第98話 谷間の探索
翌朝、オレたちは二手に分かれて情報収集を始めた。
と言っても動くのはマスキロを除く三名。
ゲネオスは単独で、パマーダと俺が組んで動くことになった。
マスキロはミラヤを見ながら留守番である。
ここは大渓谷の中に唯一できた開けた場所であるようだ。
オレたちが通ってきた森を除くと、切り立った崖が両サイドに続いている。
もちろんその一方の崖の上に、エルフの城が築かれているのだろう。
オレとパマーダはエルフの城を正面にして左、ゲネオスは右に向かうことにした。
明日の朝にはモンスターたちがエルフの城に総攻撃をかける。
今日中にエルフたちに接触しないと、その攻撃に巻き込まれてしまうおそれがあった。
焦りを感じつつモンスター・キャンプの中を進んでいったが、この方向はより上位のモンスターに使役されているモンスターや人間がいるばかりで、話のできる相手は見つかりそうになかった。
やむを得ず崖に沿って進んでいったが、細長い狭いエリアゆえか、モンスターの姿は途切れなかった。
しかしある程度進むと、元いたところよりはモンスターの姿がまばらになるようになった。
オレはふと崖の方向に目をやった。そこになんだか妙なものがあった。
「パマーダ、あれを見て」
オレはその方向を指さした。
「何?」
「シッ、あれを」
「あれって、ただの崖でしょ?」
「崖の表面に何かあるのが見えない?」
「何もないけど……」
パマーダは振り返り、怪訝な顔でオレを見た。
「そう……」
確かに近くにいるモンスターも特に変わった様子もなく動いている。
「気のせいか……」
日が中天を過ぎた辺りで、オレたちは元来た道を引き返した。
全員が集まった後、オレたちはそれぞれが情報をシェアした。
しかし実際にはゲネオスは成果なし。オレたちも同様だ。
「まずいね。これからどうしよう?」
とゲネオスが言った。
皆口をつぐんでしまった。
オレは言おうかどうか悩んだが、探索中に気になった話を共有することをした。
「実はさっき崖を見て気付いたんだが」
「さっきの話?」
とパマーダが口を挟んだ。
「そうだ。簡単に言うと、そうだな、崖の中に普通に階段があるように見えたんだ。垂直の崖に階段というのも変な感じだが、なんとなく上へ上へと繫がっている道があるような気がした」
「けど私には何も見えなかったけど」
「ふむ、そうか」
マスキロが大きく頷き、そしてその場で立ち上がった。
「よしサルダド、皆をそこまで案内してくれ。今度はワシも行くし、ミラヤも連れていくぞ。もうこのモンスター・キャンプに戻ることはないだろう」




