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凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフ 【書籍6巻発売中!】  作者: しば犬部隊
部位戦争、"耳対脳みそ、内臓

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97話 耳たぶビラビラやってくる

 



 〜田村救出より、少し前。"耳男"誕生直後〜




「う、よいしょっとお! 耳たぶが邪魔で、パーカーが入らね、え!!」




 いそいそと脱ぎ捨てていた服を着る耳男、味山只人。



 探索者パーカーにカーゴパンツに踏み抜き防止鉄板入りのシューズ、そしてベルト。



 完全に、どこに出しても恥ずかしくない知能がある厄介な感じの化け物だ。




「うわー、完全に癒着してんよ、これ、どうすんべ。俺のハニーフェイスが、イヤーフェイスに……」





 アパートの出入り口に泊めてあったタクシーの窓、そこに映っている自分の顔、かお?を見つめる。





「あれ、でもなんかよく見てたら、割とかっこいい? なんか、ダークヒーローに見えないこともーー」




「いや、流石にそれは完全に化生の域だよ、ね、朝顔」



「え、そうかな。私は結構この姿の味山お兄さん、アリかも…… 夕顔」




「えー、趣味わるーい」




「ひでえなあ、夕顔さん、これでも割と見た目には気を遣って…… なんで?」




 素で、味山が首を傾げる。普段より頭が重たくなっているのでよろめいた。



「え? あめりやの朝顔さんに、夕顔さん? え?」




 どう言うことだ?



 いつ、からいた? あまりに唐突な登場に味山は混乱する。気づかなかった、いや、そもそも、この状態の街をこの2人はここまで無事に?



 あまりある疑問と、わけのわからなさに味山が固まっていると






「うふふ、やーだー、味山さん、私たち、お名前教えてますよねー」




「ふふ、そーだーそーだぁー。あんなに情熱的に迫られて、つい教えちゃったのにい。よんでくれないのは傷つくなあ」





 味山の顔に付いている耳穴を見上げる双子が、甘い声で交互に呟く。




 朝顔と夕顔。雨霧と同じあめりやの花達。あのたのしい合コンのとき以来だ。




「あ、ああ、すみません、げんにょさん、そじょさん」




「「あー、ふふ、覚えててくれたんだあ、うれしー」」




 2人の美少女がにまーっと笑う、見た目は幼いはずなのにその黒いコートやタイツ姿が妙に扇情的だ。



 黒曜石みたいに暗く輝く黒い眼、白磁のように白い肌。その美しさはやはり、雨霧に似ているような気がする。



 黒い髪にはあのお揃いの奇妙な形の髪飾りが揃っている。



「いやあ、そりゃ2人のお名前を忘れるなんてーー いや、じゃなくて!!」




 あまりに自然な双子の登場に、思わず味山が耳穴を広げて叫ぶ。化け物の威嚇行動にしか見えない。





「わ、びっくり」



「わ、大迫力」




「あ、すみません、えっと、だからですね、え? どう言うこと?」




 味山がワタワタしながら2人に話しかける。





「ふふ、変なの。あの九千坊だけでなく、李靖にすら並ぶであろう強き武人にして、鬼狩りの魔人、鬼裂。そして私たちよりももっと古く、あの光すらも恐れるだろう火葬の人、それら全てを宿し、あまつさえ友とした貴方」




「なのに、妙に人臭いのね。ふふ、歪だわ。ああ、恐ろしいものね」






 2人がブカブカの黒いコートの袖で口元を隠しながらクスクス笑う。



 は?



 味山が腰のベルトに手をかける。




「九千坊…… 待て、どこでそれを…… 鬼裂やジャワのことまで。げんにょさん、そじょさん、あんたらは、…… いや違う、あんたら何でここに?」




 耳男が真面目な声を向ける。



 クスリ、黒いコートの双子が笑い



 そして、言葉が重なった。






「「世界を壊そうと思ったの」」



「「本来なら、ここで私達の可愛い雨霧が死んで、私達は狂い、世界を壊そうとしてたの」」




「「まあ、でも、どうせあの忌々しい光に滅ぼされるのでしょうけど」」





「何言ってーー」




 言いかけた味山、脳裡についさっきの記憶がーー






 TIPS€ エンディングナンバー74"英雄と仙女"





 TIPS€ 条件達成、耳との同一化が進んだ為、秘匿されている情報が開示される。





 TIPS€ 朝顔と夕顔は仙女だ。神話の時代において朝顔は玄女、夕顔は素女と呼ばれていた。偉大なる女仙のうちの2人。中華人民共和国の富国政策"千人計画"と同時に裏で進められていた"仙人計画"で偶然、再現に成功。本来の仙人計画の目指していた目的とは異なったが、彼女達はオリジナルに近い形でこの世に再び生を受けた。




