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第88話 生き物も運ぶオーク・エクスプレス

「お前たちは何者だ? どこに行こうとしている?」

ゲネオスがオークのパーティに誰何(すいか)を行った。

オークたちは声を聞いてからも数歩ダラダラと歩き、そして完全に停止した。

ゲネオスとオレとはスラリと剣を抜いた。


ゲネオスはもう一度同じ質問をした。

やがてリーダーと思しき、金属鎧に剣を携えたオークが一歩前に進み、ゲネオスの問いに答えた。

「私たちはイマミアンドに本店を構える運送会社の従業員です」

このオークは以前ジャイアント・スパイダーのご飯になった奴よりは、はるかに聞き取りやすい言葉で話す。

しかしイマミアンドとは何なのか? 運送会社とは?

オレは後者の疑問から先に解消することに決めた。


「何を運んでいたんだ?」

オークのリーダーは後ろを振り返って女オークを見た。鎖を(つか)んだ女オークは黙ってその後ろのモンスターを見上げた」

「オーガー?」

「はい、我々は何でも運びます。お客様の依頼があれば。例えそれが生き物であっても。それがロジスティクス・ソリューション・プロバイダーである私たちの使命です」

「ソリューション・プロバイダーだって!?」

まさかオークの口から出てくるとは思わなかった単語の羅列にしどろもどろしてしまった。

しかしオークのリーダーはオレが驚いたポイントには気付かず、単なる質問の続きと思ったようだ。

「はい、私たちの社名はオーク・エクスプレスと言います。オエックスの名前でも広く知られています」

なんだか嘔吐(えず)いているかのような短縮形だ。


「オーガーを運んでいるということは、それを依頼した奴がいるということだな? それは誰だ?」

オレは質問を続けた。

「分かりませんが、エルフ攻略の最前線にいる方からのオーダーと伺っています」

オレは仲間の方を見て、オークに気付かれないよう眼で(うなず)いた。

これでこの地にもモンスターの手が伸びていたことがハッキリした。

早くしないとエルフ自体の運命、並びに、オレたちの報酬補償請求権が消滅してしまう。


「しかし道に迷ってしまったので期日内にお預りの品をお届けすることはできませんでした。数日前からこの辺りを彷徨(さまよ)っています。食料も乏しくなり、精も根も尽き果てました」

しかし見たところ、オークのパーティの旅の装備はしっかりしているように思える。

その視線に気付いたのか、オークのリーダーは先回りして説明した。

「いや食料というのは私たちのものではなく、このオーガーに与えるためのものです。しかし数日前に食料が尽きたので、今は非常食を与えています。私たちは元々6人パーティだったのですが、そのおかげで今や4人になってしまいました」

「……」

オレたちは皆で絶句した。


やがてパマーダが口を開いた。

「つまり貴方(あなた)たちが非常食なのね。それでよくやってるわね」

「はい、ソリューション・プロバイダーとして仕事を承った以上、貨物のクオリティーに責任を持つのは当然のことです。それに食料にしたのは「遊び人」と「商人」ですから、いなくてもさして困りません」

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