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凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ 【書籍6巻刊行予定、作業中、完全書下ろし】  作者: しば犬部隊
部位戦争、"耳対脳みそ、内臓

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101話 慈愛、進撃

 


「……うそん」




 味山はつぶやく。視線の先、中国街に隣接するイギリス街に火の手が上がる。




 電波塔から見える範囲、イギリス街の中世を模した街並みは光の奔流が消え去ると同時に、瓦礫の山へと変わっていた。





「慈愛慈愛慈愛慈愛慈愛慈愛慈愛慈愛慈愛慈愛慈愛慈愛」




 化け物が、いた。




 今まで見てきた化け物、そのどれよりもデカイ。





 TIPS€ 現時点での"人類軌跡、慈愛"のレベルは1。体長約30メートル




「30メートルって…… お前、若めのキングコングくらいあるじゃねえか……」





 ここからでも、その存在が確認出来る。二足歩行、人型、頭からすそのにかけてビロビロと垂れる膜……?



 ケープのようなそれを引きずりながらソイツが歩き始めた。




「マザーテレサのパクリみたいなデザインしやがって…… ふざけんな、怪獣大決戦やってる時間なんざ」





 TIPS€ 警告、慈愛からの攻撃を確認





「うそ、あれ、なんかアイツ、こっち向いてない?」




 TIPS€ 構成魔術式の省略、無理やりの現界干渉、また術式に注ぎ込む生命の不足により慈愛は未完成のまま顕現している。よって、本来の機能を別の形で再現しようとするだろう





