80話 こんにちは、トゥスク
トゥスクちゃんねる
1:人間キュン、来たわね
2:味山只人って言う名称らしいね
3:個体ごとにそれぞれ名称が振り分けられてるんだ
4:マ? 言うても数十億いるんでしょ? それに全部シリアル名があるの?
5:絶対デバッカーが発狂するでい
6:人間キュンはなんでも、ウチらみたいに統合されてないぽいよ
7:どゆこと?
8:統合体の中に意思があるんじゃなくて、個体の中にそれぞれ1づつ意思があるらいい
9:マ?
10:マ?
11:マ?
12:やばすぎてクソワロタ
13:待ってまだウチ内容理解できてないわ。人間キュンとうちらって何が違うのん
14:要は女王個体みたいななのが、数十億いるって事
15:1人1人が別人って事でしょ、ウチらはみんなウチだけどさ
16:!!?? ヤバすぎでしょ
17:それめっちゃ大変じゃん、じゃあナニ? 自分以外の自分、じゃないか、自分以外の存在が何を考えているかもわかんないって事?
18:え~人間不信になるでしょ、そんなの
19:記憶も性格も考えもバラバラの同種族が別個体で星に数十億規模っている訳?
20:や~ん、下等種族~萌える~
21:そりゃエッチな訳ですよむほほ
22:待って、じゃあナニ? あのか弱くてよわちいえっち種族、それぞれのえっちさは個人から発露されてる感じなの?
23:やば、あの毛髪が少ない個体とか、他個体との交流が下手で体の洗浄とかもあんましない子は、統合体の判断じゃなくて、個人の判断であんな事してるの?
24:や~ん、下等生物すぎて愛おしい
25:じゃあ、きっとさ~うちらが用意してるプランめっちゃ喜んでくれるんぢゃね
26:喜んでくれるといいな(''Д'')
27:うちら超がんばって考えたもんね
28:あ、そろそろ人間キュン来るよ
29:名前は?
30:味山只人っていうらしいよ
31:戦力評価は――ゲッ、マジ!? 主神討滅級?
32:やばすぎでワロタ。ワンチャンゼウス行けるって事?
33:え~かわい~あんなによわっちそうなのに強いんだ~戦ってみた~い
34:交渉決裂の場合は、特使メンバー全員を自爆させて次元消滅を狙うみたいよ
35:ええ……
36:ちょっと、大人げなさすぎやしやせんかね
37:女王個体の判断では、それ以外だと特使を全滅させられて終わるって
38:マ????
39:味山只人、強すぎてクソワロタ
40:それ以外の人間キュンはか弱くて価値がないのに
41:差がありすぎて可哀想、一緒にならなきゃ
42:統合してあげれば滅ばなくなるもんね
43:保護しなきゃ……(使命感)味山只人以外を
◇◇◇◇
同時刻――封鎖されたシブヤ交差点にて――味山只人によるトゥスクの特使の説得開始
観測史上初、人類以外の知的生命体とのコンタクトとなる。
「銀髪エルフ、銀髪エルフ、銀髪エルフ、銀髪エルフ……俺からすりゃいい景色なんだけどよ。世間様はそう思わないらしいな」
「味山只人」
トゥスクの特使より、長身の女性が代表者として発言。
味山只人との会話が開始。
「はい、味山です。先に聞いておきたんだが、今すぐドンパチ始めるって訳じゃあないんだな」
「肯定、当機に現状交戦の意思はなし。当機が望むのは人類最終生存者、味山只人との会談」
「人類最終生存者?」
「発言の意図を、人類最終生存者というワードの意味への問いかけと判断。トゥスク全体の判断としてこの先、人類が滅亡した場合、99.99999999%の確率で味山只人が人類最後の生存者になる」
「そりゃ……素敵な話だな」
「肯定。味山只人の生存力は我々、トゥスクの民の理解の外にある。また、貴殿はゼウスの支配異界から当機の同一個体を救出、またこれまでに数々の神秘種の討滅の実績がある」
淡々と語る銀髪エルフ。
兎のように赤い眼に味山の姿が映りこむ、味山しか映っていない。
「我々は無駄を嫌う」
「我々は効率を好む」
「我々は強靭を尊ぶ」
「人類は神秘種により滅亡する。その最後尾は必ず味山只人となる」
「故に、我々は貴方との交渉を望む」
「……話は読めないが。交渉、ね、アンタらはまだ俺達と仲良しこよししてくれる可能性があるって事か?」
「段階的に肯定。我々には人類との同盟プランがある。今回はその条件を貴殿に伝える為に来た」
「……その条件ってのは?」
「人類8割のトゥスク化。我々の用意する同化政策に帰順してほしい」
「うわ、もう嫌な予感」
銀髪エルフ達が同時に同じポーズで味山に語り掛ける。
「我々には、人類をトゥスク化する用意がある」
「人類は弱く、愚かで不完全だ」
「それは貴殿ら人類が個体であるからである」
「1つ1つの生命に、1つ1つの意思があるからである」
「個体差が著しく激しい在り方は不完全である」
「貴殿らを次の一歩に進める準備が我々にはある」
「……あー。えっと、具体的に、アンタらが言う同化プランって人類はどうなるんだ?」
「人類はトゥスクになる。見た目も、考えも、思想も個体も我々の女王個体のネットワークに統合され、個人は消失する」
「あー……」
ぱちん。
味山只人の中にはスイッチがある。
このスイッチの存在に気付いたのは最近だが、きっとこれは味山の中にずっとずっと昔から存在したものだ。
スイッチの名前は――ぶっ殺しスイッチ。
味山只人の探索者としての経験と完成した自我が生んでしまった切り替え点。
世の中――もう殺すしかない敵がたくさんいる。
そのスイッチが、今反応した。
しかし――。
