第55話 アリジゴク
ゲネオスの声を聞いて俺は飛び起きた。
シミターと盾を取って駆けつけると、ミラヤがすり鉢状の斜面をかなり下の方まで滑り落ちていた。
そのすり鉢の真ん中には、巨大な生命体が身体を震わせて、ミラヤが来るのを待ち構えていた。
左右に開く大きな顎。顎の付け根には小さな目があり、頭部を形作っている。
その後ろには頭部よりも遥かに大きい楕円形の胴体があり、6本の脚が生えていた。
顎や足、胴体からも、細い毛がまばらに生えている。
身体の色は砂と同じ、薄い褐色だった。
これは、、、アリジゴク!?
しかしサイズが半端なく大きい。3メートルはあるかと思われた。
「また虫のデカい奴かよ!」
ジャイアント・スパイダー以来の昆虫系モンスターに、オレは鳥肌が立った。
「あいつが本体だな。ミラヤを助けてくる!」
ゲネオスも剣と盾を取って、斜面に飛び出していった。
しかしミラヤはもうアリジゴクの目の前に迫っている。
アリジゴクはその大きな身体に似合わず、顎をカチカチと高速で動かしていた。
間もなく食べ物にありつけると知って歓喜しているように見える。
オレはミョルニルを構えた。さて、誰を狙うか?
A. ミラヤ
B. ゲネオス
C. アリジゴク
B.のゲネオスはないな。ミラヤをアリジゴクの前に取り残すことになる。
C.のアリジゴクの場合、ミラヤは無事だがオレ一人でモンスターの相手をすることになる。ゲネオス、すぐにあの砂の斜面を登ってこられるかな?
「よし決めた!」
オレは回転しないように押し出すようにミョルニルを投げた(ナックル・ミョルニルだ)。
「ミラヤ!」
そのときオレは忘れていた。駱駝があんなにも重いということを。




