第22話 報酬交渉
「分かった。ならばオレ達も夜に行こう。昼間だともぬけの殻の可能性もある。つまり今からだ!」
オレがそう言うと皆うなずいた。しかしその前にやらないといけないことがある。
オレはウェイターに頼んでコックのコシネロを呼び出した。
「ついでができたので以前オレ達に頼もうとしていた依頼、引き受けることにした」
コシネロの目がパッと輝いた。
オレは続けた。
「ついては報酬を頂きたい」
それを聞いて、コシネロの表情は再び沈んだ。
「大変申し訳ありません。私には大した蓄えがなく。しかもこのところ酒場のお客さんの入りが悪くて手元にはほとんどお金がありません」
「客の入りが悪かったのはお前のせいだろう」
オレはツッコミを入れた。
ゲネオスが尋ねた。
「コシネロさん、確か料理対決があると言っていましたけど、賞金はいくらなんですか?」
「10万ゴールドになります」
「分かりました。では優勝したらその賞金を半分ください。報酬代わりにします」
コシネロは慌てた顔をしてこう答えた。
「しかし優勝賞金の中からお祭りのときの食材費を賄わなければなりません。8万ゴールドはかかります。プロデューサーと言いながら、実際には食事代も優勝者の持ち出しなんです。半分も渡すと赤字です」
「それでもアンタは名誉が得られるでしょうが!」
ここで再びパマーダにスイッチが入った。
「私を見なさい! ツケで買ったトライデントを、人のお店でカクテルを売って、もう返済してしまったのよ! 優勝すれば料理ですぐに返せるでしょう? 払うの? 払わないの? アンタに値引きの権利はないわよ!」
「承知しました! 払います! 宜しくお願いします!」
コシネロは飛び上がって答えた。
「香辛料は多くは要りません。いくつかの香辛料がブレンドされたカレー粉があればなんとかなります。このマークが付いたカレー粉の壺をお願いします」
コシネロは紙にマークの模様を描いた。
ゲネオスがその紙を預かった。
オレ達は夜が更けるのを待って、宿屋を後にした。