「アンタらが言うプランに乗れば、人類は勝てるのか?」
「勝率計算、0.98%が6.66%に上昇する」
「人類は我々の統合ネットワークに加入する事で、全員が能力の使用を可能となる」
「人類は我々と同じ位階の存在になる」
「人類は全てトゥスクになる」
トゥスクの回答に味山は顎を撫でる。
妙な感覚だ。
ぶっ殺しスイッチの上をずーと撫でまわされているような感覚。
味山の本能に近い何かがそのスイッチを押す事をまだ迷っている。
「人類は現在、神秘種にエネルギーとして狙われている」
「人類の個体1つ1つが持つ想像力、感情、人生、1個体が持つにはあまりに多い情報は神秘種にとって最高の美食であり、エネルギー源である」
「しかし、人類は保有している情報量が戦力に結び付いていない、結果――貴殿ら人類は神秘種にとってコスパのいい食料となっている」
「人類に戦力的価値はない」
「故に人類という種との同盟は無意味と判断」
「人類のトゥスク化は、それらの課題を全て解決するソリューションである」
淡々と語る銀髪エルフ達。
要は人類をトゥスクという別の生き物に変換して神秘種に挑もうぜ、という話なのだろう。
だが……。
「……アンタ達が作る世界だとよ、結局人類は滅びてないか?」
「否定、貴殿らはトゥスクとして生き延びる」
「否定、それに全ての人類がトゥスク化する訳ではない」
「補足、少なくとも貴殿、味山只人のトゥスク化は検討されていない」
「どういう事だ?」
「統合体による判断、人類にはごく少数、個体でありながらも我々トゥスクに比肩する戦力が存在する」
「肯定、そのような戦力を特殊個体と呼称」
「特殊個体はトゥスク化の対象には入らない」
「肯定、特殊個体については個体として我々トゥスクとの同盟を希望する」
「肯定、味山只人、アレタ・アシュフィールド、人類軌跡転生体、及びアレフチームは少なくとも同化対象外である」
「結論――人類は貴殿らによって継続される」
「神秘種との生存競争に勝てばではあるが」
「な、るほど……」
味山のぶっ殺しスイッチが入らない理由は、これだ。
トゥスクの民は恐らく、人類で言う所の善意でこの提案を行っている。
善意なのだ。
こいつらは全てを善意で言っている。人類のトゥスク化というどう考えても割と悪い奴が考えそうなプランも、人類を保護しようと思って提案してきているのだろう。
「ちなみに、それを断った場合は?」
味山の問い。トゥスクの答えは割と最悪なものだった。
「残念だが、我々トゥスクは二正面作戦を開始する」
「貴殿ら人類は、神秘種にとっての食料であり資源である」
「故に神秘種攻略作戦の一環として――人類への資源攻撃を開始する」
選択の時だ。
彼女達の手を取るか、否か。
味山只人は考える。
ぶっ殺しスイッチはいまだに、ずっと撫でられ続けたまま。
経験上、このスイッチが完全に起動していないまま、戦うのは――あまりいい結果に繋がらない。
普通の人間なら、判断も考察も出来ない状態。
単体での人類外との知的生命体との交渉。その判断を下せる人間はほぼいないだろう。
だが、味山只人にはこれがある。
「ああ、もうめんどくせえ」
味山がすっと手を挙げる。
瞬間、トゥスクは全員が戦闘態勢を取らざるを得なかった。
トゥスクという群体生物、それら全員が――目の前の一個体を脅威と認定したのだ。
理由は――統合体の誰にも分からなくて。
「クソヒント、銀髪エルフのお嬢さん達と殺し合わなくていい方法ないか?
TIPS€ トゥスクの民攻略情報:同盟ルート進行条件・文化汚染
トゥスクに人類の価値を体感させろ
「いつも通りわかりにくいヒントをありがとう」
TIPS€ あるだけマシだろうが、文句言うな
味山只人にだけ聞こえるヒント。
それは確かに、トゥスク達との歩み寄りが可能な事を示す。
「「「「「「……」」」」」」」
じっと黙って味山の動向を見守るトゥスクの特使達。
味山はしばらく、ヒントを自分なりに咀嚼して――ひらめいた。
自認IQ3000、耳男にたどり着いた脳は思考を繰り返し、ある答えにたどり着いた。
「あの、トゥスクの特使さん達、ちょっといいか?」
「……質問を受領する」
トゥスクの特使達は既に、存在燃焼爆弾の起動キーのセーフティを解除して――。
「お前ら――アイドルをやる気はねえか?」
「「「「「「何?」」」」」」」
この世界における――人類とトゥスクの関係性が決まった瞬間だった。
読んで頂きありがとうございます。
トゥスクの民は種族全体で読者の皆様に応援してもらいたい。
展開が少し遅くて申し訳ない。ただ、この辺はWEBなので丁寧にやって最終回に向かっていきたいです。
凡人探索者はまだ続きますが、確実に完結させるので安心して御覧下さい。
凡人探索者6巻の作業もかなり進んでいます、いや今回、貴崎も雨霧もアレタもマジでかわいいぞ。アレタはまあ……うん……WEBを読んでるひとの予想通りだけど。
でも、アレタのやらかしのスケールをさらにでかくしているので、WEB読者の皆も納得しつつも、お前さあ、みたいな感じになっていると思います。
あと、くるみ割り、アナスタシア・ホーレンもヒロイン枠で出てきます。WEBでは敵対ルートの彼女でしたが、書籍では特殊条件を達成してバベル島防衛戦を終わらせているので、仲間になっています。
お知らせ
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じゃ、また!




