94話 プランC"IQ3000の超てんさいてきな頭脳による最強無敵計画、その名は
「え、選べ? こ、こんなクソゲーの選択肢みたいなもんを? ふ、ふざけんなよ、まじで」
TIPS€ 時間はない。お前は英雄ではない。選べるのは1つだけだ。何を捨てるか
時間がない、わかっているのはそれだけ。今から、自分は選ばなければならない。
たった2つのクソルート。誰を殺し、誰を生かすか。誰のために、なんのために、その力を使うか。
貴崎か、ほかのみんなかーー
「……なんで、俺が…… ぁ」
あ、はは。いま、俺……
味山が何かに、気付く。
自分の中の感情、自分という存在の素。
ダンジョン酔いは、そういうものを剥き出しにする。
今、俺はーー
TIPS€ *完成された自我(社畜)+5
この人物の自我は隙間なく完成されている。もはや何人たりともこの人物の自我に変革的影響を及ぼすことはできないだろう。長い社会人生活によるストレス、挫折と倦怠感にまみれた栄光なき経験からこの人物の人生に対する価値観は干からびている。他者からの誘惑、強い言葉に反応する感性は全て枯れ果てている。他者からの精神干渉、精神汚染に対して強い耐性を持つ。また魅了状態に陥りにくい。哀れな。
TIPS€ 味山只人は1人で完結している。
「あ…… あ、ああ……」
TIPS€ お前は今、なんで俺がこんなめんどくさい事を、と考えた
「……ああああ……」
TIPS€ お前は今、その有り様ほど焦ってはいない。なぜならお前の本質はどちらでもいいと知っているから
「……はは……」
笑ってしまった。
TIPS€ 何故なら、お前は本質的に他人を全く必要としないからだ。誰が生きようと、誰が死のうと、お前の生存には関係ない。
「あー……」
かさり。風に吹かれて、便箋が動く。
選ぶ。捨てる、手に入れる。誰かのために。
味山は、自分の唇がどうしようもなく笑っていることに気づく。くだらねえ、なんでこんなことに悩まないといけないんだ。
貴崎凛がなんだ、アレフチームがなんだ。雨霧が、ほかの人間、自分以外の他人がなんだっていうんだ。
「俺は…… そういうの、いい……」
想像する。この先、なにを選んで、なにかを捨てた自分を。
ああ、今と多分なにも変わらない。生き残った誰かと適当に連んで、訳知り顔で相談乗ったり、余裕なフリで振り回されてみたり。
こいつにはどう対応すればいい、この反応をかえせばいい。
アレタ・アシュフィールド、貴崎凛、雨霧。どれも比喩の表現でなく、絶世の美女。
そんな彼女らにあれほど迫られておきながら、味山のような当たり前に俗な男が耐え切れるのは何故か。
どれも、本質的にはどうでもいいからだ。
別に、彼女らがいてもいなくても味山只人の生存にはなにも関係ない。
「……ひひ」
ソフィ・M・クラークには、アレタ・アシュフィールドが必要だ。
グレン・ウォーカーには、ソフィ・M・クラークが必要だ。
アレタ・アシュフィールドには救うべき他者が必要だ。
じゃあ、味山只人には?
「……なんも、いらねえじゃん……」
誰かが、誰かを通して幸せを感じる。ひとが当たり前にもつ暖かなもの。
TIPS€ お前はどうせ辿り着く。誰が死のうと、誰が生きようと関係ない。お前は必ず、自分の敵の喉元に辿り着く。
「おれ…… そうだ、最近、たのしかったから、なんか勘違い、してたんだ…… 助けるとか、救うとか…… らしくねえ」
TIPS€ 例え、仲間を失おうが、例え、お前を慕う少女を見殺しにしてトドメを刺そうが、例えお前を想う花が無惨に食い荒らされようが、お前にはなんの関係もない。
誰もが見上げる52番目の星に目が眩まないのも。
鋭く、美しい、凛とした刃の有り様に惹かれないのも。
甘く、すべてを蕩かす桃の香りに狂わないのも。
TIPS€ どっちでもいい。なにも変わらない。だから、お前が選べ。お前は、お前のまま、この箱庭を進むだろう。
「あ、そうだわ」
味山が立ち上がる。
身体が軽い。
そうだった、最近、忘れていた。
俺は、1人だ。
誰と一緒にいようが、誰と笑い合おうが、誰がいなくなろうが。
「ま、人間、死ぬときは1人だ」
