表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/218

第41話 ネクロマンサー

まじない師は骸骨の漕ぎ手の間を通って、部屋の奥の方へ入っていった。

「一体何をしているんだ?」

まじない師が問いかけたのは、部屋の奥の中央に陣取る一人の男だった。

漕ぎ手に比べるとマシな服を身に付けているが、それでもかろうじて身体を(おお)っているだけという代物(しろもの)だ。

腰には鍵束を吊るし、手にはトゲの付いた(むち)を持っている。

頭は()き出しであった。不思議なことに顔は普通の人間と変わらなかった。ただ表情からは完全に生気が失われている。


よく見ると彼は柱にくくりつけられていた。

彼の両腕には手枷(てかせ)がはめられ、その手枷から繋がる鎖が天井の方へと続いている。

見上げるとそれは船の甲板の方まで伸びているらしい。

そうか!

この鎖が二つ目の舵輪(だりん)に繋がっていて、舵輪を回すとその動きが鎖に伝わる。

それによって奴隷を鞭打つ向きを変えることで、船の針路を変えているようだった。

まじない師は手で印を結び、呪文を唱えてからこう言った。

「早く奴隷どもを鞭打って、正しい進路に戻せ」


パマーダがまたつぶやいた。

「ネクロマンサーだったのね……」

「ネクロマンサー?」

死霊(しりょう)使いのことよ。この漕ぎ手の奴隷たちもそうだけど、奴隷の指揮者はレイス、つまり死者を(よみが)らせたモンスターよ」

「レイス……」

「だけどちゃんとした蘇生(そせい)じゃないから、人としての感情や感覚は失われている。そのレイスを操って、この船を動かしている」


しかし、死霊使いが命じても、レイスは動かない。

「何をしている?早くしろ!」

「……プエルトにはいつ着くのだ?」

レイスが声を絞り出した。

「俺は来る日も来る日も奴隷を鞭打った。もう着いてもいいはずだ」

「もうじき着く。だから早く船の針路を変えろ」

「何を言う?船はプエルトに向かっているはずだ」

「……」

「どうしたのだ?プエルトに行くのだろう?」

死霊使いは再び呪文を唱えた。

「進路を180度変えるんだ!」


レイスは呪文の威力に耐えるようにしばらく動きを止めた。

やがてレイスは力を振り絞りながら、ゆっくりと発声した。

「……プエルトに行くのではないのだな?」

「……」

「……もう(だま)されないぞ」

レイスは身体を柱に縛り付けられているので動くことができない。

それなのに、腰にぶら下げた鍵束はガチャガチャと音を立て始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