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後編 俺の覇道を邪魔するなッ!

 この世界で俺の名前を知らない者はもはやいない。

 城内に現れた俺はすぐさま包囲された。

 俺を包囲した敵国の騎士団の団長らしき男が俺に言う。


「貴様は何者だッ! どこから入ったッ!」


 剣先を突き付けて脅迫しているつもりなのか?

 俺はすべてを話した。

 王であること、奴隷を得るためやって来たこと。


「これはこれは、王が自ら攻めてくるとは驚いたな。いったいどこから侵入したのかは知らないが、話しに聞いていた以上の大馬鹿者のようだ。貴様のような奴がどうして王の座を奪った?」


 団長らしき男は見くだすような目を俺に向けた。


「まあ、話しが早くて好都合だ。これで終わりにしてやる」


 団長らしき男は剣をゆったりとした動作で抜いた。

 俺に勝てると思っているのか?

 気に食わん。


「俺に従え」


 団長らしき男に命じた。すると今まで俺を馬鹿にし、ふんぞり返っていた男はすぐさま態度を一転させて、膝をつき(こうべ)を垂れた。


「そいつらを殺せ」


 仲間同士で殺し合う光景を見るのも一興だ。

 騎士団長らしき男はどうやら本当に騎士団長だったらしい。

 突然仲間を切りはじめた騎士団長に、部下たちはどうしていいのかわからず逃げ惑うしかなかった。


「どうされたのですかッ! 団長ッ……。どうして……」


 団長の攻撃は防ぐものの、やり返すことのできない騎士たち。長年信頼してきたらしい、団長に裏切られるのはさぞ悔しかろう。


 考えるだけで笑いが抑えられない。結局団長一人で、騎士たちを始末してしまった。白い大理石の広間は、あっという間に血の海とかした。この団長はそれなりに強いらしい。


「終わりました」


 はじめは白かった鎧やマントは仲間の返り血で真っ赤に染まっていた。


「よし。もういいぞ。仲間たちを弔ってやれ」


 そう命じた途端、団長は悲しみの咆哮を上げた。

 膝から崩れ落ちた。


「ああああぁああああああぁあああぁアあぁアああッ! どうして、どうして、どうして、どうして……!」

 

「団長ご苦労だった。疲れているところ悪いが、あんたらの王様のところまで案内してくれるか」


 すると騎士団長は涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにし、怒りに歪んだ鬼の形相で俺を睨むなり、目にもとまらぬ速さで剣を抜いた。


 団長は俺を切ろうとしたが、寸前で剣がピタリと止まった。

 どのような兵器を使おうと、俺に傷一つ付けることはできないのだ。


「どうして……どうしてなんだあッ! どうして……。どのような魔術を使っているッ!」


「どうしてどうしてうるさいぞ。俺がやったんじゃないだろ。おまえがやったんだよ。最後にもう一度だけ機会をやる。どうなんだ? 案内してくれるのか?」


 団長は歯を食いしばって俺に罵倒を浴びせ続けた。

 

「こっちが優しくしてやっていれば。ういい消えろ」


「この悪魔がッぁあああああああぁああああ!」


 その言葉を最期に団長は跡形もなく俺の前から消えた。

 ああ、もう飽きた。

 俺は心で願い、手っ取り早くこの国の者たちをすべて捕虜にした。

 これでしばらく、は人手に困ることはない。


 捕虜が沢山いるのだ。念願だったコロッセオを作り、剣闘士たちの闘いを見物した。剣闘士たちの殺し合いは平民たちを熱狂させた。古代ローマの皇帝たちがコロッセオに力を注いでいた心情がよくわかる。


 それから数年が過ぎ、またも暇を持て余していた俺は、捕らえた捕虜たちを使い、敵国に戦争を仕掛けることにした。その戦争は数年続く長い闘いになった。

 

 戦争で土地を荒らされた農民たちは略奪行為を行い、世界は以前にも増して憎悪と悲しみ、武力が支配する世の中になった。


 朝から晩飽きることなく、そこら中で戦争が行われ、この世は暴力と混沌が支配する世界になった。その戦争を引き起こした俺に、ある奴がこんなことを言った。


 魔王めッ! そう言った奴はもうこの世にはいないが、魔王、良い響きではないか。あっちの世界にいたときには考えられなかった幸せ。そして俺が世界の神――。


 世界を支配する者。それは俺だッ! 

 文句を言う者、不平を言う者、逆らう者は容赦しない。

 俺の覇道を邪魔するなッ!