TIPS€ 多くの人間はその事実を受け入れることが出来ない。だからこそ、人は己に足りないものを他者に求める。愛とは、その補完のためにある。
TIPS€ 味山只人に、愛はいらない
「よし、アレフチームと合流するか。それが1番てっとり早い」
これでいい。俺はこれでいい。
なにを捨てても変わらないんなら、なるべく自分の生活に、日常に影響ない方を選ぼう。まだ、探索者でいたい。いたほうが、
「たのしいから」
味山只人の中に、答えは初めから備わっていた。
物語の主人公が他者との交流、魂のつながり、英雄がヒロインの存在によって覚醒し、己の中にある答えに気づき、立ち上がる。
それが英雄、素晴らしいお話。英雄譚。
「いくか」
でも、味山は違った。
心と魂を通わせたヒロインとのぶつかり合い、交流、愛などの過程を経るまでもなく。
意味のわからないクソヒントとの簡単な問答で呆気なく、自分だけの答えにたどり着いた。
浅い、ありふれた答えに、英雄譚は必要なかった。
どこまでも勝手で、責任がなく、くだらない。
だって、味山只人は、凡人探索者なのだから。
英雄では、ないのだからーー
TIPS€ プランA "このままアレフチームと合流。貴崎凛を見殺しにしてバベル島を防衛"
味山は、地面に落ちたままの便箋を拾わない。かさり、かさり、今にも風に飛ばされそうなそれを跨いで、混迷のバベル島へ進んだ。
もう頭の中には東條、自分を殺そうとした敵を排除することしかなくなっていてーー
「あ、待って、やっぱなし、これ、気分悪いわ」
TIPS€ は?
「いやいやいや、待って待って、え? 貴崎見殺しになるんだろ? 無理無理無理無理、まじで無理。あの手紙読んだあとに、それは無理よ、まじで」
味山が、素早い動作で踵を返し、今にも風で飛ばされそうだった貴崎の手紙を拾う。
びゅおおおお。直後、風が吹く。
味山が握りしめた薄い紙はしっかりと、そのゴツゴツした手のひらのなかに。
その手紙が風に飛ばされることはなかった。
「マジで無理。だって、ほんっと、気分悪ぃもん。俺どんだけ冷たい奴なんだよ」
TIPS€ ……プランB"貴崎凛の救援に直行し、人知竜を始末する。それ以外の全てを犠牲にする代わりに
味山が、進む。
その胸に少女からの想いが籠った手紙を携えて。
貴崎、お前が言いたかったこと、伝えたかったこと、直接聞きにいってやるよ。だから、死ぬなよ。
味山は、たった1人の少女のために全てを捨てる決断をーー
「あ、待って、これも無理。バベル島崩壊とかマジ洒落になんねえじゃん。いかんいかんいかん、一時のテンションでそれはまずい、笑えん」
TIPS€ は?
「いや、ていうか冷静に考えて被害デカすぎん? こんなん俺の知り合いほぼ全滅じゃん。あと朝顔さんと夕顔さんの詳細がヤバ過ぎる。なに、世界破壊って。魔王?」
TIPS€ お前が選ばなければそうなる。貴崎凛を救うのならば進め、バベル島を救いたいのなら進め。選べるのは1つだーー
「いや、普通に無理」
TIPS€ は?
「俺さあ、多分、まああんま考えたくないけど、貴崎が死んでも、雨霧さんが死んでも、まあ、アレフチームの奴らが死んでも、それで、アイツらが死んでも多分お前の言う通りなんだわ」
ぐりぐり、肩を回す。身体の調子は悪くない。
「悲しいよ。知ってる奴らが死ぬのは。寂しいよ、知ってる奴らがいなくなるのは。でも、多分それだけだ。あとは普通に生きていける」
想像する。
最悪の未来を。
泣き喚き、後悔に浸り、でも、その日の晩には普通に飯を食って、風呂に入って、熟睡できる自分を。
普通に、味山只人はそれが出来る。誰がいなくても生きていける。
TIPS€ そうだ、お前は進める。お前は殺せる。何を失おうと、何を犠牲にしようとその在り方は何も変わらない。
「進む、あいつらを捨てて。誰かを捨てても、俺は生きていける」
TIPS€ 全てを犠牲にしても、当たり前になんの傷もなく目的を果たす。捨てろ、平気なんだ。捨てろ、進め。捨てーー
TIPSが告げるのはいつだって、紛れもない事実。世界に刻まれた真実をーー
「メシがまずいわ」
TIPS€ は?
「メシが、まずい」
TIPS€ は?
「だから」
TIPS€ は?
