第57話 戦闘回避ならず
「サルダド、なんでこっちに来たの?」
「分からん!」
身体が地面から離れた瞬間、ミョルニルに引き寄せられたようだ。
ミョルニルはゲネオスに到達する前に、オレの手でキャッチされた。
「こうなったらしょうがない。こいつを倒すしかない」
オレ達の目の前には体長3メートルのアリジゴクがそびえ立っていた。
アリジゴクは新しく現れたオレに向かって尖った牙を突き出してきた。
穴の底に引き寄せられたとき、かろうじて手放さなかった盾を使って、左右の牙の攻撃を防いだ。
ゲネオスはその隙に剣の突きを繰り出し、モンスターの固い殻を貫通する重い一撃でダメージを与えた。
アリジゴクの攻撃はなおも続いたが、ゲネオスの剣とオレのミョルニルで代わる代わるダメージを与えることで徐々に弱っていくのが分かった。
遂にアリジゴクの顎による攻撃が止んだ。
しかし次の瞬間、アリジゴクの口から液体のようなものがオレに吹きかけられた。
予想していなかったオレはまともにそれを浴びた。
痛みはない。しかししばらくすると急に眠くなり、全く目を開けていられなくなった。
オレはモンスターを前にしながら、膝から崩れ落ちた。
気が付くとオレは、すり鉢状の穴の縁に寝っ転がっていた。
まず初めにうっすら目が開くようになり、その後周りが分かるようになって、慌てて飛び起きた。
「アリジゴクはどうなった?!」
俺が尋ねると、ゲネオスが答えた。
「あれがあいつの最後の攻撃になったよ。次のボクの攻撃で遂に絶命した」
穴の底にはアリジゴクの死体があった。
バザールの便利グッズにはロープも入っていたらしく、その後上にいたパマーダとマスキロがオレ達を引き上げてくれたらしい。
「相手を眠らせる毒液か……。気を付けないとヤバイな」
「一応ワタシの魔法で解毒はできるけどね。今回は離れていたから」
と、パマーダが教えてくれた。