 

 辺境の地で、勇敢な若者たちが俺に反旗を翻し攻めてきたことがあった。つけ上がりよって。俺に勝てると思っているのか。


 仲間同士で殺し合いをさせ、すべて返り討ちにしてやったわ。

 俺に敵う者など全宇宙を探そうといないのだから当然だ。

 この世界にやってきて、十年が過ぎるころには世界征服を果たしていた。俺の覇道を邪魔する奴は、みな消えた。


 酒池肉林の毎日。

 この世のものすべては俺のためにあり、俺のために死ぬのだ。

 この世は神ゲー。

 俺を不快にするものは何もなく、俺の思い通りになる理想郷――。 








 

 プツン――――――――――――――――――










 遠くで耳障りな音が鳴っていた。

 どうやら人間の声らしい。

 慌てた様子で何やら騒がしい……。

 俺はゆっくりと目を開けた。

 目のくらむまばゆい光が角膜を貫いた。


「目覚めましたか」


 そこには白衣を着た男が立っていた。

 この男は誰だ?

 俺の部下にこのような奴はいない。

 

「調子はどうです? 管理人さんが見つけてくれなければ、あなた死んでましたよ」


 この男は何を言っている?

 この俺に向かって馴れ馴れしいではないか。

 この俺を誰だと思っている。

 この世界を統べる者だぞ。


「警告アラームが鳴らないように、改装していたそうじゃないですか。もうこれで三回目ですよ。ゲームに現実逃避するのは良いですが、ほどほどにしてください。何日連続でダイブしていたんですか?」


 ゲーム? この男は何を言っている。

 現実逃避? 

 現実逃避とは何だ?


「このままじゃあなた本当に死んじゃいますよ。もう少しお体を大切にしてください」


 この俺が死ぬ?

 俺は死なない不老不死なのだから。

 この男は非常に腹立たしいことを言っている……。


「うるさいッ。俺に口答えをするなッ! 貴様は誰だッ! 馴れ馴れしい。俺は神だぞッ。俺の意志は神の意思なんだぞッ! 消されたいかッ」


 声がかすれて人間のものとは思えなかった。

 口の中は完全に乾き、話す言葉は獣の咆哮と化している。


「はいはい神ね。それはゲームの中の話でしょ」


 男は苦笑とも取れる微笑みを浮かべた。

 ゲーム? 何を言っているんだ……?

 ゲーム? ゲーム? ゲーム? ゲーム? ゲーム――。

 違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違うッ!


「違うッ! この世界がゲームなんだッ! クソゲーなんだよッ!」


 男は今度こそ明らかな苦笑いを浮かべた。

 なぜ俺に逆らえるッ。

 俺は神だぞッ!

 誰も俺に逆らうことはできないのだぞッ!


「消え失せろッ! 跡形もなく消え失せろッ! 消えろッ! 消えろッ! 消えろッ! 消えろッ! 消えろおッ!」


 男は消えなかった。

 呆れ果てた顔になり、となりについていた女にうなずきかける。


「あなたは重度のゲーム依存症です。しばらく、ゲームのない自然豊かな施設で療養した方がいい。私たちで施設を手配しておきますから」


「違うッ! 何を言っていている! こっちの世界がゲームだッ! クソゲーだッ! おまえ達は馬鹿な運営に操られているNPCだッ! 早くログアウトさせろッ!」


 2XXX年VR技術は急速に発展を遂げ、ヴァーチャルの世界に人間の意識を投影(フルダイブ)させることのできる技術が確立されていた。


 フルダイブ技術はまたたく間に世界を席巻し、すべての業界を急速に革新させた。中でもゲームの革新は凄まじく、現実ではないゲームという名の異世界にダイブしたまま帰ってこない老若男女で溢れ社会問題となっていた。


 警告アラームを取り付けたり、規則を破った者はプレイできなくするなど色々な制度が制定されたが、制度の抜け道を見つける者や、改造する者たちはどの時代にも必ず現れる。


 今では三人に二人が重度のゲーム依存症だという統計結果がでている。

 人々は面倒な恋愛をするより、ヴァーチャルの彼氏彼女を持つようになり人口減少に拍車をかけていた。


 世界はますます貧しくなり、ゲームに救いの場所を求める者たちで溢れる負の連鎖。一度広まった技術はなくなることはない。


 ゲームの影響で人類は衰退の一途をたどっている。全人類は現実の体を捨てて、ヴァーチャルの世界に魂を移す日はそう遠くない――。

 





 ネット小説の世界には、色々な最強チートがありますが、これ以上の最強チート能力はないのではないでしょうか? 相手を即死させるチートや、捕食した相手の能力を奪うチートでも、想うだけで無効化できますし、絶対に死にません。何でもありだから、物語が作れない。どうです? これ以上のチートありますか? あったらごめんなさい。


 あと読んでいて、主人公の余りのゲスさに気分を害されていたら、本当に申し訳ございません。自分で言うのもおかしな話ですが、著者はここまでゲスではありませんからね。これはフィクションということで、書きました。読んでくださり、ありがとうございました。

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