「メシが、まずい!! それは無理! そんなマズメシ食えるか! ボケ! 死活問題じゃ! あいつら見捨てても、メシは喉は通る!そのあと、風呂、なんならサウナもいけるわ! そのあと超熟睡出来る! 自信がある! でも、絶対、ぜええああったい!!」
馬鹿みたいな大声で
「アイツらこのままほっといて食うなんてまっずいわ!! そんなメシ!!」
馬鹿みたいなことを叫ぶ。
「そんなマズメシ!! 食えるかあああああああああ!!」
ぜえ、ぜえ、と肩で息をする。
答え。それはあまりにも浅くて、ふざけていて、物語にふさわしくないーー
「メシがまずいのだけは我慢出来ねえ」
只の人の答えだ。
TIPS€ 全条件達成。
「俺よ、元々考えたら何か捨てるとか苦手なんだよ。1つだけ選ぶとかよ。ハッピーエンド好きだし、初見でハンクとコナーをエンディングでハグさせてカーラたちをカナダに送り届けてマーカスはキスさせたし、初見でトレバーとマイケル殺したくねえからフランクリンで"死を覚悟する"したし、初見でイエス・マンと一緒にやってニューベガスの支配者になったし、シリはきちんとウィッチャーになったし、全てを救うためにセーブデータも消し…… いや、アレはまた別か……」
ブツブツと呟く味山。笑う。
誰かの作った創作物、どこかの誰かの希望の物語はたしかに味山に届いている。
希望は滅びない。最高のものだ。どんな形であれ、人はそれを受け取ることが出来る。
TIPS€ 答えを。何を選び、何をーー
「ぜんぶだ。目指すのは1つ。ありふれたご都合主義最高の、トゥルーハッピーグランドエンドルートだ」
TIPS€ 間に合わない。人の身では広大なバベル島の全ての問題を解決し、大穴に挑むことは出来ない。貴崎凛は死ぬ、バベル島は崩壊する。
「人の身では。お前、なんだかんだヒント、くれるよなあ」
TIPS€ なにを、する?
「探索者に必要なモン知ってるか? 遺物? 探索道具? 残酷性? 生き汚さ? 強さ? イかれた精神? 運? 違うね、おれにいわせりゃ全部違う」
TIPS€ ……状況打破のための情報整理
「どいつもこいつもそれが足りねえ。俺は不憫で仕方ない。俺のような超絶かしこい天才にしかそれは備わってねえからな」
TIPS€ まずは己を知れ
「アシュフィールドにも、貴崎にも、ほかの全ての探索者にはそれがない」
TIPS€ 保有技能、参考
TIPS€ *神秘の友人
神秘の残り滓を正しく、敬意を持って料理し、食べた者の称号。この人物に対して、過ぎ去りし忘れられた神秘達は力を貸すだろう。人とは食事によりその存在を拝領して生きていく存在である。L計画、アプローチ2はここに完結した。そしてここから発展していく。理解し、語り、力を借り、共に笑う。それはもう被食者と食者の関係から一歩進んでいる、それに名をつけるのならばーー 偉大なる神秘の残り滓、彼らが生前得られなかったのはそんな当たり前の凡人らしい時間だったのかも知れない。L計画、アプローチ2は再開した。彼らはお前の友人だ。より多くの神秘の逸話をその身に再現出来るだろう。
それは味山の夢に棲む、奇妙な友人たち。
TIPS€ *2人目の火葬者
それは友人の1人がもたらした大いなる火、祓い、悼み、送る。火とは、まったく正しい、人間が化け物に抗うための力。
TIPS€ *耳の#部位保持@/者
それは恐ろしい耳から植えられた耳糞。凡人とその恐ろしい怪物の在り方は似ていた。
「探索者に1番必要なモン、化け物をぶっ殺して目的を達成するために1番大事なもの、それはなーー」
TIPS€ *耳の血肉
「IQ3000の超てんさいてきな頭脳だ」
TIPS€ 使用制限なし。ただし、使えば使うほど使用者の肉体のうち、"耳の血肉"が占める割合が多くなっていく
「ひっひっひ、なあ、おい。気合い入れろよ、キュウセンボウ、鬼裂、ジャワ、ガス男、そして」
TIPS€ カウントが100溜まった時点で、強制的に"耳の化身"が発動。精神値判定に失敗した時点で、お前は"耳"となる
耳の血肉カウント1
「クソ耳」
TIPS€ プランC "超てんさいてきな頭脳による最強に無敵計画ーー
上着を脱ぎ、ベルトを外す。ついでにカーゴパンツも脱ぎ捨てた。
11月の朝は、寒い。
パンツ一丁になった味山は大きく、息を吸った。
「ジャワ。火、借りるわ」
わずかに震える右手に、灯るのは火。
はじまりの火葬者は、その火を他者の為に使った。
では、2人目の火葬者、味山只人はその火を何に使う?
