2話 酒と飯と会話
〜バベル島〜
探索者街、組合本部交流所。
エクスプローラーパブにて
「おーい! 姉ちゃん! 生ビール5つ! まだ来てねえぞ!」
「そんでよ、そこで食らわせてやったのよ! あんぐり空いた口にぶち込んでやったぜ」
「あのニホン街の花魁の出る店、すんごい美人がいるらしいぜ」
「おい、聞いたか? 星屑野郎がまた生き残ったんだとよ」
「アレタ・アシュフィールドが全部やったんだろ? 羨ましいもんだぜ、ジャップめ」
「それだけじゃねえよ、女史もグレイウルフもいるんだぜ? 場違いにもほどがあるだろ、黄色猿め」
「怪物狩りが、またやったらしい。懸賞金付きの指定怪物種を2日で狩り終えたんだとよ」
「クク、この霜降りラム蛇のステーキ。よく仕込んどる…… 臭みがまるでない!」
ワイワイガヤガヤ。
その場には喧騒が満ちている。
オレンジの室内灯が空間全体を暖かく灯しどこか楽しげな気持ちにさせる。
部屋全体に響くBGMのボンゴのリズムに否応なくみんな酒を空にするペースを煽られる。
笑顔を振りまきながら、両手にジョッキや食器を備えたスタッフがたくさん行き来する。
組合本部交流所。エクスプローラパブ。バベル島において限られている飲酒が認められているエリア。
部屋の壁には各国の国旗が掲げられており、その場に座り飲み食いする人間は様々な人種が混ざっている。
ある意味世界で最も、国際色豊かな場所なのかもしれない。
様々な人間が集まり酒を酌み交わし、料理に舌鼓を打つ。
活気あるその酒場のなか、注目を集める席があった。
「みんな、お酒は行き渡ったわね?」
「ああ、アレタ。ワタシは大丈夫だよ」
「アレタさん、俺も大丈夫す!」
「あるぞ、アシュフィールド」
味山はキンキンに冷えたジョッキを掲げ返事した。その様子に対面に座る金髪の女は満足そうに頷き声を張る。
「オーケー! それじゃあ皆! 怪物種25号! アルゲンタヴィス討伐を祝して! そして生き残ったあたし達に! かんぱーい!」
「カンパイ」
「カンパイっす」
「乾杯」
同時に差し出されたジョッキとジョッキがゆっくりとぶつかる。味山は笑顔溢れる仲間たちと盃を交わし、ジョッキの中身を呷った。
「あー、1杯目は最高なんだけどなー」
苦味と炭酸の刺激が喉に染み渡り全身に満ちる。空きっ腹にビールが溜まり、カラカラの身体が潤っていく。
「プハーッ!! あー、この1杯目の為に生きてるっす! あ、お姉さーん! ビールおかわり!」
隣に座るグレンが一息でジョッキの中身を空にする。同じ事を味山がすればすぐに倒れてしまうだろう。
「助手、ほどほどにしておけよ。キミ、先程の探索でイモータルの希釈液を使っているのだからね」
味山から見て斜め前の席、グレンの正面に座る少女がちびちびとジョッキを呷りながら呟いた。
「うぃーす、心得てますよ、センセ、安心して下さい! あ、枝豆もらいまーす」
グレンが少女の呟きに軽口で返す。
味山はグレンと同じように枝豆をつまみながらその少女を一瞥した。
真白な肌はその唇すら色素が薄い。よく見ると眉毛までもが雪にまぶれたように白い。
対照的にその瞳は紅く。
血に染まったルビーをそのまま当てはめたと言われたら納得してしまいそうな瞳だ。
髪の毛は確か染めているはず。瞳と同じように真っ赤に染められたショートボブ。
アルビノのその神秘的な美しさが味山に笑いかけた。
「ん、どうした? アジヤマ。ワタシの顔に何かついているかね」
味山の視線に気付いた少女が、こちらに呟く。
「あ、いや悪い。見惚れてただけだ」
「む、そうか、不躾に眺められるのは気分が悪いものだし、よくされるものだが……そこまで素直に言われると存外悪い気はしないものだな」
