第一章、⑪
しかし、その背後から甲高い声がした。
「いーんじゃないの。やっちゃいなよ。古の夏の者達よ」
長身で弁髪を結った男であった。
切れ長の男の目は、ただただ冷酷さを物語っている。
「くっ!」
ユンは躊躇する。
「姉さん!」
モエは駆けだした。
弁髪の男の一声で、タガが外れて襲いかかる黒ずくめの男達。
「光陰矢」
モエは両手に光を集め、光の弓や矢を現す。
光の矢をつがえると引き絞る。
「道を開けなさい」
男達の動きが止まる。
男達の躊躇した間隙をぬってシスコは走る。
「光破刃」
光の刃を出現させ、男達へむかっていく。
「当たると痛いだけじゃ、すまないわよ」
モエは十分に矢を引き絞ると放った。
光の矢は光陰と化す。
放たれた矢の軌跡に一筋の光の道が出来た。
その横をシスコは駆ける。
ユンは手刀で男を一閃、気絶させる。
「ふーむ、ヤラないんだ」
弁髪の男とユンは対峙する。
「光破剣」
ユンは光剣を出現させる。
「形勢逆転かねぇ」
男は薄気味悪い笑みを浮かべた。
「だけど、こいつの前ではどうかな」
男の背後には、ガトリングガンが鎮座してあった。
「しょうがないよね。お前たちが悪いのだから」
男はゆっくりと手をあげた。
と、同時にリボルバーが回転し、無数の銃弾が飛びかう。
シスコはユンに追いつき2人並ぶと、
「光破璧!」
と、叫んだ。
光の壁が無数の弾丸を遮断する。
「ふふふ、光の壁ねえ」
男は怪しく笑い、それからガトリングガンに向かい再び手をかざした。
「闇の弾」
男は言うと、左手をかざすと彼の身体からどす黒いオーラが流れる。
すると、放たれた弾が禍々しい黒いオーラに包まれ、光の壁に衝突する。
次第に光が闇に飲まれていく。
光の壁が耐えきれず破壊される。
シスコとユンは左右に飛び、闇弾をかわす。
「媛!ユン」
後方のモエは、ありったけの光を練り第二矢を放った。
矢は闇の弾の間をぬって、ガトリングガンに直撃する。
轟音をあげて大破する。
「ぬう」
男は唸った。
だが、間髪入れず、
「闇の爆撃!」
男は叫んだ。
上空の闇雲に身を隠し待機していた軍用機より、ナパーム弾が投下された。
「これで終いだ!夏の女たち」
「・・・」
苦々しく上空を見上げるユン。
「・・・」
モエはつがえた第三矢を落下するナパーム弾に放つも、男の巨大な闇の力によって光の矢はかき消された。
万事休す。
シスコは自分が知らぬ間に玉璽を両手に持ち、胸にあて祈っていた。
すると、辺りが発光すると、すべてが光に包まれた。
消える視界。
やがて、光の静寂、長い間。
気がつくと、辺り一面瓦礫の山、なにもかも無くなっていた。
そこに立っていたのは、シスコ、ユン、モエだけだった。