「簡単にまとめろ!! おい! アイツは何をーー」





「慈愛」





 それは、おぞましい光景だった。



 ケープのように垂れる膜、それが意思を持つよつにめくりあがっていく。



 中途半端に、肉がついた骸骨ヅラ。



 顔、そいつには顔がついていた。肉が剥き出して、所々溶けている。眼窩には肉で無理矢理作り出した目玉。




 ぐちり。ぶくぶくと肉を泡立たせながらソイツが笑ってーー





「や、ば」




「慈愛」




 がぱりとひらげられた口から、肉と血の塊が味山に向けて発射された。




「うっそおおおおおお?! そういう感じの攻撃?!!」




 耳の大力を応用した高速移動、電波塔から一気に飛び降りる。





 大水が破裂したような轟音、一瞬前に味山のいた場所に慈愛の肉玉が直撃する。




「うげえ、溶けとる、あ?!」




「コンにちば!!」




 落下のタイミングに合わせて、どこかに潜んでいただろう端末が味山に襲いかかる。



 口から生やした刃が味山を下から串刺しに




「よっしゃ!! ナイスタイミング!! はいこんにちは! そしてさようなら!!」




 空中で、鬼裂の業を発動、人間、いや生物離れした身体の力を鬼の業が捌く。




 ぐるりと空中で回転、下から伸びる刃をかわし端末を捕らえる。





「エ?」




「クッション性に期待するぜ!!」




 そのままサーフボードに乗るみたいに端末を足蹴にしたまま、味山が地面に落ちる。




「ぎゃ?!」



「ぷキュ」




 赤い花が、地面に咲く。耳男に捕まった端末は真っ先に地面に触れて法則に従い潰れた。




「うわら!!」



 端末を落下のクッションにしてもなお、その衝撃は激しい。身体中をシェイクされるような感覚に、殺しきれない勢い、地面をゴロゴロ転がる。





「いってえええ…… かなり高い場所から落ちたぞ、ほんと落下ダメージは洒落にならんてほんと」




 TIPS€ 警告、慈愛の遠距離攻撃が来る




「あ」




「慈愛」




 味山が気づいた時にはもう遅い。その血肉の塊、キロ近く離れているにも関わらずその巨大な化け物は味山を見て、狙っていた。





「馬鹿ーー」




 肉が破裂して、建物が破裂して、味山も破裂して、全部バラバラになった。








 ……………

 …….「はい!! ふっかあああつうう!! 耳の血肉うう!! 時間なんてかけませええん!!」…………






 ドロドロになった瓦礫の中から、肉の塊が動き出す。



 グラタンみたいに瓦礫と腐り溶けた肉がグジュグジュになった地面、そこからぽんっと、耳が飛び出る。




「あああはあああ!! キメエ!! なんじゃこの肉!!」




 じゅるり、どろり。バラバラになった味山の身体が繋がる。幸い胴体や脚が消えたわけじゃなかったので服は無事だ。





「あ!! そ、袖が…… くそ、ワイルドな感じにしてくれやがってよお!! 笑われたらどーすんだ!!」




「慈愛、じあい、じあいじあい」




「うわ、だから気持ち悪!! この肉片しゃべるんだけど!!」




 こびりついた肉をつまみ、眺める。じあい、じあい。高い声で静かにしゃべる肉。生理的に受け付けない。






「……おい、聞きたいことがある。あれは強いのか?」




 TIPS€ 星に備わる免疫機能の1つ。本来であれば惑星の支配種の数が一定数を割った時に現れる自然の機構。しかし人知竜の魔術式により星の免疫機構をクラック。バベル島内の肉人形を星の支配種と免疫機構に誤認させることにより




「長い、簡潔に答えろ」




 TIPS€ "奇跡が起きれば殺せるだろう".




「充分だな。それともう一つ、あれゴジラよりは弱いよな。ドハゴジな」




 TIPS€ ……現時点においては




「なら。よし。問題はねえ。探索者の仕事、化け物狩りの時間だ」




「慈愛」




「見下してんじゃねーぞ。ゲロ吐き巨人。は、耳男VSゲロ吐き巨人、ひでえB級映画だなああ!!」




 酔いがさらに、満ちる。



 ただでさえ高揚している感覚が上っていく。



 敵は見上げるばかりの巨体、人間をその手のひらで掴み潰してしまえるほどの体格差。




 耳男の身体が、全て再生する。



 大きな瓦礫を持ち上げ、構える。





「慈愛」




「うるせえええ!! そのフォルムで慈愛とか図々しいにもほどがあるわ!! ビームの1つでも出してからそういう名前名乗れえ!!」





「じ、じじじじあい」




「え、あれ、なんかやる気だしちゃった? いいのよ、ありのままで」





 口が裂ける。ごぽり、ごぽり。



 その溶けかけた身体から血が溢れ出し、口の中に並々と溜まり、



 しゅん。




「え」




 放たれたのは血の奔流。圧縮された大量の血がまるでレーザーのように放たれる。




 吹き飛ぶ街並み、宙を舞う瓦礫、巻き込まれる潜んでいた端末。



 バラバラになり吹き飛ばされる耳男。




「あああああ!?! むかつくううう!! クソ足場にアウトレンジでのクソ火力とかてめえ、なんかすげえ嫌な記憶が蘇るぞおお」




 吹き飛んだ首を空中でキャッチ、胴体にがっちりくっつける。




 TIPS€ お前のーーは残りーー





「もう知らん!! 本気で殺す」




 TIPS€ 慈愛は長距離戦に秀でている




「言われんでもわかるわ!!」




 地面に落下する前に身体の再生が全て終わる。まずい、身体は無事でも服の面積がだいぶ少なくなってきた。誰得だ。




 味山がわりと呑気なことを考えながら対抗策を練る。




 自称IQ3000の灰色の脳細胞が酔いによって加熱する。




 答えはすぐに、決まった。




 TIPS€ 慈愛攻略には強力な遠距離攻撃の手段、もしく広範囲にわたる防御の手段がーー





「いらん。攻略法が出来た。いやなんだ、ほんとなんでもしておくべきだ。ゲームでもなんでもな」




 ヒントの囁きを無視して、味山が構える。




 場面をしっかり踏みしめ、目線を化け物へ。




 TIPS€ 何を




「ミッションを説明しましょう、目標は訳のわからん馬鹿どもが作り出したゲロ吐き巨人」




 自分を奮い立たせるために、つぶやく内容は記憶。



 足に力を込める。耳の大力、限界を超えて動け。




 身体に命令する。鬼裂、動きを補助しろ。





「超高速戦闘だ。目え、廻すなよ」





 TIPS€ なにを、まさかーー





「いっくぜええええ!! テーテテテー!! テテーテ、イェーガー!!」




 踏み込む。




 一気に地面を蹴り、肉片を撒き散らしながら耳男が進む。



 瓦礫を飛び越え、ドロドロの地面に満ちる肉を撒き散らしながら耳男が街を、廃墟になっていく街を駆け抜ける。




「慈愛」




 がぱり。ひらく口、口の端が溶けて顎が崩れ落ちていく。それでも、その化け物から吐瀉物のように肉の塊が発射された。




「うおっとおお!?  汚ねえ!?」




 跳ぶ。地面が、建物が破裂し、溶けていく。まだ無事な建物の屋根に飛びうつり、前進。





 前へ、前へ。



 ただ、前へ。




 もう、そこがイギリス街だとは判断出来ない瓦礫の山。そこに立つ、化け物。





 直上、"人類軌跡、慈愛"