押し殺すように少女が、ソフィ・M・クラークが笑う。彼女もまたグレンと同じく、味山のパーティメンバーの1人。
先程の大鷲狩りにおいて、味山とグレンを囮にする作戦の立案者だった。
指定探索者、ソフィ・M・クラーク。
通称[女史]
世界に50人といない国からの指定を受けた特別な探索者の1人。
一般人の知名度で言えばアレタ・アシュフィールドには及ばないが、探索者からの知名度はかなり高い。
探索者であれば、いや現代ダンジョンに興味を持つものならば彼女の書籍はいちどは目を通した事はある筈だ。
味山も彼女の著書の愛読者だった。
「アレタ、アジヤマがワタシを熱い目で見つめてくるのだが…… これはどういう事だと思う?」
「知らない、別にいいんじゃない? タダヒトが誰に見惚れようがあたしには関係ないし、メッセージも既読無視するし」
あ、やばい。いらん事言った。
味山が焦った時にはもう遅い。
対面に座る金髪の女。アレタ・アシュフィールドが一気にジョッキを呷った。
「ハハハ、どうする、アジヤマ。我らが星はヘソを曲げてしまったようだ。キミに任せたよ」
「煽るなよ、クラーク。あー、どうしよ、ほらアシュフィールド、ヘソ曲げんなって。俺のだし巻き卵1つあげるから」
味山は手近にある皿を差し出す。まだ誰も手をつけていないてらてらのだし巻き卵。これに大根おろしと醤油を少し垂らせば神の食べ物になる。
味山の好物だった。
しかし、アレタはふいっと顔を逸らす。
「美味しいぞ?」
食べないんなら仕方ない、味山が皿を戻しながら箸で1つだし巻きをつまんだ。
「それ」
「あ?」
「それがいい」
「いや、だからほら。あげるって。大根おろしもつけていいから」
なんだこいつ。味山は再び手元に戻した皿をアレタに向けて差し出す。
金の髪がふるふると横に振るわれた。
え、また拒否? いじめ?
味山が怪訝な顔をすると
「……違う、タダヒトが今お箸でつまんでるのがいいの」
消え入りそうな声とともに、アレタが指差していたのは皿に置いてあるだし巻き卵ではなく、今味山が口に運ぼうとしているものだった。
なんだ、これは。どういう意味だ。俺の箸でつまんでいるだし巻きと皿に盛ってあるだし巻きの何が違う?
味山が返答に詰まっていると
「タダ、タダ! 何してんすか?! ほら、アレタさんがあんなに勇気を出して仲直りの機会をくれてんのに! なにボケーッと固まってるんすか! ウエストバージニアじゃあ常識っすよ! 仲間が仲直りする為に…プッふ。何かを食べさせてあげるのは! ブフっ、ねえ、センセ!」
「んっ! ふ。 ……ごほん、ああ、助手の言う通りだ。アジヤマ、探索者のパーティとはこのように異文化交流の機会が多い。キミの国にこんな言葉があるようだね、郷に入って
郷に従えと」
バベル島の中では言葉の壁は存在しない。原理不明の力が異なる国の言葉全てを統一し、互いに翻訳し合う。
ことわざですら素直に味山は理解することができた。
「え、これそういう事なのか? ……なるほど、たしかに2人の言う通りだ。アシュフィールド、すまん、機嫌なおしてくれ。だし巻きあげるから」
「……ん、べ、別に怒ってるわけじゃないわ。でも、タダヒトがそこまでしたいなら別にしてもいいけど」
髪の先をいじりながらアレタがブツブツと呟く。探索の時と違いその姿には覇気がない。いつもよりだいぶ小さく見えた。
「ああ、そんな文化があるとは知らんかった。頼む、アシュフィールド、俺のだし巻きを食べてくれ」
「そ、そこまで、言うなら仕方ないわね。いいよ」
髪の毛を耳にかけてから、アレタが目を瞑って口を小さく開けた。
