第47話 城跡
オレ達は城の廃墟でピクニックを楽しんでいた。
街の宿屋で作ってもらった弁当持参だ。
「北の城ということは、南の城があるのかな?」
ゲネオスが感想を漏らした。
石垣は立派なものだ。
ゲネオスは興味深そうに石垣のパターンを見つめていた。
「よく見ると隙間なく積まれているところと、粗く積まれているところがある。粗く積まれているところも何か一定の規則に従っているような気がする」
城の本体部分があったところは、今となっては建材として使われた石が転がっているに過ぎない。
かなりの石材が今の街の建物を建てるのに持ち出されたのではないだろうか。
残っている石の中には煤で汚れて真っ黒になっているものもあった。
「以前大きな戦争があったのかしら?」
パマーダが言った。
オレ達は元は中庭だったと思われるところに生えていた大きな木の下で弁当を広げた。
一通り寛いだあと、ゲネオスはまた建物が建っていた辺りに戻り、周辺を歩き回っていた。
ゲネオスがある大きな石の前で止まった。
しばらくその石を調べていたが大きな声でオレを呼んだ。
「サルダド、ちょっとこれをひっくり返すの手伝って」
近付いてみると、その石は周りがフラットにカットされており、上の部分は自然のザラザラした面が残っていた。
オレが手を貸すと、不思議なことにその石は割と簡単にひっくり返った。
ひっくり返した面は予想どおりフラットだったが、真っ平らと言うよりは、浮き彫りの細工が施されていた。そこには紋章が刻まれていた。
ゲネオスはしばらくそれを見ていたが、荷物の中からクラーケン戦で回収した王冠を取り出した。
王冠に施された意匠には宝石が埋め込まれていたが、モチーフ自体はひっくり返した石に刻まれているものと一致した。
オレ達はこれを見て息を呑んだ。
「おそらくこれは建物の正面に掲げられていたものだろう。おそらくはこの城の持ち主の紋章……」
マスキロが言った。
オレ達は石をもう一度ひっくり返して元に戻し、食べ終えた弁当の包みを持って街に帰った。
ノトスの街の中心部に戻ると、大きく開けた広場にいくつものテントが張られているのに気付いた。
テントの周りでは何頭もの駱駝が身を休めている。
広場の中央の噴水から流れる水をゴクゴクと飲んでいる駱駝もいた。
「あれは何かしら?」
パマーダが近くにいた町人に訊くと、
「キャラバンだよ。砂漠を渡って旅をし、商売をしているんだ」
と教えてくれた。