 TIPS€ 今のお前なら、奇跡が起きれば殺すことも出来るだろう








「クスクス、見たんじゃないんですか? そのよく聞こえるお耳が教えてくれたでしょう? ねえ、そじょ」



「ええ、げんにょ。私たちがどういうものか貴方はもう知っている」





 味山が、わずかに退がる。




 小柄な美少女2人の圧に、退がるパーカー姿の耳男。かなりシュールな絵だ。





「仙……人…… まじ?」




「「正解。ほんとにわかるんだね」」




 クスクスと笑う2人、耳男になってかなりテンションが高い所に冷や水をぶっかけられたような感覚。




 自分より遥か上位の存在を前にしている感覚が、味山の身体を硬らせてーー





「あー、うん!! わかった! もう考えるのがめんどくせえ 玄女さん! 素女さん! 1つ質問! いいですか?!」




「「はい、いいですよ」」




「あんたらの正体とか、仙人ってなに? とかいろいろ聞きたいことはあるけどもう情報量が多すぎて手に負えん。だから、一つ。あんたたちは、俺の味方か? それとも」




 右腕には不死すら焼き尽くす火葬の火。




 左腕には鬼すらくびり殺す鬼狩りの骨。



 エラに潜むは大化生の力。



 そして体には只の暴力装置、恐ろしき耳の血肉。




 味山只人が、身体に、道具に力を込める。




「それとも、俺の敵か」





 耳たぶが揺れる。




「「雨霧の味方よ」」



 双子からの言葉、返答を間違えれば、即ーー







「しゃあ!! なら問題なし! つまり俺の味方!! 良かったー、解決! 協力してくれ! 2人とも強いんだろ!?」





「え?」



「へ?」





 キョトンと、双子が目を丸くする。膨れ上がっていた気配がしぼんだ。




「いや、なら味方だろ?! 俺は雨霧さんも助けたい! このタイミングで俺に会いにきたんだ! 島の連中みんな助かるなんか最強にいい感じの策があるんだろ?!」





 よっしゃ!! これならいける! 仙人とかなんかやばそうな奴らが味方なら!



 味山が息を荒く、双子に詰め寄る。絵面はもちろんやばい。





「……わたし、てっきりあなたは島の人々を無視して元凶を殺しにいくのかとおもってたわ」




「……だから私たち、あなたを洗脳して助けてもらおうと思ってたのだけど」




「こええよ!! んなことしなくても協力しましょうよ!」




「……なぜ? あなたは人を必要としない生き方ができるのに」



「……なぜ? 雨霧はあなたの仲間でも、ましてや番でもーー」




「その辺の問答はもう終わらせたんで大丈夫です! 一言でいうなら、あん時のおでん! あれだ!

 すげえ美味かった! またあれがみんなで食べたい! 玄女さん、素女さん! そして雨霧さん! ついでにあのおでん屋も助けねえと! 美味いメシのために! 以上、閉廷、解散!」




 耳男が、肉の狭間から一気に捲し立てる。




 儚げな少女たちに唾を飛ばしながら叫ぶその有り様は、駆除されても文句が言えないものだ。




 一瞬の間、少女の姿に身をやつした偉大なる神仙達。




 神に等しく、数々の英雄の後見人として存在していた彼女たちは、只の凡人の言葉に目を白黒させてーー







「「ふ、くふふ、くっふふふふ。かふふふ!! お、おでん! ああ、おでん、ええ、たしかに、確かにあれは美味しかったわ。 ああ、嗚呼、真是可笑!! ああ、面白いっ、ええ、いいわよ、味山お兄さん」」