味山は箸でだし巻きを摘んだまま、ゆっくりとその薄い桜色の唇に近づけて
「タダ! きちんとあーんって言って!」
「アジヤマ、ウエストバージニアではあーんと言いながらでないと仲直りの儀式にはならない。無知かつ不実行は罪だよ、ブフッ」
まじか、ウエストバージニアではこんな恋人がやるような事を儀式としてしているのか。
「凄えな、ウエストバージニア。じゃあ、アシュフィールド、あーん」
「……あーん。……うん、美味しい」
もごご、とアレタが差し出しただし巻きを咀嚼する。
猫っ毛の金髪はパブの灯りを受け控えめにきらめく。真っ白な肌はアルコールの影響か、わずかに赤い。
アーモンド型の切れ長の瞳が今はによによと丸まっていた。
とびきりの美人が口元を押さえながら食べるその姿に味山はなんとなく満足感を覚えた。
「良かった、ここの組合本部の酒場は飯が美味いからな、少しは機嫌治ったか?」
「む、そもそもタダヒトがあたしのメッセージを既読無視なんてするんだもの。あたしは初めからべつに拗ねてなんてないもの」
唇を尖らせつつも、アレタの表情は柔らかい。良かった、だいぶ機嫌が直ったみたいだ。やはり、故郷の習慣というのは間違いないんだな。
味山は謝りつつも、仲間の機嫌が戻った事に安心していた。
そのまま箸でだし巻きをつまみ、ひょいと口に入れる。
一口噛むたびにじゅわりと何重にも巻かれた卵糸から旨味の詰まったダシが溢れる。
探索終わりの疲れた身体にしみる。あー、最高。次は大根おろしと醤油かけて塩気足しちゃお。
「うまい…… ん、どうしたアシュフィールド、まだいるのか?」
味山はだし巻き卵に舌鼓を打ちつつこちらを見つめてくる視線に気付く。
「え! いや、ううん! 別にもう大丈夫よ! タダヒトの好物なんだから、タダヒトが食べて…… えと、タダヒトは気にならないの?」
「なにが? だし巻きに醤油をかけること? 大根おろし乗せること? あー、そうか、アメリカには大根おろしないから不思議かもしれないよな」
味山は呟きながらまた、大根おろしをつまみ黄色のだし巻きの上に乗せる。醤油をひとさし、そのままだし巻きを口に運ぶ。
うまい。
「あ、また…… う、ううん、別にタダヒトが気にならないのなら良いの…… はあ、あたし馬鹿みたい……」
アレタがなにを言いたいのかがイマイチわからない。しかし、怒っているわけではないようだ。味山は首を傾げながらジョッキを呷って、だし巻きをビールで流し込む。
炭酸の刺激と、ホップの苦味が卵を喉に流し込む。たしかな満足感、決まった。
味山が満足げに大きく息を吐く。目頭が熱い、もうアルコールの酔いが回り始めてきたみたいだ。
「ははは、いやあ良かった、良かった。無事、アレタとアジヤマが仲直りできたみたいだ。助手?」
「抜かりはないっす、センセイ。きちんと写真撮ったんであとで、ウィンスタに載せとくっす」
「馬鹿、やめろ。また読めない文字で俺だけが炎上する」
なにやら通じ合っているグレンとソフィを制止しつつ味山はふと席を見渡した。
アレタ・アシュフィールド、52番目の星。
ソフィ・M・クラーク、女史。
グレン・ウォーカー、上級探索者。
いずれもこの現代ダンジョンの現れた時代における有名人、アレタに至っては既に教科書に名前の載っている生ける伝説。
改めて見ると、俺、だいぶ場違いだよな。
凡人である味山は内心呟きながらジョッキを煽る。苦味と刺激が胃の底に溜まってゆく。
「まあ、なんにせよ。今日も我々は生き残った。それが何よりだよ。それにしても2人ともよく足止め出来ていたね。あれは感心した」
ソフィがテーブルの上で手遊びしながら味山もグレンに紅玉の視線を向ける。
