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第99話 目に見えない階段

「ここなんだ」

オレは先ほどパマーダと一緒に来たところまでみんなを案内した。

「ほら、あの崖だよ」

ゲネオスとマスキロはオレが指さした方向をじっと見ていた。

「確かにあるね。なんだか不思議な形をしているけど」

しばらくしてからゲネオスが言った。

「なるほど、そういうわけか」

とマスキロも納得した様子だった。

パマーダは驚いた顔をした。

「え? みんなどうしたの? ひょっとして見えないのは私だけ?」

「そうかパマーダには見えないのか」

とマスキロが言った。

「そうじゃな、よしゲネオス、お前の持っているスティングをパマーダに持たせてやれ」

「どういうこと?」

ゲネオスはそう言いながらも、腰のベルトに差したスティングを(さや)ごとパマーダに手渡した。

パマーダはそれを受け取ってから、あらためて崖の方を見た。

「あ! 確かに。うっすらだけど階段のようなものが見えたわ、私にも」

マスキロが言った。

「おそらくエルフに(ゆかり)の者か、エルフの手によって作られたアイテムを身に着けた者だけが、隠された階段を発見することができるのだろう」

それを聞いてオレは疑問を感じたので、マスキロに尋ねてみた。

「マスキロ、オレはエルフのアイテムは何も持っていないんだが」

「そうかな? まあ見えたのだからよいではないか」


「さあどうしようか?」

ゲネオスが皆に問いかけた。

「行くしかないだろう。この階段はまず間違いなくエルフが隠したもの。であればその行き先はおそらくこの崖の上」

とオレは崖を見上げながら答えた。

「一つ気になるのは、この階段を登っている間、ボクたちは大丈夫なのかということなんだ」

とゲネオスが言った。

「どういうことだ?」

「いや、階段自体はモンスターから見えないようだけど、そこを登っているボクたちの姿も見えなくなるのかなと思って」

オレは頭を抱えた。確かに登っている間に見つかればオレたちは無防備だ。弓矢や魔法の格好の標的となるだろう。

「とりあえず誰か一人行って試してみればいいんじゃない」

とパマーダが発言した。オレとゲネオスはハッとして顔を上げた。

「ゲネオスかサルダドが行ってみて。もし問題ないようだったら残りのメンバーもすぐに追いかけるわ」

パマーダは自分だけ階段が見えなかったことを多少ひがんでいるのか、ややぶっきらぼうにそう言った。

「ではオレから行こう。階段自体にもなんらかのトラップが仕掛けられているかもしれないからな」

オレは志願し、崖に向かって歩き出した。


左右を見渡し、モンスターの数が少なくなるタイミングを探った。そして、誰もこちらを向いていない瞬間を狙って、崖に向かって一歩踏み出した。

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