 慈しみ、愛するために命を守るその人類の軌跡は示した。



 慈愛とはつまり、肉の暖かさ。抱きしめられ、包まれるその暖かさを分け与えようとそれは役割を果たそうとする。





「慈愛」




「てめえの愛はいらねえ」




 耳男が、慈愛を見上げてその身体に張り付き、飛びつきよじ登る。ドロドロの肉をかき分け、千切りながらほぼ垂直に走って登る。




「勝負だ、ゲロ野郎!!」




「慈愛」




 でろり。慈愛の身体から生えた肉の眼球もどきと、耳男の暗い耳穴が互いに互いを見つめていた。




 耳男VS" 人類軌跡"慈愛" 開戦。



 ……

 …


 〜同時刻、中国街〜


 'テレビトーキョー所属、ディレクター鷺村康二'





 俺には夢があった。




 有名なディレクターになって、バンバン番組をヒットさせて、大金を稼いで、みんなにちやほやされてアイドルと結婚する夢が。




「に、逃げろ、逃げろ!! もうシェルターなんて意味がねえ!」



「ひいいいい!? 自衛軍は何してんだあああ!!」





 でも、その夢も多分ここで終わる。欲をかいちまった。2匹目のドジョウをねらって、溺れちまった。




 NNKが今月の頭に放送したニホン初の探索者の密着ドキュメンタリー、"バベル・オブ・ワイルド" このテレビ不振の時代に驚異の視聴率59%、今、世界はこの探索者と言う存在に皆が注目している。




