第212話 帰還
城下町に着いた。オレたちは今回は全員で自宅に向かった。
父親も母親もそれなりに歳を取っていたが、いまだ健在で元気そうだった。両親ともにオレの帰還を喜んでくれたが、母はオレが友達を家に連れてきたことが嬉しくてならないらしく、やれお茶だやれお菓子だとゲネオスとパマーダにかいがいしく世話を焼いていた。
「この家に嫁いでくる前は私も結構社交的だったんですよ。それが結婚してからは自然と友人の足も遠のいて。今日はサルダドも帰ってくるし皆さんも来てくださるし、本当に嬉しい日だわ」
父はそれを聞いて渋い顔をしていた。
オレはこの10年どのようなことがあったのかを時間をかけて聞いていった。
密かに思いを寄せていた女の子が10年以上も歳を取り、既に結婚して二人の子どもをもうけていたと知ったときは、心にぐっとくるものがあった。
オレは強がりでそのことをパマーダに話したが、パマーダは、
「良かったじゃない。街を出たときには手を出したら犯罪レベルの幼女も、今は年頃の女性になっているわ。そっちにいけばいいでしょう」
とよく分からない慰め方をしてくれた。
しかし知りたかったのはそんな話ではなく魔王の動向なのだが、オレが出立した頃と同じくこの辺りでは特に不穏な雰囲気はなく、ただときたまモンスターによる略奪行為が散発的に起きているだけだということだった。
「そう言えば、あなたと仲の良かった道具屋の息子さんも旅に出たらしいわよ。なんでも東洋の方へ行って、その土地のものを沢山買い入れてくるのが夢だったとかで」
と母が教えてくれた。
あいつは唯一オレの誕生日パーティーに来てくれた同級生だ。そういえばゲネオスが、スティングあらためスラッシュを買ったのもその道具屋だったなと、オレはふと思い出した。
オレたちはその後バラバラに城の方へ向かい、中の様子を探ってみた。昔と変わらず城門は開け放たれ、二人の番兵が門の両サイドを守っているだけだ。
ただその先は誰も入ったことはなく、ましてやその先の王(魔王)の姿を見た者は知り合いの中にも一人もいない。
城の中で勤める陪臣や兵士は何人もいて、確かにざわめきが聞こえるのだが、そうした者たちの家族が城下で暮らしているという話はこれまでまったく聞いたこともなかった。
本来疑問に思うことを何ら疑おうとしてこなかったことに気づき、オレはあらためてぞっとした。