「いやー、でも割と間一髪でしたよ。俺なんか途中死にかけたっすもん。ねえ、タダ?」
「あー、あれは焦った。まさか透明になるとは思わないよな。偶々適当にぶん回した斧がクリーンヒットして良かったよ。あ…… そうか、ローン……」
味山は話しながら自分が失ってしまった物を偲ぶ。どうしよう、3年ローンで買ったのに一瞬でぶっ壊れてしまった万能片手斧。
「……安心しなよ、アジヤマ。チームの経費で落としてやるさ、なあ、リーダー?」
「ええ、そうよ、タダヒト。大鷲の討伐で一人頭80万円ほどの報酬だもの。ローンの払いに使えばいいわ」
「まじか、ありがてえ…… よし、じゃあ早速明日組合の武器屋でも行ってみるかな」
「タダ意外と金遣い荒いっすよねー、つーか大鷲の討伐でそんなにもらえるんすか?」
グレンが給仕のスタッフに追加のおかわりを求めつつソフィに向けて問いかける。酒場の喧騒の中、スタッフが笑顔で注文を聞いていた。
「ああ、今回討伐した怪物種25号は組合により特異個体と認定されたからね。透明化が可能な個体だ。無理はないよ」
「やっぱかー。強かったすもんね、あいつ。まあでもアレタさんとセンセイが到着してからはものの数分で終わりましたけど」
味山はあの狩りの結末を思い出す。
自分とグレンがそれこそ命がけで足止めした化け物との決着は、指定探索者の到着を以って呆気なく完了した。
「アレタの投槍がメタを取れたね。大鷲はサイズこそ巨大だが、空を飛ぶために見た目以上に体組織がスカスカだ」
「ソフィもよくサポートしてくれたわ。何度見てもすごいわね、その鞭は。さすがは、遺物保持者ってところかしら?」
2人の美人が笑い合う。何しても絵になるな、コイツら。味山は自分にはないオーラを肴にビールの残りを飲み干した。
「おまたせしましたー! 生ビールです!」
「はーい、はいはい、俺っす、お姉さん」
グレンがスタッフからビールを受け取るのと、同時に端末の着信音が鳴り響く。
ピピピ、ピピピ。
「おっと、失礼、ワタシの端末だね。……ふん。アレタ、少しいいかい? お手洗いに付き合ってくれ」
「え? ええ、問題ないわ。ごめんね、タダヒト、グレン。少し外すわ」
「おう、ごゆっくり」
「行ってらっしゃいでーす」
アレタとソフィが連れ立って席を立つ。男2人はビールをちびりちびりと飲みつつその後ろ姿を見送った。
インナーにジャケット、割と薄着の2人の背中をぼーと見つめる。
「アレタさん、後ろ姿から何から美人っすねー。みてくださいよ、あの長い脚! 周りの探索者の連中、みんな横目で盗み見してるし」
味山はグレンに促され、手洗いへ向かうアレタを見送る。
喧騒が満ちる酒場、しかしアレタとソフィの進路に近いテーブルは皆静かだ。
男が、女が、酒場のスタッフまでもが。
ちらりと一瞥するもの、じっと見つめるもの、こそこそと盗み見するもの。様子は様々だが、皆一様にその2人に目を奪われている。
「すげえ…… ホンモノのアレタ・アシュフィールドだ」
「どうしよう? これ、ソフィ先生サインくれるかな?!」
「綺麗……」
「おい、声かけてこいよ」
「バカ、相手にされるわけないだろ! お前が行けよ!」
ざわ、ざわ。
沈黙と喧騒が綺麗に分かれる。2人の指定探索者が離れたテーブルから順番に会話が溢れ出ている。
あいつ、やっぱり凄い奴なんだよな。
味山は妙に現実感のない感想を抱きながらビールのおかわりを頼んだ。
「たしかに絵に描いたような美人だけどな。でもよ、ツラの良さならお前のセンセイ、クラークだって負けてねえだろ」
手持ち無沙汰の間、隣のグレンへ言葉を返す。
