第48話 キャラバン
テント群の周りはそのままバザールになっていた。
「何か面白いものが売っているかもしれない。覗いていこうよ」
パマーダが駆け出した。
「おいおい、ふっかけられるぞ」
軽く注意したつもりだったが、その後オレは別の意味でバザールを覗いたことを後悔することになる。
街の武器屋で買ったシミターがもっと安く売られていたからだ。
しかしバザールの中は楽しかった。
見慣れない文様、色彩、造形。
オレ達の故郷の感性とも、プエルトの開放的な雰囲気から生まれるセンスとも違う。
全ての品物が面白かった。
バザールのお店を一通り冷やかして、嫌そうな目で見られながらも、パマーダは気にすることなく旅の商人に話しかけた。
「みんなはどこから来たの?」
「砂漠の向こう」
「砂漠の旅は大変なんじゃない?」
「こいつがあれば大丈夫さ」
そう言って商人は近くで休んでいた駱駝をポンポンと叩いた。
「それに途中でオアシスの街がある」
「その街には城はありましたか?」
ゲネオスが急に口を挟んできた。
「城? 城壁には囲まれていたが、城はなかったな」
「城壁……」
「かなり大きな街なんだ。元々エルフの女王様が治めていたはずなんだが、今は人間の女が首領になっていた。エルフ達はどこに行ったんだろうな」
商人は話を続けた。
「なんだか妙な雰囲気だったんで、ほとんど商売はせずにオアシスを後にしてきたんだ。ノトスの街はいいなあ」
商人はここで一呼吸置いて、琥珀色の飲み物を啜った。
「せっかく遠くまで珍しいモノを運んできたんだ。何か買っていってくれよ」
「じゃあその駱駝を売ってください」
ゲネオスが言った。