「ひい、ひいい?! おい、あの屋根に化け物がいる! 逃げろ!」




 この前の大統領の会見のインタビューではたまたま街頭でインタビューをした相手がまさかまさかの会見での大暴れ。




 なぜあの時、すぐに気付いてもっと尺を稼げなかったのか、撮れ高を逃したミスを挽回しようとして欲をかいちまった。




 このタイミングでのバベル島のドキュメンタリー番組、探索の密着取材が無理でも島の生活を上手いこと絵にして放送してみるという企画はすんなりと通った。





「え、なんだ、あの光……?」




 この仕事が好きだった。現実と虚構の狭間。人が見たいものを作って、放送して、それが例えウケてもうけなくても、この仕事が好きだった。




「イギリス街の方だ!! 逃げろ、逃げろ逃げろおおおお!!」





 でも、俺たちが作っていたものは、なんだったんだろう。あれはもしかしたらTVショウと呼ばれていたものは、ショウですらなかった。







「あ、あれはなんだ?!! おい!! なんか馬鹿でかいのがいるぞ!?」




「ゆ、夢? 夢か? これ……」




 街並みの向こう、イギリス街の方角に生まれた光、そして





「$$€¥慈€¥5」




 認識出来ない音だった。空に響いて雲に反射して地面に広がる、そんな音。



「な、なんだ、なんだ、あれ」




 カメラマンの品川が立ち尽くす。俺も足を止めてしまっていた。





 こんなのが、いるならーー




「俺たちの仕事なんてーー」



 呆然と、俺は、俺たちスタッフ班は立ち止まってしまった。




 その、化け物。巨大さ、ハリウッドの映画に出てくる怪物がそのまま現実に現れてしまった。





「テレビ屋なんていらねえじゃねえか……」












「てゆーか、コレチャンスじゃね」



「「は?」」




 大島と俺は一緒に逃げて、一緒に立ち止まっていた演者。この番組唯一のタレントの言葉に素で言葉を返していた。





「え? だってえ、ジョーシキで考えてえ、この絵ってマジアゲません? この前のぉ、NNKのバベルオブワイルドよりもヤバい絵が撮れますよお?」




 ミニスカートに、ネクタイの緩んだシャツにカーディガンのアホみたいに綺麗な美少女が指でワッカを作って、あの化け物を覗き込んでいた。




 超人気4人組アイドルロックバンド"sp" 彗星の如く現れ、一気にニホンのアイドルシーンを書き換えた規格外のスター。





 人形のような顔立ち、ニホン人離れしたスタイルに、普段の緩さからは考えられないプロ意識。




 たまたま、新人の頃にウチの局が特番を組んだ、それだけの縁で義理堅い事務所が優先的にウチを出演先に選んでくれる。




 いわば、超VIPだ。




 キズモノに、いや危険な目に合わせることすらアウト。俺のクビだけでは済まない。今や彼女はニホンの芸能界においての光の1つだ。





「いや、美礼ちゃん…… それは」





「ちゃん?」




 ギャル怖い。




「あ、いえ、美礼ちゃんさん、それは、いくらなんでも……」




「いやいやいやー、D、もうこれえ、フツーに考えても逃げても生き残れるかわかんねーしょ? だからあ、どうせ死ぬなら仕事して死んだ方がエモいよ、絶対」




「な、何言ってんだ!? 状況理解してんのか?!」




「あははー、まあね。あ、ごめん、ちょっと電話したいところあるから、ちょい待ち。……あ、P? よかった、電話つながったねー。うん、うん、今さあ、マジピンチ。てゆーかウチ今日死ぬかもだから、サキサキとユイユイとらねらねにマジごめんって言っといてー、あ、あとオタク君に代わってもらえるー?」





「あ、わわ、ど、どーすんすか? D。美礼ちゃんさんに何があったら俺たち、てか、ウチの局ががが」




「お、落ち着けえええ!! いいか、最悪相手はガキだ! 無理矢理でも抱えてーー」





 俺は叫びながら、商売道具に目を向ける、今はまず逃げないとーー





「うん、うん、オタク君、今までマジあんがとね。ほんと楽しかったよ。徹夜でダゴンリムの素手縛りとか、金鉄99年とか。ほんと、たのしかった。そんで、好きだよ。メンバーの誰かと付き合うんなら許す、でもそれ以外の女はダメだから。え、無理無理、ウチの性格わかってるでしょ?」






 あーー。




 言葉を、失った。



 その表情、タレント、才能を表す言葉、間違いなく彼女にはそれがある。



 人を魅せる才能。



 大島も同じように、カメラを構えて彼女を撮っていた。





「うーし、湿っぽいの終わり、あー、なんか勢いで告っちった!! ヨッシ! 切り替えよ! 仕事の時間だ!」





 ぽーいと携帯を投げ捨てた彼女が、きらきらの金髪を手でバサり。





「大島さん、さっきのはカットね!! 炎上しちゃうからさー。 あ? これ、生放送か。にひひ、電波が悪いの祈るしかないねー」




 いたずらがに笑う美礼ちゃんさん、可愛すぎて死ぬ。いや、マジで死にそうだが。




 でも、なぜだろう。何か、急に、()()()()



 逃げ惑う人々も、上を見上げれば遠くに確認出来るあのでかい化け物も。





 むしろ、なぜか、俺は、俺たちは





「なんかさー、ウチ。この前もそうだったけど。この島来たら気持ちよくなるんだよね。酔ってる感じ? あ、お酒はきちんと18になってから飲んだからね?  なーんかアガッてきちゃうなー」




「D、お、俺も撮ってみたい…… あれを、あんなのを撮れたらおれ、やべえカメラマンになれそうな気がする……」




 集音機能付きの特殊カメラを抱えた大島が、目をギラギラさせながら美礼ちゃんさんを、逃げ惑う人々を、化け物を撮り始める。





「……美礼ちゃんさん、なんで、君はそこまで出来る? 死ぬかもしれないんだぞ、君みたいな! 未来も可能性も! 全てを持っている子だって死んじまうんだぞ!」




「え? 当たり前っしょ? 人は死ぬじゃん。この前オタク君に借りた漫画でも言ってたよ。人には終わりがあるからいいんだって。それにさ、ディレクター」




 美礼ちゃんさんが、覚悟ガンギマリ系ギャルが、化け物を見つめてつぶやいた。




「負けたくないコがいるんだよねー。リンリンって言う超絶完璧女子なんだけどー。その子もここで、この島で働いてるプロなんだ。今日も、マジ半端ないお仕事にいくって言ってたし」




「は? リンリン?」




「そー、リンリン。その子、昔はなんか世の中全てくだらねーみたいな顔してたダウナー系だったんだけど、探索者始めてからは人が変わったみたいになってさー。なんだろ、たまに会うと、ああ、この子生きてるんだって、羨ましくなんだよね」