味山は、握りしめた。貴崎凛からの手紙を。
震えは止まっていた。
「っ、ふー。斧だと中途半端だからなあ! こーゆーのはよお! 0か100かで行くぜええええええ!!」
味山只人はその火を、自分に使う。
ぱち、ぱち。燃え盛る火、たいまつの右腕で味山が自分の胸を撫でた。
ぼおう。
火が、味山の身体に燃え移る。それは右腕に火が灯るのとは違う。
「う、ぎゃああああああああああ?!!っ!! 死ぬううう、あついうういいいいいいい」
熱い、痛い。身体の水分が一瞬で蒸発し、すぐに皮膚が焼け爛れ、焦げた臭いが鼻に入り込む。
暴れ回る。
自分が始めたことなのに、殺虫剤で殺されそうになっている虫けらのように味山は地面をのたうち回る。
痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
いたい、いたいたいたいいたいいいいいいいい。
声がもう出せない、喉が焼け落ちたから。
息が出来ない、肺が溶け崩れたから。
目が見えない、眼球はドロドロになって消えたから。
ああおああ
ああ
ああらあわちあとかまあらあああああ、
叫べない。ぽろり、顎が、溶け落ちた。溶けた肉が、水飴のように糸を引いていた。
TIPS€ 耳の血肉、発動。
血肉カウント29
TIPS€ 肉体の損傷が激しい為、カウントは一気に進行する
「ああああああつうううういいい!! あとから、クソ仕様追記してくんじゃねえええあああ、でも、今はそれでいいいいいい」
焼け落ちた喉が、肺が、骨が、肉が、血が。
大いなる火の中で再生する。グツグツに煮えたぎりながらも血が唸り、肉が身体を再構成していく。
血肉カウント57
「あ、ぎゃあ、ああああああああああ」
溶ける。その大いなる火は死すべきものをあるべきところへ。
味山只人の肉体が戻れば戻るほど、その火は勢いを強めていく。
もういい、もう休めと言わんばかりに、哀れな、理からも見放されていく存在を送るために。
「あ、あ、ああああ、ぞれ、でいいいい。じゃわぁ、お前があ、出来なかった、ことをん、おれがやるううう、あ」
慟哭、それすらも火が、炎が燃やし尽くす。
その火は、悼み、送るものだ。この残酷な世界に、もう2度と生まれてこなくていいよーー
「はあああああああい!! ふっかあああああつううう!! ああああああ!! あつううううういいいいい、じぬうううう、ころし、ころし……… ぎ、ぎぎ、死んで、たまるかああああ」
手紙の燃えかすなど、とうに消えているだろう。でも、
味山はそれを見た。手紙の燃えかすに手を伸ばす。
炭化した腕がポロリと落ちる。腰が溶け落ち、胴体と足がわかれる。
まっくろこげに、炭化し、そして、火が収まる。
はじまりの火葬者の大いなる火が、トチ狂った哀れな凡人を焼き尽くした
TIPS€ 血肉カウント 100
「ぎ」
「ぎひ」
ぱらり。唇が溶け落ちて、歯が剥き出しの口が炭をこぼしながらそれでも笑った。
「ぎ、ひひひ、ひひひ。あは、はあ」
ぱらり。
人であったこともわからないボロボロの炭クズが蠢く。
ぱき。白く本当に燃え尽きた灰になった胴体に亀裂が、そこから垂れる、赤い血。
「ひひはひり、ぎ、ひひひHI」
それは出会ってはいけない2つだった。
なんの意味もなく生きる人間と、なんの意味もなく在る化け物。
「は、THE Respawn あ、ああ、ふっかぁあつうう」
ぱらり。
灰が割れて、そこからイチゴジャムが溢れるように血肉が溢れ出す。
焼け焦げた身体を、血肉が覆う、蠢く。
そう、その2つは混ざる。互いが、互いを喰らい合おうと機会を狙ってきた。
化け物が凡人を喰らうか、凡人が化け物を道具にするか。
身体が、再生する。
泣き別れた胴体から血肉があぶれだし、あっという間に脚になる。
びくびく震えながら、立ち上がる。
首のない、焦げて、至る所が溶け落ちた焼死体。
肉が焼ける、脂まみれの空気の中、それが立ち上がる。
ぱきり。
頭だった部分の黒こげた部分が割れる。
どろりとそこから、まろびだす。
大きな、おおきな、向かい合うーー
一対の、お耳。
TIPS€ "耳の化身" お前は耳に飲み込まれ「ち、がう」
ぶりゅん。
耳穴から何かが、はみ出た。
頭、顔だ。
人間の、顔。
髪の毛まできちんと生えている。短髪、黒髪、栗色の目。