「いやー、確かにセンセイはなんも知らなければ現実離れした美しい女性なんすけどー、ホラ、日常を見てるとどうもそんな感じしなくて。山のように積もった吸い殻とか、脱ぎ捨てられたパンツとか洗濯機に放り込む身としたらねー」
「見る分には綺麗だが、登る分にはてやつか。富士山みたいだな」
おまたせしましたー。
差し出されたビールのジョッキを味山が会釈しながら受け取る。
なみなみと注がれた黄金色の液体をちびりと舐めた。
きいん。
澄んだ金属音。また、アレが来る。
味山は苦い酒を喉に押し込む。
€TIPS 耳を澄ませ€
グレンの声ではない。
それとは別のナニカが味山の耳に囁く。
その声が聞こえた瞬間、ごおおおおと空気の鳴る音が耳に届き、そして。
『おい、見ろよ、星屑野郎だ。また生き残ったんだとよ』
『アレタ・アシュフィールドの寄生虫が。なんでまたあの星はあんな凡人を飼ってるんだ?』
『ねえ、あの人、この前日本人の探索者から聞いたんだけど、前のパーティでも問題を起こして追放されたらしいよ?』
『聞いた、聞いた! 女を取り合って、しかも振られてそれで逆ギレしたんでしょ? マジありえなくね?』
『グレン・ウォーカーが一緒じゃなけりゃ少し分からせてやるんだけどな』
『まったくだぜ。目障りなジャップめ。ダンジョン発祥の国の人間だからって、てめーまでがえらいわけじゃねえのに』
『この前のウィンスタ見たか? アレタ・アシュフィールドと一緒にクレープ食べてたぞ。調子に乗ってやがる』
『ククク、しつこ過ぎず、それでいて濃厚な味。相当良い蜂蜜を使っとる…… このパンケーキのシロップ……! ワシの目はごまかせん、生地にもわずかに練りこんどる……! バベルミツバチのミツを…!』
『仰る通りです。立神様。お口に合ったようで何よりです』
耳にまとわりつくように聞こえる声、声、声。
それらは通常の聞こえ方ではない。それぞれのテーブルの中でしか伝わらない小さな陰口まで全て拾って聞こえる。
味山は耳が良い。正確にはとある探索を終えたその日から耳が良くなった。
聞こえないはずのものが、聞こえなくて良いものが聞こえる、その耳。
€TIPS 探索者にとって評判は大切だ。横の繋がりは新たなる探索の呼び水となる€
うるせえ、知ったような口を叩くな。
陰口とは別にどこからか聞こえるささやきに内心で返事をした。
TIPS
味山 只人にはダンジョン攻略のヒントが聞こえる。
それは具体的な攻略だけにとどまらず、コツや豆知識などがどこからともなく流れ込む。
味山にはとても出来の良い耳が備わっていた。
顔を振り、聞こえなくても良い雑音を振り払う。どうせ外から聞こえないように陰口を言うしかない程度の連中だ。害はないだろう。
「どーしたんすか? タダ」
「いや、なんでもない。それより俺、そろそろ肉系がいきたい。アシュフィールドたちが戻ってくる頃には来るでしょ」
味山が机の上にあるメニュー表をひらりと眺めて。
「それなら、三戦鳥の唐揚げはいかがですか? 唐揚げ、好きでしたよね、味山さん」
「あ! それいい! それに決めーー え?」
突如、掛かって来た声に反応しながら味山は言葉を止める。
先程までアレタが座っていた席に誰かが座っている。
味山どころか、グレンですら声をかけられるまで気付かなかった。2人の男が目を大きく見開いて、ポカンと口を開けていた。
「お久しぶりです、味山さん。お元気そうで何よりです」
「貴崎……?」
「はい、味山さんの元パーティメンバーで、現在! 味山さんを補佐探索者にスカウト中の貴崎 凛です」
無邪気な笑顔で、黒髪ポニーテールの美少女が味山に笑いかけた。
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