第91話 岩壁
「さあどうしようか?」
オークのパーティが去った後、オレたちは再び目先の課題に向き合うことになった。
どの道を進んでも元来たところに戻ってきてしまう。このままでは何度やっても同じことの繰り返しになるだろう。
オークたちから引き継いだオーガーは、今のところお腹は空いていないようだ。岩壁に向かってアーアー言っている。
「オーガーというのはあんな風にバカ丸出しのモンスターなのか?」
「どうなんだろう?」
と鎖を預かったゲネオスがオーガーに引き連れられながら答えた。
オーガーは、鎖を握っているときは特に我々に害をなす雰囲気がなかったので、先ほど実験的に鎖を離してみた。すると急に表情が変わり、危うくオレは痛恨の一撃を食らうところだった。
ゲネオスが素早く鎖を握ってくれたので、パマーダの呪文を無駄にすることはなかったが、その後はとりあえずゲネオスに鎖を預けたままにしている。
しかしそろそろまた交代するかと、オレはゲネオスとオーガーがいる方向に歩き出した。
三本の道が開いた面の反対側は切り立った崖になっており、足場となりそうな窪みもなければ、手がかりとなりそうな植物も生えていない。
オーガーはその岩壁の辺りに留まっていた。
「こいつは何をしているんだ?」
「分からない。けどなんだかこの辺りに来たそうだったんだ」
岩壁を見上げると、その背後に雲一つない真っ青な空が見えた。
不意に一羽の鳥が岩壁と空との境目から現れ、青空を横切っていった。
エサとなる昆虫でも探しにいくのだろうか?
オレは振り返って、山道のパティオゾーンの反対側にいるマスキロに向かって問いかけた。
「マスキロ、確かさっき『エルフの魔法』がどうとか言っていたよな?」
「そうじゃ。エルフは隠れるのが得意じゃからな」
マスキロの寂声は大きくはないが、意外と遠くまで通る声だ。
「であればカウンターマジックで打ち消すことができるんじゃないか?」
マスキロは少し考え込む様子を見せてから、こう答えた。
「ある程度範囲を絞れば可能じゃ。カウンターマジックの効果が及ぶ範囲は狭いのでな」
「じゃあちょっとこっちに来てくれ」
オレは手招きをしてマスキロを呼んだ。
「このオーガーがアーアー言っている方向に向けて呪文をかけてほしい」
「なるほど、そういうことか」
「そういうことってどういうこと?」
ゲネオスの問いにオレが答えた。
「さっき見た鳥が気になって。おそらくこの辺りに固有の種類だとは思うが、なんだかオレの故郷の鳥に似ていた」
「故郷というと、あの初めの城があったところだよね?」
「そう。森と草原に囲まれた国だよ」
マスキロは呪文の詠唱を始めた。
「反魔法の領域!」