「俺は、ちI amが、Yう」
味山只人の、顔。
それが耳穴から、耳糞のように。
ぐじゅる、耳と味山の顔が混ざる。
互いに食い合い、互いに殺しあうように。
そして、1つになった。
「俺は、耳、じゃない……」
ぐるり、白目をむいた味山の顔、それを覆うように耳が顔に張り付く。
お面のように、味山の顔を耳が覆った。
耳穴の奥、栗色の瞳が、焼け爛れた空気の中、見開く。
人間の身体、人間の顔、それに張り付くのは、大きな大きな一対のお耳。
「俺は、みみぃ……」
身体が、戻る。蠢く、張り付いた耳のお面。じゅるり、じゅるり、未だその体を狙っている。
右手には、燻る残火。
「俺は、ホモ・エレクトゥス」
燻る火が、その肉の拡がりを抑えている。
左手は炭化したまま、しかし、骨は元通り。霞んだ灰色の骨の腕。
「俺は、鬼狩り」
その骨に、うごめく肉は近づけない。
首元には、切れ込み。エラのような。それ
「俺は、河童」
エラ動くたびに、肉の動きがおだやかになる。
原人、河童、鬼。耳、そして
「俺は、あじやま、いや、それも違う」
凡人。
全ての道具がここに揃う。
クソみたいに、ハードなバッドエンドしかないクソ人生を、ぶち壊す。
美味いメシのために、味山はここまでたどり着いた。
耳をお面のように被り、鬼の骨を左腕にさらし、河童のエラを首に宿し、原人の火を右腕に燻らせる。
全裸の男。
人、いや。
味山はーー
「俺は、耳男だああああああああアアアアアアア!!! 計画う、成功ウオオオオオオオオオ!!」
TIPS€ "耳の化5¥128*971982 くそ、大バカが。イカレてるのか。
TIPS€ "耳男"
ベロベロにダンジョンに酔い、追い詰めに追い詰められた人間性が限界の馬鹿が考えた最強の計画。
ラーメンにハンバーグと寿司と焼肉と唐揚げとカレーとココアと餃子を混ぜたようなもの。ここに、全ての探索者を超えるトチ狂った化け物が生まれた。それは全ての部位や、世界を担うものにとって、いや、あの女にとっても悪魔、いや、正真正銘の化け物だろう。ついに、あの2つはあの大いなる火すら克服してしまった。ああ、見ていて本当に吐き気がする。キモい。
TIPS€ お前と奴はどうしようもなく似ている。この化け物どもめ、もういい。
「ぎゃーはっはー!! クソ耳いい。よーおやく観念したか!! 使い倒してやるぜええええ!! キュウセンボウ! 鬼裂! ジャワ! 抑えるのよろしくお願いシャス!!」
TIPS€ もういい、お前の好きにしろ、忌々しい、人間め
TIPS
プランC
"IQ3000の超てんさいてきな頭脳による最強無敵計画、その名はーー
耳男計画。成功。
プランCの成功により、隠しルート
"Hasta la vista, baby!!" 地獄で会おうぜ"
発生。
"貴崎凛の生存、バベル島の防衛、アレフチームの援護、味山のたのしい仲間達の救出"
全ての成功が可能になりました
……
…
〜???〜
「………………………………………」
暗い部屋。
そこには人類の始まりから、ありとあらゆる手段を持って、延命してきた存在達が集まっている。
委員会。
誰から始めたのか、誰がその名前をつけたのか。もうだれも覚えていない。
長すぎる生は、世界を使っての戦争ごっこすら飽きさせてしまっている。
しかし、ここ最近、そんな存在達が感じ始めた、なにかの予感、脅威。
それに抗うべく、ダンジョンの遺物を集めさせ、同時進行で遺物すらも超える可能性のある力、"壁画の魔物"の調査を続けてきた。
人間の部位の姿をした"壁画の魔物"、それと関連性を疑われていた凡人の姿ももちろん、委員会の監視下にあった。
バベル島の危機、そんな異常事態でも彼らの目は機能し、凡人の姿をはっきりと捉えていた。
「「「「「「……………ええ……」」」」」」
全員が、ドン引きしていた。
読んで頂きありがとうございます!ブクマして是非続きをご覧ください!
<苦しいです、評価してください、クソ鬱展開に負けず読んでくれてありがとおおおお(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`) > デモンズ感
凡人探索者のたのしい現代ダンジョンライフは頭を空っぽにして読めるクソ小説です。これからもぜひご覧下さい!




