第25話 ナックル・ミョルニル
倉庫への侵入は諦めたが、コシネロの依頼は果たしておきたい。中にモンスターがいないなら、なおさらチャンスだ。
男が出てきた扉を確かめたが、やはり鍵が掛かっていた。厳密に言うと透明な奴が男と一緒に出てきたという保証はない。扉を打ち破るのはリスクが高かった。
「ゲネオス、悪いが今度はお前が下になってくれ」
ゲネオスの肩に足を掛けて持ち上げてもらうと、小窓から倉庫の中を覗くことができた。
確かにコシネロが所望したカレー粉の壺がある。
オレはスナップを利かさず、そっと押し出すようにミョルニルを投げた。
ミョルニルは地面との角度を一定に保ったまま、目当てのカレー粉がある棚に飛んでいった。
ミョルニルとカレー粉が入った壺が触れたとき、カチリという音がしたが、壺が割れることはなかった。
ミョルニルと、それにくっついたカレー粉の壺は、ほとんど回転することなくスーッとオレの手元に戻ってきた。
野ウサギで特訓をした成果が出た。カレー粉をこぼすことなく回収することができた。
地面に下ろしてもらうと、ゲネオスが怪訝な顔を見せた。
「サルダドは思っていたよりも重くないね。と言うより全く重さを感じなかった」
「冒険の旅で筋力が鍛えられたんじゃないか?」
とオレは答えた。
ゲネオスは何か考えているようだったが、話はそれ以上続かなかった。
さあカレー粉をコシネロに届けてやろう!




