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04

 俺を取り巻く環境は大きく変わったけれども、いつも変わらずそこに存在するものは、あの草原だけだった。

 時折、野鳥の鳴き声が聞こえてきて、それ以外には草の上を駆ける風の足音や雲の流れの音とも言えぬ音くらいのもので、その中で俺が雑草を踏みつけながら歩く音は正に異音としか言えない。草原の半ばくらいのところに腰掛けるにはちょうど良い大きさの石があり、そこでしばらく森の中にできたこの空白の空を見上げ、色々な音に聞き入っていた。

 やはりどこまで行っても、いつまで待っていても、人の来る気配はない。先へ進もうとする俺の背中を押してくれる者もない。

 ふと、足の甲を這う何かがあった。一組のカマキリたちだった。俺は静かにカマキリを地面に戻すよう誘導すると、しばらくその様子を眺め、それから目を離して再び空を見上げていた。番うこともできずにここまで来てしまった俺への、何かしらのメッセージだったのかもしれない。そんなことを思いながらどれくらい時間が経ったかは知れないが、ふと先程のカマキリに目を向けた。

 上半身をもぎ取られたカマキリの死骸が、未だ死んだことにも気付かないのか、僅かにひくひくと動いていた。幼い頃は透徹しているカマキリも大人になってみれば若草を孕んだような鈍さになるものだが、その断面に目をやると身体の芯は緑色の琥珀のような輝きを保っていた。

 ああ、そうか、そういうことだったのか。俺は一人で合点をすると、立ち上がって尻を払い、草原の向こう側へ行く決心を固めた。

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