 遠い目をしてた。俺はその子が急に大人びたような錯覚を覚えた。




「あの子を何が変えたんだろうねー。まあ多分オトコなんだと思うけど。ま、とにかく負けたくない的な? 仕事に対するガチさで負けたくないんだなぁ、これが。生きて、それから死ぬの」





「い、生きるって、なにを」




「仕事。ウチは仕事が好きなの。時にアーティスト、時にアイドル、で、今はテレビタレント。テレビに出て、みんなにハンパないもの見せて喜んでもらう。それが今のウチの仕事、ねえ、ディレクター」




 俺は、仕事が好きだった。



 何故か、そのことを今、考える。




 ギャルが、不敵な笑みを浮かべて。





「ディレクターの仕事は、何?」





 雷撃が、頭の天こちからつま先まで駆け抜けた。




 あ、そうだ、俺、仕事が好きなんだ。





「俺の、仕事…… 俺の仕事は、面白いモンを世間のクソどもに届けること……  消費者の皆様……」




 頭が茹だる、心臓が弾ける。



 はは、なんた、コレ。たのしい、超たのしいぞ。





「へへ、じゃあウチと、同じじゃん。大島さん、カワイく撮れてるぅ?」



「最高だ! 美礼ちゃんさん!」




 大島が叫ぶ、馬鹿だ。このギャルも、大島も、そしてーー




「あああ!! くそ! よっし! ロケ続行! あのNNKのバベル・オブ・ワイルドを超えるぞ!! 伝説の番組にしてやる!!」




 そしてこの俺も!! 馬鹿だ!


 でも、そうだ、俺には夢がある。



 有名なディレクターになってバンバン番組をヒットさせて、大金を稼いで、みんなにちやほやされてアイドルと結婚する夢が。





「大島、カメラ同期!! 美礼ちゃんさんはいつも通り自由に!」




「はい!」



「了ピ!」





 そう、たまにはいいだろう、こんな風に夢に、命を賭けても。





「オほ、かまクラバくうう」




「「「あ」」」




 路地裏の裏、しまった。上だけを、でかい化け物ばかり見過ぎていた。騒ぎすぎていた。




 クモみたいな体に、逆さまについた首。



 夢も、決意も、プライドも、命を賭けたその全ても、ビロビロの化け物の腕に差し貫かれて終わーー













「ほんぎゃああああおああアアアアア、あ! あぶねえええ!! 伏せろオオオオオ!!」




「「「へ?」」」





 空から、やまびこみたいに声が鳴る。俺たちはとっさにその場に馬鹿みたいに伏せて




「う、ギャァアアアアアアアア?!!」




「むろマチ?!!」




 路地裏から現れた化け物に、空から吹き飛んで落ちてきたそれが衝突した。




 パラパラと破片が溢れる。穴の空いた壁、砂煙、そして




「あああ、いってええ、クソ、近接戦もなかなか強えじゃねえか、あの化け物。おお、またいい感じに化け物がクッションになってらあ、ラッキーラッキー」





「え、あ、あ??」




 砂煙が晴れる。



 人影、路地裏から出てきた化け物の肉片があたりにバラバラに飛び散っていた。肉片と砂煙の間から現れる。




 それは、耳だ。



 吹き飛んできて、化け物をクッションにしてミンチにしたその存在な耳だった。




 頭に張り付いたグリュグリュの肉は耳穴のように複雑に。


 まるで、耳のお面をつけた人間、男?




「え、キモ」




 ギャルの容赦ない言葉が、砂煙に混じった。




読んで頂きありがとうございます!ブクマして是非続きをご覧ください!

 


<苦しいです、評価してください、年末年始も更新してするので仕事の方も休みの方もみかん食べながら読んでください!> デモンズ感






ちなみにこの覚悟ガンギマリ系ギャルをメインヒロインにしたお話、"オタクに優しいギャルたちは俺が守護らねばらば!!" シリーズはしば犬部隊の頭の中でのみ連載中です。機会があれば現実に出力されるかもなのでその時は是非ご覧くださいませ。

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― 新着の感想 ―
脳内のみ連載残念
まぁキモイよな。わかる。
[良い点] オタクに優しいギャルたちは俺が守護らねばらば!! を検索して出てくる日を楽しみにしております [一言] 更新お疲れ様です
感想一覧
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