瞳の力、自分好みの整った顔立ちの彼女に彼は思わず見とれてしまい、その場からしばらく動けなかった。


 シスコはすっかり有頂天になっていた。

 憧れの場所に自分はいる。

 その喜びはひとしおだった。

 それが今、みんなの注目を集めているのならなおさらである。

 彼女は気をつけていた。

 決しておのぼりさんみたいに、きょろきょろ周りを見渡したりしない事、あくまでも気品高く。

 マニュアル本で読んだ通り、彼女は実行する。

 それにしても見るものすべてが、煌びやかで夢のような世界。

 彼女は胸の高まりがおさまらなかった。


「ほう」

 シスコは思わず一息ついた。

「お嬢さん」

 声がした。

 鼓動が激しくなる。

 きっとダンスの誘いに違いない。

 振り返るシスコの間に、トラマツは気になる彼女に給仕をしているフリをしながら間に割って入った。

「お飲み物は?」

「・・・・・」

「どけっ!小僧」

 シスコを誘った男は邪魔されたことに激昂し、トラマツを押し倒した。

 彼はもんどりを打って倒れた。

「なにするんだ!」

 トラマツは男を睨みつけた。

「うるさい!下郎!」

 男はさらに平手打ちをトラマツに一閃する。



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