「「協力しましょう、化け物と仙人の目的が一致する奇跡なんて、私達の時代でもそうはなかったわ」」





 同じ笑い声、同じ笑顔で、神仙が笑う。



 耳男もつられて笑う。ひどい顔だった。マジで。






「「味山お兄さん、助けたい人をあめりやに誘導しなさい。この戦いは敵が殺すよりも多くの人を助ければ勝ちです」」





「あめりやに? シェルターとかじゃないんですね」




「「残念だけど、シェルターでは恐らく耐えきれない。シェルター内部にももう、肉の人形が紛れている。中から崩壊するわ」」




「それは。もしほかの連中がシェルターにいたらやばいんじゃ」




「ふふ、あなたにはよく聞こえる耳がある」




「こういう時のための助言よ。世界の奥底にへばりついたモノが届ける言葉に嘘はないわ」






「でも、あめりやに集めたらそれはそれで、あの化け物どももあめりやに来るんじゃ?」




「「ふふ、あら、野暮な質問ですね、お兄さん。私達の領域にあのような下賤なものを入れるとでも?」」





 TIPS€ あめりやはすでに玄女と素女の力により結界の影響下にある。彼女たちの許可なく踏み入れることは何人たりとも出来ないだろう




「ただ、結界に殆どの力を使ってるから、私たちはあめりやを動けない」




「道術でこういう幻影を送るのが精一杯。だから、雨霧をお願いするわ」




「ああ、なるほど。よし、だいたい了解! あとは強く当たって流れでいきます!」




「ええ、雨霧をお願いね」



「武運を、味山お兄さん」




 映像の乱れたテレビみたいに2人の姿がブレ始める。




 味山は頷く、耳たぶがぶるんと揺れた。





「ええ! 約束します! またあのおでん屋に!! 玄女さん! 素女さん! ありがとう! よっし、行くか!!」




 味山が、足に力を込める。



 TIPS€ 耳男の状態でいる時、お前の身体は常時"耳の大力"が発動している。耳の大力を脚力に使用すれば文字通り化け物のような速度で移動できるだろう






「しゅっぱあああああああ!!つ!あああ、はっや!?」





 あまりの速度に、味山が思い切りこける。やば、地面にぶつかーー




 TIPS€ 気をつけろ! 味山只人!! こっちはこっちで忙しいのだ! あまり世話は焼けんぞ! あ! これ! キュウセンボウ! そんなもの齧るな! ぺっしなさい! ぺっ




 声が。味山の中にいるあの平安ガイコツの声がする。



 身体が地面に激突する寸前、左腕、骨の腕が地面に伸びて身体を支える。



 そのまま、腕一本で身体を支え、縦に一回転、そのまま走り続ける。




「うおおおお?! すげえ! さすが先生!! おっと、よし、少し、慣れてきた!」




 味山が駆ける、石畳を踏み抜きバベル島を駆ける。





 ヒントが、届く。





 TIPS€ 特殊ルート情報開示。地獄で会おうぜ! 



 達成条件

 メイン目標の達成、"アレフチーム、全員集合!"

 €アレフチームとの合流までに敵、人知竜の端末を50%以上始末する。

 また、島の抵抗戦力の最低1つを救出する。



 オプション目標開示 "たのしい仲間たち"

 €味山只人と関わりのある全ての人々を助ける。オプション目標を達成した場合、島の防衛戦においてより有利な戦況を得る。


 オプション目標その2 開示 "ブルブル。ぼく悪い化け物じゃないよ"

 €突発的な状況で発生する人々の救出をいくつか達成する。達成した場合、ーーーー







 TIPS€ お前は何を選ーー






「ぜええんぶじゃ、ボケェええ!! 全部やるぞ! トロフィー取得率100%で勝つ!!」





 耳男が叫ぶ。




 TIPS€ 付近のオプション目標通知、ニホン街メインストリート入り口。"国連常駐軍第6歩兵隊第2巡回部隊、救出"、ニホン街メインストリート中央、路地裏"田村英夫、自衛軍抵抗戦力と民間人、救出" 発生。





「よし、まずはそこから!! 待ってろよおおおおお!!」




 味山が走る。




 気分は完全に、トロフィー厨ばりの完璧主義者。なんの取りこぼしも許されない、許さない。




 耳男の力の全能感が味山を酔わせる。



 酔った耳の化け物、控え目にみて、言い訳のしようのない化け物だ。




 そのことはあまり考えないようにして、味山が地面を蹴る。



 電柱よりも、建物よりも高く、高く。





「皆殺しにしてやるぜえええええ、化け物どもおおお!!」




 耳たぶが、揺れた。







 ……

 …





「……もう見えなくなったね、素女」




「……そうだね、玄女」




 楽しそうに叫びながら駆け出したあの男はもう、混迷の街の中に飛び込んだのだろう。



 仙術で紡がれた彼女たちの感覚器が、あの醜い肉の人形達が壊れていく音を拾う。





「さて、あめりやの結界を本腰いれて固めようか。下から嫌な匂いが強くなってるしね、素女」




「そうだね、玄女。アレが万が一完成しても、あめりやだけは守れるようにしておかないとね」





 彼女たちの幻影が消える、あめりやにある本体の元へ意識が還っていく。




「ねえ、素女」



「ねえ、玄女」




「「あ、どうぞそっちから」」



 互いに目を丸くして、同時に笑う、





「「じゃあ、同時に」」





 2人は同じ方角を見つめる。



 あの見た目が完全にアウトな凡人を。






「「雨桐と、共有でもいいんじゃないかな」」





 互いに顔を見合わせる。



 神代においての関係は、現代双子という関係になってから大きく変化していた。




「「あの子が怒る気もするけど、それもまたーー」」





 彼女たちもまた、只の人間に近く。






読んで頂きありがとうございます!ブクマして是非続きをご覧ください!



<苦しいです、評価してください、温かい感想ばかりありがてえ、優しい読者さん……> デモンズ感

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― 新着の感想 ―
一度女難の相がないか占ってもらったほうがいい……顔が耳になってるけども
[良い点] こいついっつもやべー女に興味持たれてんな [一言] すき
[良い点] RTAはっじまっるよ〜! なところ
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